NSフォルダ①
竹丘のアパートから立川に戻るとすぐにNSフォルダを調べることにした。
サイバー対策課や、捜査本部に提出しても良かったのだが、直感的に一人で調べたほうがいいと思った。
それにある程度俺が調べてから提出しても変わりはないだろう。
職場のパソコンに外部のUSBメモリーを挿すことは禁じられている。
だから捜査用に自分のノートパソコンを持ち歩いている。
NSフォルダの人間世界の関係者と思われるリストを印刷する。
犯罪歴と照らし合わせてみると、何人か引っ掛かったが、どれも軽犯罪で、暴動を引き起こすようなものはなかった。
しかしこの間の府中駅の暴動で捕まった、あるいは亡くなった者も含まれているので、ある程度信憑性のあるものだろう。
リストの中に名前や性別などの情報が空欄だが、住所のみが書いてあるものがあった。
日野市地下街の住所だ。
細かい番地までは頭では再現できないので、ネットの地図で調べる。
雑居ビルのようだ。部屋番号は二〇三号室。
行ってみるか。何か手掛かりがあるかもしれない。
ただの勘だ。何の根拠もない。
この手掛かりが、人間世界のものなのか、竹丘の失踪についてのものなのか、そのどちらのものなのか、あるいはそのどちらのものでもないものなのか、何もわからない。
なんとなくここに行く必要があると感じた。
地図をプリントアウトし、パソコンを閉じる。USBメモリーを胸ポケットに入れてデスクを立った。




