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NSフォルダ②

 竹丘の運転で先週通った道を、自分の運転で一人走る。


 今日は五十日だからいつもより道が混んでいる。


 府中駅の暴動があってから、人間世界の動きはない。


 しかしネットではヒューマノイドについての議論がヒートアップしていた。


 ワイドショーでも取り上げられ、コメンテーターがあることないこと言っていたが、こちらに関しては政府が緘口令を敷いたので静かになった。


 ネットでの支持率は案外ヒューマノイドがいても構わないという意見の方が高いように感じられた。


 実感がないからだろう。目の前で機械部分を見せられたりしたら変わるだろうが、結局フェイクニュースと思っているのだろう。


 それにヒューマノイド反対派、人間世界が過激すぎて、そうでない人や無関心な人が引いてしまっているように見える。


 こちらとしては都合のいい状況だ。


 このままほとぼりが冷めてほしい。そのためには急いで人間世界を駆逐する必要がある。


 残念ながら、人間世界が落ち着いているのと同様に捜査も大きな動きがない。


 竹丘のパソコンから見つけたこのデータが今のところ一番有力なものかもしれない。


 平山城址公園の駐車場にインプレッサを停めると、地下街の入り口に向かう。


 地下へのエレベータはこのホールには四つある。そのうちの一つが工事をしていた。


 年度末だなと感じる。毎年工事をしているはずなのに、一向に良くなっているようには感じられない。


 やはり乗り込んだエレベーターは不安を掻き立てる音をして地下へ潜っていく。


 地図を頼りに地下街を歩く。


 地下だから日は出ていない。しかし換気システムが空気がこもらないように循環している。


 そのはずだが、今日はなんだか暑かった。


 住所の雑居ビルに到着する。


 一回はテナントになっていて、雑貨屋だった。


 客のふりをして店内を観察する。



「いらっしゃい」

 スマホをいじりながらやる気のない声で、若い兄ちゃんが言う。



 よくわからない小物や服が売っている。


 服が売っている?


 もしかしたら「人間世界」のTシャツがあるかもしれない。


 一枚ずつ確認していく。


 映像のものは白地に黒い字だったが、色違いもあるかもしれない。


 字の小さいものもあるかもしれない。


 とにかく見逃すまいと、しっかりと目を通す。


 全部確認したが、人間世界と書かれたTシャツはなかった。


 少し肩が凝ったので、軽く首を回しながら、もう一度店内を確認する。


 レジの兄ちゃんの隣に竹丘がいた。



「案外遅かったな」

 ニヤついている。


「た、竹丘!? 連絡くらいしろよ」


「ああ、そうだな。そんなことより、松山、ちょっとこっち来いよ」

 竹丘が手で合図するとレジの奥に入っていった。



 頭の中で警戒音が鳴っていたが、竹丘についていった。


 レジの兄ちゃんに止められることもなかった。 


 たぶん俺の顔は眉間にしわが寄っていただろう。


 今まで竹丘を信用したが、それくらい訝しんでいた。

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