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Another Story 〜異世界の救済〜  作者: 春夏秋冬
異世界≪ビギニング≫編
8/12

第7話 村の中には



 ざっと見た限り、村の中には40人程度の生徒が集まっていた。ここで起こった出来事がまだ信じられないようで、誰もが沈痛な面持ちをしている。


「結構多いな」


「ああ。動ける者達で周囲の生徒を保護して回っているからね」


「なるほど。精が出ることで」


 人数は多い方がいい。一たちはいつ元の世界へ帰れるのか分からない状況に陥っている。しばらくこの世界で暮らしていくなら拠点の強化は必須と言える。当然、それを為すためには人手がたくさん必要になる。


 周囲を彷徨(さまよ)っている生徒をただ集めればいいだけ。言葉にすれば簡単そうに聞こえるかもしれないが、志那の呼びかけじゃなければ皆 応じようとは思わなかったはずだ。自らの命を預けるということなのだから。


 このような危機的状況に陥ってもなお、堂々とした志那の佇まい。そして、彼は人のために率先して行動を起こした。


 リーダーシップのようなものを兼ね備えている彼だからこそ、心を動かされるのだろう。


 最下位でぶっきらぼう、仏頂面の一ではこうはいくまい。


「少し待っていてくれ」


 志那はそう言うと、座り込む生徒ら一人一人に声をかけて回る。表情が暗い彼らだが、志那との会話でほとんどの者が明るさを取り戻した。


「あいつは頼りになる男だぜ」


 志那の姿を見ていた一にそう耳打ちしたのは童児だ。


「ああ、そうだな……」


 志那のああいう姿を見ていると、一も何かしなくてはという焦燥に駆られる。


「ごめん、お待たせ」


 一通り声をかけ終わった志那は一同の元へ戻る。一の後ろに隠れている未愛に用があった。


「未愛、頼みがあるんだけど良いかい?」


「は、はい。何でしょう?」


「怪我を負った者がいる。治療をお願い出来ないか?」


「わ……分かりました!」


 こんな自分にも出来ることがある。それが堪らなく嬉しいのか、未愛は正気に溢れた表情を浮かべていた。


 志那は一つ頷くと、未愛を連れて奥の建物へ姿を消す。


 一には未愛のような力はないが、それでも何か出来ることがあるはずだ。


 手伝えることはないか。残った二人にそう尋ねようとして言葉に詰まる。


「……名前、なんだっけアンタら」


「今更だな……。青出(あおいで) 童児だ」


「ホンット。城宮(しろみや) 姫よ、覚えておきなさい」


「すまん。青出と城宮だな……よし、覚えた」


 実は志那のインパクトが強すぎたせいで二人の事まで気が回らなかったのだが、それを正直に言うと場が拗れそうだったのでそっと心の中に留めることにした。モブキャラ扱いしてるだろ、みたいなことを言われたら返す言葉がない。


 それはそれとして。一は先ほど言おうとしていた件について改めて尋ねる。


「俺にも何か手伝えることはないか? 精神的にも余裕があるし、キビキビ動けるぞ」


 童児と姫はお互いに顔を見合わせる。確かに彼は他の生徒と違って落ち込んでいる様子はない。ショックな場面が多々あったはずなのに、彼からは不安など一切感じられない。


 これなら仕事を任せても良さそうだ。


「なら家の掃除を頼めるか? 長年使われていなかったのか、中は埃でまみれていてな」


「私たちは生徒の保護で忙しいし、お願いできるなら是非やってもらいたいわ。埃まみれの中 寝るのは嫌だしね」


 当然だが、やはり一に任された仕事は雑用だった。ゴブリン相手に苦戦していたのだから外に連れて行くのは危ないという判断からだろう。


「分かった」


 一はそれを快諾する。村の中でやりたいこともあったし、断る理由はない。


「じゃあ頼むぜ。俺たちはまた外に出っから」


 童児の言葉にこくり、と頷く一だった。


 と、その前に。掃除を始める前にやっておきたいこと、その1。


 今現在、村の中にいる生徒の学科を把握したかった。一は生徒一人一人に声をかけ、学科とそのランクを聞いて回る。


「ん? 透か……?」


 その最中、偶然にも入学式で出会った透と遭遇する。


「え? あ、イッチー!?」


 一の姿を見て、ぱあっと表情を明るくする透。


「良かったよー。知らない人ばっかで心細いし、あんな目にも会うし」


「災難だったな」


「お互い様だけどね」


 比較的、透は落ち着いているようだった。というより、一と出会えたことで安心できたみたいだ。


「イッチーは何してるの?」


「雑用、の前に挨拶を。これから世話になるわけだし」


「ああ──。雑用ってのは?」


「家の中の掃除を頼まれた」


「家の中、すっごく汚かったしね。良ければ僕も手伝うよ」


「助かる。俺はまだ挨拶し終わってないから、先に始めててもらえるか?」


「ん。了解っ!」


 軽快な足取りで近くの家屋に向かう透。知り合いがいるといないとでは、やはり心の在り方が変わるのだろう。


 取り敢えず掃除の方は一旦透に任せ、挨拶の続きを再開した一だった。


 結果、この村の中には戦士科が8人、銃士科が5人、楯士科が7人、黒魔科が7人、白魔科が4人、通信科が4人、炊事科が4人いることが分かった。


 ちなみに通信科の生徒は学校と連絡する術を持っていなかった。ただ、簡単な機材は持ち込んでいたので、生徒同士連絡を取り合うことは可能だ。


「いざとなれば通信機で連携は取れる。後は……」


 一は村の周りに設置された柵を見上げた。改めて見ても頑丈な作りだと分かる。多分、これを壊されることはそうそうないだろう。


 なら、侵入経路は──。


「……揺……ん」


 その時は銃士科に頼むとして。


「揺……さん……!」


 家屋も壊されないよう、守る必要がある。どうしたものか。


「揺木、さんっ!!」


「うわ、びっくりした」


 いつの間に背後に立っていたのだろうか。突然、大きな声を上げたのは先ほどまで治療して回っていた未愛だった。


「ぜ、全然ビックリしたようには見えない、です」


「ビックリしたよ。何?」


「何をされてるん、ですか……?」


「ああ、ちょっと調べ事を。でももう終わったし、これから家の掃除に移ろうと思っている」


「お掃除、ですか」


「ああ。──あ、そうだ。多分、一部屋ぐらいなら掃除終わってると思うし、そこ使っていいぞ。治療してばっかで疲れたろ?」


 一は透が掃除しているであろう家屋を指差す。


「い、いえ。平気です。私も手伝います」


「無理してないか?」


「そんなこと、ないです」


 もしかして魔力量まで無尽蔵だったりするのだろうか。


 やる気に満ち溢れているようだし、断れば逆に未愛のモチベーションを下げるだけかもしれない。


 腕を組んで唸っていた一だが、仕方なく未愛の申し出を受けることにした。


「じゃあ、手伝ってもらっていいか?」


「は、はいっ」


 嬉しそうに返事をする未愛に首を傾げつつ、透が掃除中の家屋へ一緒に向かった。


 そのすぐ後のこと。家屋に背を預けながら空を眺めていた男があるものを拾う。


「あン? なんだこれ」


「どうした?」


「いや、空から羽が降ってきた」



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