人間世界②
あの後は、死んだ竹丘の隣で公安本部に応援要請と救急の手配をした。
椅子に腰かけ、竹丘とのことを思い出していた。
最初はそりの合わない奴だったが、憎めない性格をしていた。
仕事終わりに飲みに行ったこともあった。温泉に日帰りで出かけたこともあった。
こんなお別れになるとは思いもよらなかった。
別に涙は出ない。
こちらも殺されかけている。そんな相手にかける情けは一ミリもない。
人を殺したというのにすがすがしい。
正しいことをしたような気分だ。
人殺し集団の本部に潜入し、その二人をあぶり出したのだから。
俺は正しいことをした。
公安として間違っていない。
ヒューマノイドを排除しようとするやつを排除したのだ。
待てよ。それは正しいのか?
共存を望んでいるのではないのか? ヒューマノイドと人間の。
俺はヒューマノイドだ。これでは人間世界と同じではないのか?
やってることはヒューマノイド世界ということになるのではないか?
混乱している。
何が正しいのだろうか。
何が正義なのだろうか。
人間が人間のみの世界を望むその気持ちはわからなくもない。
しかしヒューマノイドにも生活や感情、人権がある。
それらを排除するために殺しを行うのは、間違っている。
だが、それを正すために殺しを行うのも、間違っている。
どうしたらいいんだ?
答えが出ないうちに俺の呼んだ公安が部屋に入ってきた。




