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ヒューマノイド①


 日本にヒューマノイドが紛れ込んだのは敗戦後十年が経ったあたりからだ。


 人口がうなぎ上りで増えたのはこれが理由だ。


 敵国に日本が繁栄をしていることをアピールするために人工的に人口を増やしたのだ。


 そう、これは国策。日本国家の最高機密。


 戦争後、国民すべてが東京に移されたせいで、ごたごたしていたため、住民票が簡単に捏造できた。


 ゆくゆくはタイミングを見て、国民に混乱の起こらないように発表をするつもりだった。


 人間の国民が友好的にヒューマノイドを受け入れることで、機械との共存が可能になれば、敵国に対して軍事力の提示にもなる。


 機械との全面戦争はリスクの方が大きい。日本がこの状況から抜け出すための大きなきっかけとなるはずだった。


 しかしどういうわけか、この計画の一部が露呈してしまっているようだ。


 あの「人間世界」の男がどこまで知っているかはわからない。どこで知ったのかもわからない。


 これからの調査で明らかになるだろう。


 だが日本国家も抜かりなくこのミッションを実行していたはずだ。


 例えば成長。AIはプログラミングと学習の機能で、加齢が可能になるが、肉体はそうはいかない。


 ヒューマノイドを形成する肉体は人間のたんぱく質を再現したものではあるが、生きた細胞ではない。


 つまり成長しない。


 子供のヒューマノイドは子供のまま成長しない。


 そのため、定期的に国家の息のかかった総合病院に通う必要がある。


 そこで肉体のアップデートを行う。そうやって身体を人工的に成長させる。


 一般病院にヒューマノイドがかかった場合、チップがレントゲンやCTに影響を与え、あらかじめ用意してある写真が印刷されるようになっている。


 この国にあるレントゲンやCTにはそういった受信機が医師のあずかり知らぬところに内蔵されている。


 ヒューマノイドの風邪や病気はプログラミングだ。環境因子や個別係数での自動計算でランダム発生する。


 その病気の種類で心臓機械の動きが変動し、体温、心拍数、発汗、目の動き、発生、そのほか身体の症状を再現する。


 この再現率は九十八パーセントで、一般病院の医師はまずヒューマノイドとは気が付かない。


 また、ヒューマノイドに事故などの不慮な死が訪れた場合は、その個体が開かれる前に公安か国家病院の医師が様々な理由をつけ引き取っている。


 ヒューマノイドが人間と結婚することはないので、配偶者が遺体の引き取りを拒否することはあり得ない。


 ヒューマノイドにも恋愛をするプログラミングが施されている。なので人間とお付き合いをすることもある。性交渉をする機能も付いているが、子供を作ることは男女どちらのタイプもともにできない。


 ただ、ヒューマノイド全てが結婚をしないとなると不自然なので、ヒューマノイド同士は結婚することができる。そして時期が来れば国家病院で子供のヒューマノイドを受け取る。もちろん受け取らない場合もある。これは人間の夫婦データをもとに割合に係数をかけて調整している。


 ヒューマノイドは自分のことをヒューマノイドと認識しており、危険を察知すると避けるようプログラミングされている。ここでいう「危険」とは、個体の肉体的危険だけでなくヒューマノイドであるという情報漏洩的危険も含まれている。


 このように日本国家の総力を持って実行していたのが、このヒューマノイド政策だ。


 この計画が露呈しないように細心の注意をはらってきた。


 これを知っているのは内閣の数名と、関連医師と技師、そして公安のごく一部の人間だけだ。


 この情報が国外に出てしまったら、大変なことになる。


 まだヒューマノイド政策は完成していない。その状況で敵国に知られてしまったら、完成前に力尽くにでもつぶしに来るだろう。


 再び日本にミサイルの雨が降る。それだけは避けたい。


 今回の動画の情報分析の結果が出れば捜査方針が決まる。動き出すのはそこからだ。


 そう思った矢先の事。

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