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次いでこの世の死霊使い(ネクロマンサー)  作者: 時雨 茉莉花
第一章 〜嚆矢の物語篇〜
4/7

第三話 死霊は覚醒する、約束を交わす

・characters

逢末あいまつ 蒼兎あいと

逢末あいまつ 瑚糸こいと

 メグル・エルフレスト

根暗ねくら 暗夜くらや

・久遠 魅々くおん みみか

・リリア・アーサー

・リリカ・アーサー

・七光 めいく(ななびかり めいく)


各話出て来る人物出てこない人物がいます。

 夜の神社、その一端で俺とメグルは会話を交わしていた。



「それで? あいつは一体何だったんだよ?」


「あぁ、あれは『邪剣使い』(ジェノサイド)のリリア・アーサーね、全世界的には上級の生物だけど、わたしには及ばないわ」



 全世界ねぇ....随分大層なことで。

 俺は自分の頭の中の記憶を散策する。



「なるほどな、それじゃあ俺の記憶の中にメグルは『未完成』だっていう、記憶があるだけど....どういう事なんだ?」


「そのままの通りだよ、わたしはまだ『未完成」なの......それでね、完成するためには──────」


「するためには?」


「えっと、血が必要なの....」


「.....血?」



 メグルを見ると少し顔が火照っている様に見える。



「メグル....? 熱でもあるのか?」


「? えっと....なんで?」


「いや、顔が少し赤い様な気がしてな....ほら、顔こっちに」



 俺は熱が無いか確かめるために、おでこに手を持っていく。



「ふ、ふぇッ!? ちょ、ちょっと....蒼兎ぉ!?」


「....うん、やっぱり少し熱いな....大丈夫か?」


「え、えっと、その....だ、大丈夫だからッ!!」



 そういうと俺から一歩離れる、やれやれ。まぁ、自分の事は自分が一番分かるっていうしな。

 俺は話を続ける。


「それで? 血が必要って言うのは、どういう事なんだ?」


「うん、それはね....わたしは吸血鬼(ヴァンパイア)死霊使い(ネクロマンサー)のハーフで、普通の吸血鬼は血を吸って『完成』の状態に達するの。だけど死霊使いの血も入っているわたしが血を吸うと『死霊力』が、血を吸った人の体内に入り込んでしまうの....」


「なるほど、その『死霊力』が体内に入ると、どうなるんだ?」


「死ぬ」



 少し曇った顔で、メグルはそう言った。



「『死霊力』をうまくコントロール出来なくなって、この世から消えてしまうの。だから、わたしは迂闊に血を吸うことが出来ない、だからいつまでも『未完成』のままって訳」


「じゃあさ、俺の血を吸えばいいんじゃないか?」


「え? そしたら、蒼兎が.........あっ!」


「お、分かったみたいだな」



 『死霊力』が入ってしまうと、死んでしまう....という事は、死ななければいいわけだ。となれば話は簡単、『死霊の呪い』で死ねない俺には、大抜擢の役じゃないか。



「全然気がつかなかったよ、そんな方法があるなんて。やっぱり蒼兎は凄いねっ!!」


「いいや、この『死霊の呪い』をかけたのはメグルだろ? だったら凄いのはメグルじゃないか」



 そう話しながら、俺は時計を見る。長い針が11、短い針が30を指していた。

 そろそろ、帰らないとな....。



「なぁ、メグル....そろそろ帰──────」



 すると、俺の言葉を遮る様にメグルが。



「ねぇ、蒼兎。新しいお客さんがいるみたいだよ....」


「お客さん......?」



 俺は、メグルの向いている方へと視線を向ける。

 月明かりに当たり、人影が見える。

 その人影に向かい、メグルが少し怒った口調で、



「あなたは誰」


「おや? 名乗る時は自分から....とは、言いませ......」


「黙りなさい、人間。たかが人間如きが、わたしに口答えしようなんて....一万年早いわ」


「そうですか、でも狙いはあなたではないので....」


「分かってる、蒼兎の呪いが欲しいのでしょう? だったらわたしを倒してからじゃないとダメ。さぁ、死にたくなかったら、出直しなさい」



 俺は目を疑った。月明かりの下に入った人影をジッと見る。

 間違いない、暗夜先生だ。



「ねぇ、蒼兎。コイツ知ってるの?」


「え? あぁ、うん。知ってる、今日....その、襲われたっていうか、なんというか....」


「へぇー、そっかぁー。ありがとう蒼兎。......蒼兎を襲ったの?」


「おやおや、物騒な事を言わないで下さいよ、襲った....なんて。少し様子を見ただけですよ、邪魔が入りましたけどね」


「そう、どうでもいいけど、早く引き返さないと痛い目に合うわよ」


「ほう、では試しに......はぁッ──────!!!!」



 と、今日俺を切り裂こうとしてきた黒い剣で、ハルカに一振り。その途中で、黒い剣を見ながらメグルがこう呟く。



「止まれ」

 


 その瞬間、メグルが剣を操っているかの様に、剣が静止する。

 メグルは視線を、暗夜先生に移して、



「本当に弱いのね、人間って」


「どうでしょう?」



 ニヤリと暗夜先生が笑う。

 そのまま、左手を剣に向ける。

 


『魔力解放』(フルブレイカー)



 と、唱える。

 その直後、黒い剣は段々と紅く染まり、弾けた。すると、先程まで静止していた剣が動くようになる。そして、また暗夜先生が動き出し剣を振り上げる、そのままこちらへ素早く近づいてくる。

 それに対して、メグルは、


「....止まれ」



 と、言う。

 先程と同じように、止まる──────はずだった。

 しかし、黒い剣は止まる事なく、メグルへと振り下ろされる。



「───────ッ!?」


「メグル───────ッ!!!」



 俺の身体は動かそうと思う前に、動いていた。

 メグルの前に立ち塞がり、直後、右腕と左足を、切り落とされる。激痛に襲われてそのまま、その場に倒れる。それでもすぐに治る。

 全て『死霊の呪い』のせいだ、メグルが俺にかけた『死霊の呪い』だ。かけた本人が死ななければ、絶対に死ぬ事が出来ない、そんな禁忌の呪い。


 なぜメグルが『死霊の呪い』を俺にかけたのか、そんなことも今の俺には、分からなかった。



「蒼兎っ!? だ、大丈夫っ?」


「あぁ、大丈夫だ....あのさ、メグル....」


「ん? 何、蒼兎?」


「俺、守られてばっかだよな、メグルに....6年前も今も....」


「え? いや、全然そんなこと無い─────」



 俺はメグルの言葉を遮るように、



「いいや、俺は守られてばっかだよ....だからさ、俺にも守らせてくれないか? 

......メグルを」


「あ、蒼兎.....」


 少し下を向いて、それから俺の方に近づいて来る、そして微笑みを浮かべてこう言った。


「うん、分かった....じゃあ、守って....蒼兎」


「おう、任せとけ!!」



 メグルと交わす始めての....約束だった。

 その約束を守らなきゃいけない、絶対に。そう、俺は心に刻みつけた。

 すぐ、背後にいる俺は暗夜先生を睨みつける。


「話は終わりましたか? わざわざ待っていたのですから、それなりの物を見せて下さいね....?」



 そうは言ったものの、確実に力の差がありすぎる。

 どうやって戦う、どうやって勝つ....。

 そう考えていると、後ろからメグルの声が聞こえる。



「─────蒼兎!!」


「....え?」



 その瞬間だった。カプッと、首元に突き刺さるような感覚を覚える。

 血を吸われている、それと共に何かが流れ込んで来るような、そんな感覚。



「はい、おわり」


「一体....何をしたんだ?」


「血を吸ったのが主だけど、『死霊力』を流したの、これで通常の10倍の力は出るはず、それと『死霊力』を操ることも出来るはず」


「....ありがとな....メグル」



 こんなとこまで、迷惑をかけてしまうなんて、全く本当に俺はダメな奴だ....。

 でも、だからこそ、俺は絶対に彼女をメグルを守らなければ....ならないのだ....。

指摘、評価、感想などあれば幸いです。



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