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次いでこの世の死霊使い(ネクロマンサー)  作者: 時雨 茉莉花
第一章 〜嚆矢の物語篇〜
1/7

プロローグ 赤月の夜、死霊使いは消える

・characters

逢末あいまつ 蒼兎あいと

逢末あいまつ 瑚糸こいと

 メグル・エルフレスト

根暗ねくら 暗夜くらや

・久遠 魅々くおん みみか

・七光 めいく(ななびかり めいく)


各話、出てくる人物と出てこない人物がいます。

 遠い....そう、それは確かとても遠い記憶。

 少しだけ思い出した、確かあの時は....。



「メグル、僕に....何をしたの?」


「呪いをかけたの....死霊というね」



 白髪で、華奢な身体、美しく整った顔の少女が微笑を浮かべた。



「呪い?」


「そう。呪い」


「どんな....呪いなの?」


「私が死ななければ、絶対に死なない....そんな『死霊の呪い』よ」



 呪いという聞き慣れない言葉を聞き、僕は疑問を浮かべる、するとメグルが。



「そうね....なんて説明したら良いかしら?」



 悪戯に先程とは違う少し不気味な笑顔を浮かべる、するとメグルの後ろから。



「身をもって体感するのが一番では無いですか?」



 新たな声だった、暗闇の中からとても美しい少女が歩いてきた。

 肩まで伸びた金色の髪、吸い込まれそうなほどに蒼い瞳。



「....あなたは、誰?」



 ────と、メグルは歩いてくる少女に声をかける。



「最強の幻影師、『吸血死霊使い』(ネクロヴァイア)のあなたに名乗るまでも無いと思うのですが....?」

「それは....そうだけど、私はまだ『未完成』だから....」


 二人の会話が耳に入ってくるが、何を言っているのかは....とてもじゃないが分からない。


「それで? 『邪剣使い』(ジェノサイド)がなんの用かしら?」


「ほら、やっぱり....分かっているじゃ無いですか、私の正体」



 小悪魔的な微笑を浮かべて、メグルは言った。



「当たり前よ、『未完成』でもこれくらいは出来るわ」


「なるほど....それで? そこにいる人間に『死霊の呪い』をかけたのは....あなた?」



 金髪の少女の問いにメグルが答える。



「えぇ、そう....でもあなたには関係の無い事でしょう?」


「関係が無いのであれば、関係を作れば良いとは....思いませんか?」


「一体、何を言っているの....?」



 そんなことを言う金髪の少女に対しメグルは警戒心を強める。



「ほら、こんな風に....です」



 そう言うと少女が長い剣の様なものを取り出すのが見える。

 それを見たすぐ後、僕は....。



「───────ッ!?」


 切られた? いや、切られた。

 背中に痛みが走る、だんだんと血が滲んでいくのが分かる、痛みはやがて熱に変わり....僕はその場に倒れ込んだ。



「──────あ、蒼兎ッ!?」



 メグルの動揺の声が聞こえるがそんな場合では無い。

 先程よりも痛みが広がる、考えたくも無い『死』と言う言葉が頭の中を彷徨う。痛みと死が交差して恐怖が生まれる。



「何故、蒼兎に手を出したの....」


「言ったじゃ無いですか、関係を作る....と」



 二人の会話がだんだんと聞こえなくなり....。



 僕は....死んだ───────。



「何を怖い顔をしているのですか....彼は、死なないのでしょう?」


「そうだけど....蒼兎を傷付けることは、許さない....」


「そうですか....ですが『未完成』のあなたに何が出来るというのです?」


「.........」



 メグルは答える事が出来なかった、脳を詮索しても言葉が見つからなかったのだ。



「はぁ、やはり早かったですか....」


「一体、何のこと....?」


「呪いをかけるのが....ですよ、『死霊の呪い』です。下手したら世界を壊しかねません」


「何をする気なの?」


「質問が多いですね....まぁ、良いです。記憶を奪います、呪いの事もあなたの事も私の事も、今までの記憶を全部....ね」



 メグルは震えた声でこんな事を言う。



「そんな事、させない....」


「そうですか、まぁあなたの事なんてどうでも良いのですけど....。どちらにせよ、記憶は奪いますよ」


「ま、待って....蒼兎に酷いことしないで....」


「それは無理なお願いです、こちらも仕事ですので」



 そう言うと金髪の少女は、転がった少年の身体に手を向け。



「えいっ」


 と、頭を突いた。

 その瞬間、逢末 蒼兎という一人の少年の存在が消えた、何もかも無くなった。



「六年です、六年後またこの神社で記憶を戻しましょう....」



 そういうと金髪の少女は暗闇へと消えて行った。



「....蒼兎、ごめんね。 私が『未完成』だったばっかりに、不意打ちに気付かなくて....」



 メグルは転がった蒼兎の身体に手を置きこう言った。



「私が『完成』するまで、なるべく蒼兎の近くに....近くに....居なきゃ」



 それから数分後、蒼兎は生き返った....。

 この後のことは何も覚えていない。


 動き出した物語は、一度終止符を打たれ....六年後、再び動き出す──────。




                  ♦︎





 朝、薄暗い部屋で彼───────逢末 蒼兎はベッドの上で熟睡していた。

 白い髪が普通の人よりは長く伸びている、親に中学の頃やらされていた武道で鍛えられた細身の身体。

 ピピピ、ピピピとデジタル時計のアラームが部屋の中に鳴り響く、その音を聞き死んだような目を開いて閉じてを繰り返す。



「う....うぅ───────」



 身体を起こそうとベッドへ手を置いたその時、蒼兎の部屋のドアから一人の少女が顔を覗かせていた。



「兄さん....まだ寝ているの?」


「....ん?」



 部屋に入ってきた妹────瑚糸は首を傾げて蒼兎の方を見ている。



「....瑚糸か、おはよ」


「はい、兄さんおはよ─────ではなくて、今何時だとお思いですか?」


「....え?」



 蒼兎はピピピと鳴っていた時計の方へと目を向ける。



「アラームを七時にセットしたから今は....」



 と、視線をデジタル時計へと合わせると八時と表記されていた。



「えと、八時か─────って、八時ッ!?」



 七時にセットしたはずのアラームが八時に鳴っていたのである。

 慌てる蒼兎に瑚糸が声をかける。



「登校は八時十分でしたよね? このままだと兄さんは確実に遅刻です。しかも昨日に引き続き....です」


「う、うぅ─────ヤバイな....」



 二日間連続での遅刻は成績にも響いてくるので、早々に蒼兎はベッドの上から飛び降りた。

 その時だった、足下にあったカバンを踏みつけ蒼兎はそのまま倒れてしまった。

 ─────瑚糸に覆い被さる様な形で。



「うわ───────ッ!!」


「ちょっ!? 兄さんッ!?」



 蒼兎は倒れて、手を置いたところに少し暖かく柔らかい膨らみがある事に気付いた。

 大き過ぎず小さ過ぎず、ちょうど良い位の....位の....。



「なんだ、これ?」


「ひゃっ」



 瑚糸が可愛らしい声を漏らす、手元を見ると蒼兎の手は瑚糸の胸の上にあった。

 蒼兎はすぐに手を退ける。



「あ、えと、これはだな....」



 瑚糸は怒った顔でこちらを向いている、そしてこう言い放った。



「に、兄さんの、変態ッ!バカッ!淫乱シスコンッ!!」


「不可抗力だぁぁぁあああ!!!!」



 騒々しい朝を迎え、こんなことをしている内に時間が経っている事に気づく。

 蒼兎は瑚糸に謝りながら、支度を整えた。



「瑚糸、さっきは本当にすまなかったな、この通りだ許してくれ!」


「はぁ、もういいです。学校に遅刻しますよ早く行ったらどうですか?」



 先程と異なり少し蒼兎の顔が曇る。



「瑚糸、今日も学校行かないのか....?」


「私は、まだ少し休養中....ですから....」


「そうか....じゃあ行ってくるからな! いってきますっ!」


「はい、いってらっしゃい兄さん」



 瑚糸に見送られ蒼兎は学校へと向かった。



「今日で....六年目....」


 玄関を見つめながら、逢末 瑚糸は不敵な笑みを浮かべていた。


 

指摘、評価、感想などあれば幸いです。


第三話から、一人称になります。ご了承下さい。

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