H&H①
「どうも。公安の竹丘です。こちらは松山です」
「よくお越しいただきました。ええ。さあさあ、こちらへどうぞ。あ、私は小田と言います」
H&Hの幹部と思わしき小田という男が丁寧に案内をする。
大きな工場の食堂にはいくつも長テーブルと椅子が並んでいる。
竹丘と二人並び、小田の向かいに座る。
集団本部とは言うものがらんとした印象だった。
「ここには信者というか、会員というか、人はいないのですか?」
思った印象を小田に質問をする。
「はい、そうですね。私たちは反乱組織ではありません。意識を共有するだけですから、集まらなくても問題はありません」
「なるほど。人間世界のように行動を起こすわけではないということですね」
「そうです。協和、共存を望んでいるだけですから、生活は今までと何も変わりません。ただ存在を知っているか、知らないかの違いです」
そりゃそうだろう。公安相手に過激な発言はないだろう。
どこから現れたのか、別の者がお茶を運んできた。
「率直に聞きますが、ヒューマノイドの話はどこからお聞きになられたのですか?」
竹丘がお茶を一口飲むと小田に聞く。
「まあヒューマノイドが存在するかは半信半疑ですがね」
竹丘の発言にフォローを入れておく。
「聞く人によっては都市伝説と思われるでしょう。見極める方法がありませんからね。しかし、古い文献や、極秘に仕入れた政府関係者の資料でその存在を確認しております」
政府関係者の資料ということは裏切り者がいるのだろうか、あるいは信者に思い込ませるためのうそか。
「その資料を見せてもらうのは……」
「できません。貴重な資料ですから」
小田はこちらが言い切る前にきっぱりと断った。
「見せたところで偽物だと言われる可能性もありますし」
「そうでしょうね。まあいいです。ただヒューマノイドがいるとして、共存は可能なのですか?」
竹丘が少しイラついたような態度で聞く。
「それはもちろん。今までヒューマノイドによる反乱がありましたか?」
「今後あるかもしれません」
「今後のことを言えばそうかもしれません。しかし、それを言ったら現に犯罪を起こしている人間はヒューマノイドより先に排除されるべきとなってしまう。今回の府中の一件も人間以外を排除しようとしたことが原因でしょう」
このままでは喧嘩のようになってしまう。建設的な議論ではない。




