P○thonちゃんに肩揉まれたい。
「うわーん、P○thonちゃーん!」
ミライにぼこぼこに殴られて悲しくなったぼくは、白衣姿の背に呼びかけた。
黄と青の長髪で作られた三つ編みがふさりと翻る。
「おや、どうしたのかな……、とは聞く必要がなさそうだね。またミライにやられたのだね?」
メタルフレームのメガネをかちゃりと持ち上げて、彼女は推測を語った。
それにぼくは頷く。
「はあ、君ってやつは、頑張りすぎてるんじゃないかな?」
「そ、そんなことないもん! 頑張って、頑張って、いいミライをかち取らなきゃいけないんだよ!」
「少しは肩の力を抜くべきじゃないかな」
P○thonちゃんはそういうとぼくの後ろに回り込み、両手のひらを肩の上に載せた。
そのままくにくにされる。
「う、あぁ……」
なんだかこそばゆくって、変な声が漏れちゃった!
「ほら、じっとしていてくれたまえ。……こんなに固くなっている。疲労している証拠だ」
「ううぅ……でもぉお……」
「動くの禁止!」
「……はいぃ……」
P○thonちゃんは少しだけ声を大きくして言った。P○thonちゃんが有無を言わせたくないときは、こんな風に普段よりも少し声が大きくなるのだ。
仕方がないから、ぼくはそのままされるがままになった。
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ。
ぐに、ぐに、ぐに。
P○thonちゃんの手は小さいけれど、ぼくの固くなってしまった肩をみるみるうちに柔らかくしていった。こそばゆさは次第になくなって、ただただきもちがいい。
ずっとこのままでいたい。そう思った。
どれくらいかわからないけどたくさん時間が経って、肩もみは気づいたら終了していた。
それに気づいたのはP○thonちゃんに声をかけられてからだった。
「はい、肩もみ終わり。これで少しは楽になったんじゃないかな?」
「あ……?」
「気持ちがよすぎて、気を失っていたかな? もしそうだとしたらうれしいよ」
P○thonちゃんはぼくの方を覗き込み、微笑む。
その笑顔にドキッとした。顔を正面から見ていられなくなって、俯いてしまった。
けれど、そんなぼくに彼女は語りかけるのだ
「あなたは頑張りすぎる節があるみたいだから、ほどほどにして気をつけるんだよ?」
「……うん! ありがとう、P○thonちゃん! 気をつけながら頑張りゅっ!」
ぼくはP○thonちゃんににお礼を言って、ミライに向かって走り出した。
さあ、ほどほどにがんばりゅぞー!