H&H③
「竹丘、お前どうした? いつもと違うぞ」
「ああ、悪い。なんだがムカついて」
竹丘は煙草をくわえる。禁煙車なので火は着けていない。
「どこにムカつく点があったんだ?」
「ヒューマノイドを無条件で受け入れていることがだよ。俺ら公安としては危険因子は排除すべきだ」
「小田も言っていただろう。それだったら、人間も危険因子となってしまう」
「話が通じるだろう、人間は。だたヒューマノイドはわからねえ」
「ちょっとまて、ヒューマノイドがいることが前提になっている。そもそもそのヒューマノイドの存在は不明だ」
「ああ……ああそうだったな。悪い悪い。まずはそこからが調査だな」
「おいおい、どれだけ冷静さを失っているんだ」
それから公安立川支局に着くまではお互いに無言だった。
インプレッサを駐車場に止めると、竹丘が一人で昼食にすると言い、出て行った。
少し冷静になるといいと思ったので、素直にいってらっしゃいと言ってやった。
一人で食堂に行き、かけうどんを食べる。ここの食堂のうどんは出汁がきいていて薄い、関西風だ。それに七味をたっぷりかけるのが好みだ。
ゆっくり食事を済ませて自分のデスクで事件の整理をしていると、午後一時を過ぎていた。
竹丘はまだ戻っていない。
いないならいないでできることをするだけ。捜査本部に顔を出し、H&Hの情報を伝え、他の捜査員の情報を確認する。
夕方近くになったが、竹丘の姿はない。
さすがに心配になり、連絡を入れてみるが、応答がない。
結局、その日は駐車場で別れた以降、竹丘に会わず帰宅することにした。




