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梨花編③ 【忍び寄る影】

梨花編③

窓から夕陽の光が差し込む。

 もう、放課後となった。なんだか今日は、良い日だったと思う。クラスには馴染めなかったのが難点だけど、原ちゃんに会えた事は本当に嬉しかった。


三浦とはあの後から話をしていない。いや、喋れるはずもない。

もし、あれが原因で女子たちを敵に回してしまったら・・・。考えるだけでも恐ろしい。

 不安を抱えながらも私は職員室へと向かい、吉原先生に今日あった出来事を話した。伝えるのが少し遅くなってしまったけれど、吉原先生は快くオーケーを出してくれて、私は気分が良くなる。

今日は寄り道でもしようかな。

 

☆☆☆

3年C組。そう書かれてある下駄箱着くと、今日から、ここで上履きを取り換えるのね、としみじみ思った。

私は、上履きを脱ごうと踵の方に指を挟む。

すると、誰かが声を荒げ、怒鳴っている声が響き渡った。階段の方から聞こえてくるその声は、私の方まで響き、はっきりと言葉がわかるくらいに聞こえてきた。

怒鳴っているのは、男の先生だ。もしかして、坂本先生か? 坂本先生は、たしか私が一年の時に担任だった人。まぁ、当たっているかわからないけど、あの先生は熱血だったからな・・・。怒らせると、噴火するみたいに声がでかくなるし。

悪ふざけでもしてたのか?私は冷めた気持ちで聞いていた。


「わかったな!」そんな声が、人一倍大きく聞こえた後、声が静まっていく。

なんだか、黙って聞いていた自分がバカみたいで、もう帰ろうと後ろを向いた。


「梨花」

その時、急に名前を呼ばれ、ビックリして振り替える。

すると、同じクラスだった、横井春香、という少女が立っていた。

 たしか、2年生の時に成り行きで同じ委員会に入り、仲良くなった子だ。もう、クラスは別れてしまったけど。


「春香ちゃんじゃない。久しぶり~。新しいクラスどうだった?」

急だったけれど、動じずに、私は親しみ安く彼女に対応した。急速に顔色を変えた。

「う~ん、みんなと離れちゃったし、様子見かなぁ~」

そう言いながら、春香ちゃんは器用に上履きを脱いだ。

「ははっ、まだ初日よ?」笑いも交え、冗談かましでいった。

「それな~」そう言うとり春香ちゃんも、あはは、と笑った。

この子は、そこまで気を使わない相手。だと、暗示をかけている。

まぁ、少しサバサバしている所があるから、普通の女子と違って話やすいのはあるかも。気はもちろん使うけど。

「ねぇ、さっき、凄い怒鳴り声聞こえなかった?」小声で、喋ってきた。あぁ、坂本先生のね。

 「あー、ね。何だったか知ってる?」あまり興味はないけど、今の状況にはこの返しがベストだと思い、私は訊いた。テンションも上げ、表情も作り、今私は完全に猫を被っている。ま、まぁ、春香ちゃんの顔に聞いて欲しいって書いてあるしね・・・。

「なんかね、喧嘩だって!眼鏡かけてる演劇部の男子と、今日、初日から転校してきた男子がイザコザ起こしたらしい!人に迷惑かけたとかで、坂本先生に怒られてたよー」

「えー、それは嫌だね」やっぱり、坂本先生だったのね。言葉、表情とは裏腹に私は心の中でそんなことをやけに冷静に考えていた。

喧嘩。男子ってそういうの多いよね。まぁ、女子の方がドロドロしていて多いと思うけど。

「それでね、迷惑かけたって人が、まさかの校長先生だったらしいの!」

「校長先生!?」続けて喋る言葉の中で、校長先生という言葉を聞き機敏に反応した。自分よりも、すごく高い地位にいる方だよ!?私は自分の中で焦る。

「ははっ、これは、嘘か本当かわからないけどねー」そういうと、彼女は軽く笑った。

そりゃあ、先生に怒られるわけね。私は一人納得する。けど、なんで自分から怒られようとすることをするのだろう。なんだか、・・・昔の自分みたいだ。


すると彼女は、上履きを下駄箱に入れ、パッと顔を変えた。何かと思うと、「あ!私、サッカーの部活あるからお先に行くねー」と言って、急に走り出して行ってしまった。面白い子だな。そう思い、走り去る後ろ姿に手を振った。

そういえば、同じクラスだった女子と喋ったのは今で初めてだったな。

とことん、孤独だったのかな。そんなことが身に染みた。


 夕焼けの光が漏れている下駄箱の前で、私はなんとなく昔の自分を思い出す。

昔から自分は変わっていないのかな。そんな、思いが心に湧いたけれど、直ぐに否定した。きっと変わってはいるはずだと、平和に上手にできているじゃないか、と。

ムキになった私は、抑えきれず「喧嘩とか、あほらし。ガキか。」

そんな言葉を吐き捨て、今ある自分を肯定した。声のトーンは自ら思う程冷たく、冷めていた。

 勝手に妄想して、私は喧嘩していた奴らを心の中で嘲笑う。アイツらよりも、自分の方が上だと見下して。本当は、リンクしている昔の自分を嘲笑っているだけなのに。


もう、帰ろう。私は、やっと学校を後にした。寄り道はしなくていいや。


けれど、梨花は知らない。今の会話や、梨花の言葉が誰かに聞かれていた事を。


区切りの良い所にしようと思ったら、文字数がいつもより少なめになりました・・・。

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