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咲結編② 【新しいクラス】

今回も、いつもよりかは文字数が多めかもしれません・・・。

咲結編②

最近、かえちゃんの様子がおかしい。

昨日だって、なんだか調子が悪そうに俯いていた。朝ご飯や夜ご飯はいつも通りに作ってくれるけれど、いつもバツの悪そうな顔をして、昨日なんてもっと酷くて、私がお手洗いを済ませて帰ってきた時なんかもの凄く暗い顔をしていた。もしかして、お手洗いを済ませるのが遅くなってしまったからかな? 遅くなった理由は、前のクラスで一緒だった人と偶然会ってお喋りをしてしまったため。だけど、それも言い訳じみてるよね・・・。


 今日も、かえちゃんと学校へ登校した。

新しいクラスということで変な緊張が走る。いや、かえちゃんが居ないからかも知れない。

 こんなことは、初めてだ。

私はA組。かえちゃんはB組だ。近く感じるのに、教室の距離だって隣同士なのに。どうしてだろう。近くにあるのに、遠く感じるのは。


「それじゃあな」「うん」少しの会話をして、かえちゃんはそのまま教室へ入って行った。


開いている後ろのドアから入ればいいんだよね・・・。そして、やっと私も教室に入る。

辺りはとても静かであった。誰も音をたてないくらい静か。お喋りの声も聞こえなければ、

何かの音さえも聞こえない。それ故にきつい緊張感が走っている。

私は黒板に貼ってある席の表を見て、自分の席を確かめ、音をたてないように静かにしながらサッと着席した。

私の席は、一番前の列の席らしい。ドアからもちょっとだが近く、黒板も見えやすい。

そういえば、なっちゃんは何処だろう。登校時は一緒じゃなかったし、もう来てるよね?

そして、私はなっちゃんの席を確認する。なっちゃんの苗字は、江藤だから・・・。

すぐ近くかな?なんて思ったけど、以外と遠くて私は不安になってしまう。もう、なっちゃんは席に座っていた。。

 なっちゃんとお喋りしたいのに席が離れているせいか、壁があるみたいにお喋りができない。

私はこの空気に逆らえなくて、静かに黙ってじっと時間が経つのを待っていた。


すると、誰かの笑い声が聞こえてくる。ガヤガヤと楽しそうな声と共に。

遠くから聞こえてくるこの声。近くのクラスは・・・、そうか。かえちゃんのクラスだ。

そうか、心の中で私はもう一度呟く。

その時、ガララララッ、と大きな音をたててドアが勢いよく開いた。みんなの注目が一斉にドアの方へ集まる。私はパッと顔を上げた。

そして、勢いよく「おはようっ!!」と先生は叫んだ。

いきなりの事でもあり、教室はしーんと静まり返る。元々静かな教室だったので、状況はたいして変わりはしないが、あまりの静けさに少し先生が可哀そうにみえてしまった。

 けれど、先生はそんな事をものともせずに、ズンズンと教団の前へ立つ。

「さて、今日から新しい担任になった。坂本 敦と言う。これから一年よろしく!」

静かな空気をものともせずに、自分の自己紹介を振り切ってやってのけた。この人、坂本先生はメンタルが強い人だな・・・。純粋に凄いと思う。熱血指導とも言われる訳だ。

 「僕はこのクラスを元気でパワー溢れるクラスにしたいと思っている!」

元気いっぱいにそんな事をいう先生に、皆は当然に引き気味だった。勿論、私もだ。このクラス、初っ端から元気とかけ離れた感じなのに・・・。


誰も喋らない中で、一人の男子が「あの」と手を挙げた。その勇気は凄いものだ。

先生が「なんだ?」と訊く。

「一人、遅れてる奴がいるんですけど、ソイツ今、どこにいるかわからなくて」

「ん?どういう事だ?」

「あ、すいません。えーと、一応、学校には来てるんですけど、どっかほっつき歩いてるというか」

あんなに静かだったのに、周りがなんだかザワザワし始めてきている。

 ほっつき歩いている?先生はその男子に問う。私も同じ気持ちだ。

「あぁ。分かった。もういい。で、ソイツの名前は?」先生は納得したような、諦めたような口ぶりでいう。そして、その男子は「千賀、千賀光太です」と答えた。

 坂本先生は、千賀か、と呟くと、「ちょっと待っていろ」と言ってそのまま教室から出て行ってしまった。


まさかの事態で教室は一層にザワザワとし始めていく。

千賀って誰だ? なにこの展開! ヤバくない!? そんな言葉が口々に聞こえ、なんだか私も不安になってくる。

すると、そんな私に「ねぇねぇ」と隣の席に座っている女子が話かけてきた。

話したこともない子だったし、急だったので私は戸惑いを隠せずにオロオロとした。けれど彼女は、マイペースに「これ、大丈夫かね」と言って、クスクスと笑った。そんな彼女をみて、私もなんだか面白くなり「わかんない」なんて言ってクスクスと笑ってしまった。


 少しの間が流れて、私たちは不安を覚えてきた。まだ、先生が未だに帰ってきていないのだ。

そんな中で、教室のスピーカーからガサガサと音が聞こえてくる。そして、人の声が聞こえてきた。

『2年A組、千賀光太、至急2年A組の教室に来い!2年A組。千賀光太、教室に来い!』いきなり、男の人の声が聞こえる。

これって、熱血先生の声じゃ・・・?まわりも薄々気づき始めているようで不穏な空気が流れ始める。

『あ、それと、2年A組のお前ら!』急に名指しをされ、私たちはビクッとなる。

『落ち込んだ顔なんてしていないで、もっと楽しめ!はしゃげ!お前らは、今、それが許されてるんだ!そいで、気軽に敦先生と・・・』ブツッ、その後、そんな音を漏らし立てて音声が途切れた。きっと、無理やり切られたんだ。言葉が急に途切れたから。


そんな音声を聞いて教室内は一瞬、戸惑うも、クラスの皆は、大爆笑した。

緊張の糸が途切れていくかのように、心の底から笑いが溢れる。

やばくね、このクラス! あの先生変だ(笑)、なんちゅうやり方だよ(笑)、そんな言葉が笑いと共に飛び交う。勿論私も、予想外の出来事でビックリだ。

 今、スピーカーから流れた音声はきっと他のクラスにも聞こえていると思う。いや、学校中に流れているだろう。2年A組が目立っていて、とても恥ずかしい。最初の印象がこれだと、絶対に笑いものにされるからだ。けれど、私はなんだか無意識に笑っていた。すごい、楽しくて、面白くて、その気持ちばかりが先行してしまう。


そしてあの後、先生は帰ってきた。ある男子を連れて。

「悪い。遅くなった! ほら、千賀!席つけ!」」先生が大きな声で怒鳴る。

その横で連れられてきた千賀という人は、不貞腐れた顔をしていた。

周りはあれが千賀か、とザワザワする。


「おーいお前ら!千賀の席はどこだ?」先生がクラスの皆に呼びかけると、隣にいた女の子が急に「ここじゃないですかー?」と軽く指を指した。私は驚いて口が半開きになる。

だって、指を指していた方向がなんと、私の後ろの席だったのだから。

 そういえば、この席空いていたっけ・・・?それに、千賀って「せ」だから私のすぐ近くじゃん! 今更気づき私は後悔する。

「おー、そこか。ほら、座れ!」先生は千賀という人の背中を叩く。そして、千賀という人は、まだ不貞腐れたような顔をして黙って席へ向かった。

 どうしよう。凄く近いし、怖い。かえちゃんも居ないのになんで、こんな事になるの?

私は、怖い気持ちを押さえながらこの状況を恨んだ。

 なにあの制服の着方・・・。まるで、ちゃんと出来ていないぐちゃぐちゃな着こなしだ。

もし、かえちゃんが見たら絶対に怒る・・・。私は少しだけ、千賀という人に目線を向け、初めにそう思った。そして、私はすぐに目線をパッと逸らす。

 一瞬だけ、目があってしまったからだ。


ひぃぃ・・・。怖いよ・・・。私は怖くて本当にすぐに目を逸らしてしまった。

 まるで獣のような鋭い目つき。怒ってるよね、あれは。

千賀という人が席に座ったと同時に先生が教団の前に立ちパンと手を叩く。

「よし、千賀も来たことだし、時間が無くなるから、まずはプリント配るぞー!」


 クラスの空気は、最初よりも断然によくなっていた。和気あいあいとしていて、和やかだ。

「後ろにまわせー」先生はそう言ってプリントを配りはじめる。すると、男子が急にふざけて「敦先生!」と呼んだ。すると先生は「おお!なんだお前ら?敦先生とこれから呼ぶんだぞ?」少し驚いたような顔をして返した。その返しにクラスの皆はまた、笑った。

そんな中、私もおかしくなって笑う。


そのまま貰ったプリントを後ろに回していると、ある事を忘れていた事に気づく。

彼とまた目線があったからだ。怖い人が私の後ろに居たことを忘れていた。

私は怖くて、また目をすぐに逸らす。でも、なんで今、目があったの?

そんな事を疑問に思いながら、私はただプリントを後ろに回した。

 

 プリントも配り終わったらしく、皆がまた坂本先生へと目線を向ける。けれど、私は後ろから誰かの圧を感じた。それも、真後ろから。

もしかして、見てる・・・? まだ感じるその人からの目線に、私はビクビクと体を震えさせた。痛いほど感じる、ストレートな矢のような視線。

私、なにかしたかな? もしかして、最初に目があったから・・・?

知り合いでもなく初めて会った人でもあるので、私はとにかく恐怖と不安をおぼえた。

なんだか、この人とちゃんと付き合えるのか不安だな・・・。


☆☆☆


キーンコーンカーンコーン

鐘がなる。授業時間が終わり、もう中休み。

 授業が終わったが、クラスの雰囲気は変わらず、皆、和やかだった。

 後ろの人を除いて・・・。

「咲結!大丈夫だった?」

「なっちゃん!」すると、なっちゃんがぎゅっと私の頭を抱き寄せた。

「ごめんよー、すぐに声かけれなくて」そして、頭をナデナデされる。

「ううん。なっちゃんは、なにも悪くないよ?」心配な目で謝るなっちゃんの言葉に私は否定をした。すると、優しい目になってくれる。私は、なっちゃんやかえちゃんの前だと少し甘えん坊になってしまうと思う。

「咲結。あの先生、大丈夫だった?」急になっちゃんが深刻な顔になった。私は昨日の事を思い出す。『大嫌いなんだよね』そう言っていた事を。

「うん。お、思ってたより、面白い人だったよ・・・?」私はそんななっちゃんを安心させたいがために、優しく微笑んでみせた。「・・・そう」だが、それは逆効果だったらしい。深刻そうな顔は、まだ変わっていなかった。その姿はとても暗くて、私は心配になる。


 「君たち仲いいの?」すると、私たちの目線がパッと声をかけた人へと誘導される。

声をかけてくれた人は隣に座っているさっきの女子だった。

「うん。仲いいよ」一度、喋りかけてきてくれたので言葉を返すのに私はあまり抵抗がなかった。隣の子も「そうなんだー!」と興味津々で見つめてきた。すんなりと言葉を返した私に、なっちゃんは驚いた顔をして「え、ええと、あの女子とは知り合いなの?」と私に訊く。

「小泉 彩だよ」するとその声が聞こえたらしく、急に自由な声で自己紹介をした。

「ううん、小泉さんとは知り合いなの?」なっちゃんは喉を鳴らし、もう一度私に問う。

「いや、さっき知り合ったばかりだよ」私が笑顔で言うと「そうなの」と、なっちゃんは言い、頭をまた撫でてくれた。


「で、君は?」すると、小泉さんは後ろの方に目線を向けた。

そう、あの千賀と言う人に。一番、関わる事が怖い人に声をかけてしまっている。

「なんで、てめぇに教えなきゃなんねーんだよ」あれ?無視すると思ったのに。まず最初に私は彼が言葉を返してきた事に驚いた。

「え?だって同じクラスだし?」小泉さんは動じずに、好奇心溢れる目で言った。逆に私は怖くなる。こんな事をして平気なのか? と。怖くなってなっちゃんの方に目をむけると、なっちゃんは、不安な目でもなく、さっきと同じ目でもない。ただただ、彼の事を不思議に見つめていた。


「ちっ・・・」すると、彼から舌打ちが聞こえ、私はまたビクリと身震いを起こす。

「千賀、千賀光太!」声を張り上げて言った。そして何故かまた目が彼と合っていた。違う。彼が合わせてきたんだ。なんで・・・? 彼の目はなんというか鋭くて冷たくて、まるで私の事を敵視しているようなそんな目・・・。

「うん。やっぱり知ってたわ!」すると、小泉さんは、アハハっと笑う。そして、私は現実に帰された。「じゃあ何できいたんだよ!」その態度に千賀と言う人は、勿論激怒しガンっと音をたてて立ち上がった。

「同じクラスだからね~」

「てめぇ、バカにしやがって!」

すると、二人は言い合いになった。小泉さんは、ふざけて怒りを煽るような事ばかりを言う。


そんな二人の言い合いは段々と大きくなり不思議と周りの人たちが集まってきた。

そして、ある男子がふざけて「放送で呼ばれた千賀くん!」と言ってからかう。すると、ドッと大きな笑いが起こった。からかってくる男子に彼は「うるせー!」と言っているけど、

私もなんだか面白くなって笑ってしまった。ちょっと、可哀想だけどね。

「フフフっ」我慢が出来なくて、声に出して笑う。周りの人も笑ってるし大丈夫だよね?


ガンっ!

私が笑ったその時、千賀という人は机を蹴った。

え・・・?心の中で私は戸惑う。

すると、また彼と目があう。あの、鋭く冷たい敵視しているような目。

まわりは、気にせずに笑っているけど、私にはわかった。今のは、完全に私に向けられたものだと。

私、この人になにかしたの?不安になる心はどんどん体を蝕んでいく。

そんな時、

「ごめん、小泉さん私たち、ちょっとトイレ行ってくるね?」

なっちゃんが私の手を引いた。



最後までお読みいただきありがとうございました。

咲結の昔の記憶があまりないという所と、奈津美が坂本先生に対して思っている所。そこに注目して読んでいただけると嬉しいです!

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