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77話

                  11

「ヒロ、村の様子はどうだい?」

 村はずれの高台で、2人の少年が木立の陰から眼下を流れる川を、眺めながら話をしている。


「長老たち始め、村の大人たちはみんな、朝から晩までテレビにくぎ付けだよ。

 食事の時と眠るとき以外は、テレビから離れられないみたい。

 学校へ行っても先生たちがいないので、生徒たちで自習しているしかないし、ミッテランさんはいないし、アマンダ先生も学校へ来ないから、魔法学校も休校状態。


 どうして、あんな退屈なテレビ番組を1日中見ていられるのか、不思議なくらいにおもうけど、あまりそういった事を言ってはいけないみたい。

 おとなしくしているうちは平気だったけど、サブちゃんが父ちゃん母ちゃんに、テレビばっかり見過ぎだって文句を言うって言っていたら、翌日から学校へ顔を出すこともなくなっちゃった。


 どうやら、無理やりテレビを見させられて、それからはテレビから離れられなくなったみたい。

 そうなるのが怖いから、僕たちはおとなしくしているよ。」

 ハルよりも一回り体の小さな少年は、寂しそうに小声で打ち明けた。


「ふうん、やっぱりテレビを見ていると、おかしくなってしまうようだね。

 危険だから、ヒロ達は家に居る時にもテレビ画面を、出来るだけ見ないようにするようにね。」

 ハルは、小さく頷きながら少年に告げる。


「うん、でも僕たちもハル兄ちゃんたちの隠れ家へ連れて行ってよ。

 みんな怖がっているよ。」

 ヒロは不満そうに頬を膨らませる。


「うーん、そうは言ってもあんまり住み心地のいいところじゃないからね。

 ヒロ達は家に居たほうがいいよ。


 それに、聞いている限りではテレビを見続けるだけで、文句さえ言わなければヒロ達に変なことはしないでしょ?だったら、このまま村の人たちの様子を探っていて欲しいんだ。

 村の大人で、他の人とは違う行動をとっている人がいたら、教えてほしい。


 特に死にそうだった人が、急に元気になったとか・・・・。

 もしかすると、鬼に乗り移られた人かもしれないからね。」

 そんなヒロをやさしく諭すように、ハルは彼の頭に手を置いてやさしく告げる。


「うん、分った。

 そう言えば、九州からの移民のリーダーの2人は、朝から晩まで魔法の練習ばっかりしているみたい。

 他の移民の人たちとも一緒には行動しないし、かなり怪しいね。」

 ハルの言葉に、ヒロが思い出したように目を輝かせて答える。


「ふうん、あの二人か。

 元気だったから鬼に乗り移られたとは考えにくいし・・・、もう少し様子を探ってみてくれない?」

「うん、いいよ。」

 ハルの頼みにヒロは大きく頷く。


「じゃあ、また1週間後にこの場所で。」

 この言葉を残して、ハルは瞬間移動した。



「はーい、ハル君。元気だった?」

 中学生くらいだろうか、3人のセーラー服姿の少女たちが、大きな荷物を抱えながら路地裏へと入って来る。その先には、先ほど釧路の村から瞬間移動したハルの姿があった。


「はい、僕たちは大丈夫です。

 それよりも、お姉さんたちはどうですか?」

 ハルは、そんな少女たちの身を気づかってみせた。


「あたしたちは大丈夫よ、テレビ放送もラジオ放送も、一切見ない聞かないを通しているから。

 でも、段々とあたしたちの周りでも、テレビから離れられなくなる友達が増えてきているのよね。

 何も知らなければ、あたしたちだって・・・・・。


 先日は驚いたわよ、急に路地裏の方から声がしてきて、テレビ見てますか?って聞くんだもの。」

『くすくすくす。』

 彼女の言葉に、3人の少女たちが一斉に笑い出す。


「おかげで、今この街に起こっていることが何なのか、分って来たわ。

 あたしたちは魔法も使えないし、戦う事は出来ないけど、ハル君たちには協力するわよ。

 ハイこれ、当面の食料。」


 おさげ髪の少女が、抱えていた大きなカバンを開きながらハルに見せた。

 つられて、他の2人も荷物を広げる。

 どのカバンの中にもぎっしりと、色々な種類の缶詰が詰まっているようだ。


「あ・・・ありがとうございます。

 助かります。でも・・・こんなに集めるの大変だったんじゃあ・・・。」

 ハルはそう言って深々と頭を下げる。


「大丈夫よ・・・。

 実は、あたしたちが集められたのは数個の缶詰だけなの。


 ここへ来る時に、突然綺麗な女の人が現れて、魔法少年の所に行くのでしょ。

 食料ならこれを持っていきなさいって渡してくれたのよ。親切な人がいるものね。」

 少女は、恥ずかしそうに顔を赤らめながら答えた。


「そうですか、本当にありがとうございます。

 お姉さんたちもくれぐれも気を付けて、過ごしてください。」

 その女の人には、ハルに心当たりがあった。


 深々ともう一度お辞儀をすると、ハルは瞬間移動してその場から消えた。

(一旦戻ってから、次は中部の村へ行かなくっちゃね。)

 どうやら、各町のテレビを見ていないであろう子供たちと連絡を取って、状況を探っている様だ。



 そんな折、ハルたちが姿を消して1週間ほど経過した頃・・・・

 魔物の巣の魔物たちが突然暴れ出したとの連絡が、ジミーの元へと入って来た。

 この村でのジミーの立場は学校の先生ではあるのだが、警察機構を持たない村の為、こういった物騒な出来事はジミーの元へと連絡が入ってくるのである。


 担任を受け持っていたハルたちの姿が消えてから、既に1週間は経過しようとしている時で、他の学年の体育の授業も行なう予定にはなっていたのだが、なぜか他の先生たちは皆登校してくることもなく、一部の生徒たちも登校してこなくなり、学校閉鎖に近い状態になっていた。


 その為、以前よりは昼間の空き時間があるジミーは、呼び出しに応じて魔物の巣 南館へと向かった。

 今では人を襲う事もなくなったとはいえ、狂暴な魔物たちが暴れていると聞いて、マシンガンで武装して現場へと駆けつける。


「よう、一体どうしたんだい?」

 石造りで強固な建物は、外観からは異常は見えなかったが、内部は相当ひどい状況なのだろうか、建物の周りには人だかりならぬ、魔物だかりが出来ていた。


「ご苦労様です。

 まあ、中をご覧ください。」

 出迎えた小さなトカゲ系魔物であるレオンに付いて、ジミーは建物の中へと入って行った。


 中はシーンとしていて、一切物音はしない。

 本当に中で魔物たちが暴れているのであろうか。

 それにしても、廊下も扉が開いたままの部屋の中の様子を見ても、荒らされた様子は全く見かけられない。


 しかし、その思いは食堂へ入って一変する。

 大きなプロジェクターが、見るも無残に壊されているのである。

 仙台市の放送開始に合わせて、魔物たちにも娯楽を与えようと配布した、テレビ放送用のプロジェクターである。


 装置は粉々に破壊されて、中の部品が見える状態であり、画面を映し出すスクリーンも細かく切った破片が隅の方にたたんであるようだ。


「えっ?誰かがすでに後片付けをしたのかい?」

 ジミーがレオンに問いかける。

 そうなのだ、壊れたプロジェクターの部品も掻き集められて、1ヶ所にまとめられ、食堂内は整然としている。


「ここの他に、階段の踊り場に設置された大型テレビも破壊されました。

 我々魔物は個人の部屋にテレビを置くことを嫌ったので、共同部分にテレビが配置されたのですが、その全てが破壊されました。


 その犯人は・・・こちらです。」

 レオンは食堂を後にして、廊下から中庭へとジミーを招いた。


「と・・・トン吉さん。

 トン吉さんが暴れて、テレビを破壊したの?

 どうしてまた、折角配布されたテレビを・・・。」


 中庭に立っていたのは、大きな豚系の魔物であった。

 トン吉は、自分を逮捕しに来たのであろうジミーに対して、悪びれずに笑顔で話しかけてきた。


「あっしら魔物の感覚は、人間様たちよりも幾分かは鋭いのです。

 その為、鬼に乗り移られた人間が、あっしらを操ろうとして目が光った時は、すぐにその目を反らして洗脳されることを避けることができました。


 今回は、テレビ放送を通じて洗脳しようとしていたので、その受信器であるテレビを全て破壊しました。

 村のテレビも全て破壊したいところですが、人間様たちと争いになってしまっては、大変です。


 その為、平和的に解決する為に、ジミーさんに来てもらおうと、あっしが暴れていることにしてお呼び立てしたものです。ご容赦ください。」

 トン吉はそう言いながら頭を下げた。


「テレビ放送を通じて、人々を操ろうとしているって?

 それは本当かい?」

 ジミーは予想もしていなかったトン吉の言葉に、戸惑いを隠せない様子だ。


「ジミー先生は、テレビを見ていないのですか?

 魔法学校にも出席しなくなったから、既に鬼に操られてテレビばかり見ているものだと思っていました。」

 不意に、ジミーの背後から聞きなれた声がしてきた。


「ハル君・・・?無事だったのかい?」

「ええ、村の人たちがテレビを通じて操られてしまい、僕たちにも無理やりテレビを見せて洗脳しようとしたので、逃げることにしました。」


「そうだったのか。君たちは突然正気を失って、どこかへ行ってしまったとハルじいさんたちに聞いたけど、ハルじいさんたちの方が、洗脳されて正気を失ったというんだね。」

「はいそうです。」


「確かにここの所、村の人たちの様子がおかしいとは感じていた。

 魔法学校はもとより、学校も先生たちが登校してこないので、ほぼ休校状態だし・・・。

 一部の生徒たちは登校してくるから、おいらが間に合う分だけは授業を受け持っているんだが、限界があるよ。


 テレビ放送を通じてと言うと、仙台市市長が政治や歴史、文化などについて語っている内容だと聞いた。

 そうすると、仙台市市長に鬼が乗り移っているという事になるが・・・・そんなことが・・・。」

 ジミーは腕を組んで、立ったまま考え事を始めた。


「それはそうと、ミリンダちゃんやゴローさん・・・それに、ホースゥさんも一緒なのかい?」

 ジミーはゆっくりとハルの方に振り向いて、小さな少年にやさしく話しかける。


「はい、3人とも元気です。

 それと、ミッテランさんも・・・・。」

 そう言いながら、ハルの言葉は力なく途絶えた。


「ミッテランさん?ミッテランさんがどうかしたのかい?」

 そんなハルの肩をやさしく両手で包み込むように支えながら、ジミーが問いかける。


「一緒に来ていただければ分ります。」

 そう言うとハルはジミーの手を握り、瞬間移動した。


「ここは・・・?」

 辺り一面の草原に囲まれた中にポツンとそびえ立つ、巨大な石造りの塔が目の前にあった。


「あっしら魔物たちの最初の住処、封印の塔です。」

 ジミーの背後からトン吉が答える。


「僕も、2人までなら一緒に瞬間移動できるようになりました。

 まだまだミッテランさんには敵わないけど、少しずつ成長はしているようです。」

 ハルは少し照れたように、頭を掻きながら話した。


 そんなハルたちに案内されるがまま、ジミーはツタが絡まる塔の中へと入って行く。


「申し訳ありませんが、本人の自覚がないまま洗脳されている場合があります。

 うちのおじいさんやミッテランさんの例もありますから。

 少なくとも4時間は、ここでじっとしていてください。


 4時間経ってもテレビを見たい気持ちが起こらなければ、問題ないと思います。

 じゃあ、マシンガンはお預かりします。」


 ジミーはハルに言われるがまま、マシンガンを手渡し、塔の1階フロア中央に置かれた椅子に腰かける。

 ハルはジミーを置いて階段を上がって行ってしまった。

 先ほど入って来た入口にはトン吉が立っている。

 見張りと言ったところであろうか。


・・・・・・・・・・・・・・・

「ジミーさん、起きてください。ジミーさん。」

 椅子に座ったまま、いつの間にか眠ってしまったようだ。

 ジミーは、トン吉に揺り起こされて気が付いた。


「やあ、ここの所ずっと寝不足なもので・・・。」

 ジミーは口から出た唾液を袖で拭いながら、眠そうな目を瞬かせる。


「それは、家へ帰ってからずうっとテレビ放送を見ていたからではないのですか?」

 背後からハルの声がする。


「いやあ、マイキーの奴から急な頼みごとが来ていてね・・・。

 主要な爆弾の解体方法を手順書にして送ってくれと言うので、この2週間ほどはほとんど寝ていない。


 ハル君たちが学校へ来なくなったので、昼間の空いた時間にウトウトするくらいで、とてもテレビなんか見ている暇はなかったよ。」

 ジミーは尚も目を擦りながら、ゆっくりとハルの方へ振り向く。


「そうでしたか・・・・。

 じゃあマイキーさんからの頼みごとのおかげで、操られることはなかったわけですね、よかったあ。

 一緒に来てください。」


 ハルはそう言いながら、塔の壁面に作られた螺旋階段を上がって行く。

 塔の中は、どこもかしこもオレンジ色に光輝いている。

 4年前に封印したままの状態が、未だに続いているようだ。


 各階の部屋には明かりとりの窓が開けられてはいるようだが、その空間自体もオレンジ色になっていて、何物をも通さない状態となっている。

 唯一封印の対象から漏れている、この螺旋階段と1階への入り口だけが塔の内部と外部を繋いでいるようだ。


 ハルは最上階に作られた、大広間へと入って行く。

 そこには3人の人影があった。

 そのうちの1人は猿轡をさせられた上に、両手を椅子に縛り付けられて身動きできない状態のようだ。


「ミッテランさんです。

 強烈な暗示を掛けられているようで、洗脳が解けません。

 もう1週間もこの状態です。


 魔法を唱えられないように猿轡をして、椅子に縛り付けても初級魔法なら無詠唱で可能なために、簡単に解いてしまいます。

 仕方がないので、ホースゥさんが光の魔法で結界を作り、中に一緒に入ったミリンダと二人がかりでミッテランさんの魔法力を押さえつけています。」


 ハルの言うとおり、彼女たちの周りには床から円形に神々しい光が発せられている。

 ホースゥの光の魔法であろう。


「大変だねえ。

 マイキーの話では、洗脳の効果は4時間くらいしか効かないと言っていたけど、あれは多分1回だけ目が光るところを見せられた場合だろう。


 テレビで繰り返し同じ映像を見せられることにより、強い暗示にかかってしまうのかもしれない。

 それにしても、ミッテランさんほどの魔道士であれば、トン吉さんたちと同じく洗脳に対する耐性があってもいいと思うのだが・・・・。


 もしかすると、仙台市で直接市長に面会したものだから、その時により強い暗示にかけられたのかもしれない。

 そうしてから後は繰り返しテレビを見続けることによって、深ーく操られてしまったんだろうなあ。」

 ジミーは神妙な表情で、ミッテランの様子を窺っている。


 ところが、その時それまで何とか束縛を解こうと、もがいていたミッテランの動きが止まった。

 そうしてただじっと、ミリンダの顔を見つめている。

 それに応じてミリンダが猿轡を外す。


 二言三言言葉を交わすと、ミリンダは目に涙を浮かべながらホースゥの方を振りかえる。

 それを見た、ホースゥも小さく頷く。

 それから二人は、ミッテランを縛り付けていたロープを解いた。


 と、同時に光で囲まれた輪も消える。

 なんと、ミッテランの洗脳が解けたようなのだ。


「もう大丈夫よ、頭もすっきりとしているわ。

 あれから、1週間以上も経っていると聞いた時は驚いたわ。

 その間の事は、何にも覚えていないのだから。


 ただ、無性にテレビを見たいと感じていた記憶があるだけだわ。」

 ミッテランはようやく解放された体の動きを確かめるかのように、手足の関節を何度も曲げては伸ばした。


「たった一人の洗脳を解くのにこんなに苦労するんじゃ、村の人たち一人一人を連れてきて、正気に戻らせるというのは無理ね。

 とても手が回らないわ。」


 ミリンダがため息交じりに呟く。

 目にはクマが出来ていて、相当に疲労がたまっているようだ。


「うーん、これからどうしようか。」

 ハルが困ったような顔をして腕を組む。


「所長はどうだろう、あの人もおいらと同様で忙しすぎて、テレビなんか見てはいないと思うよ。

 昨日の定時連絡でも、なんか新市長に新たな指示を出されたとか言って大変だと嘆いていたくらいだから・・・。


 それに、先ほどもミッテランさんの様子を見ていたけど、彼女はもがいてはいたけど魔法を使おうとはしていなかっただろ?

 多分操られている人は、テレビを見ようと必死に抵抗するのだろうけど、その為に自分の能力を駆使しようとはしないんじゃないかな。


 つまり、テレビを見ることに頭の中が一杯になって、他の事が考えられなくなってしまうような感じがする。

 そうでなければ、いくらホースゥさんやミリンダちゃんの魔法の技術が成長していたからって、本気になったミッテランさんには敵わなかっただろう。


 つまり、操ることによって言う事を聞かせられるけど、その人の能力を発揮する事が出来なくなる・・・操られた人は命令通りに行動はするけど、自分で考えることができなくなってしまうので、想定外の事態に対処できなくなってしまうのではないかな。


 多分、操った人を動かすには一から十まで指示しないといけなくなるのだろう。

 だから必要以外の時は、ただ単に食事や睡眠以外はテレビを見続けると言った、簡単な動作しか指示を与えてはいないのだと考えられる。


 そう考えると、もし所長の頭脳が必要であれば、あえて操るようなことはしないだろうね。」

 ジミーは解説を終え、得意そうに胸を張った。


「ふーん、それは言えるわねえ。

 ミッテランおばさんは、どうしてもテレビを見るとは言い張っていたけど、魔法を使おうとは1度もしなかったわね。


 ゴローに血を吸われた時と同じく、操られると頭がボーっとするのかしらね。」

 ミリンダもその言葉に頷く。


「私は・・・操られていた時の記憶がないから、何とも言えないけど、本人の意識がないのなら、その人の特殊能力は使えないのかもしれないわね。」

 ミッテランも頷く。


「そう言えば、ゴローさんはどうしたんだい?

 一緒に行動していると思っていたのに。」


「ゴローは、蝙蝠に姿を変えて、村へ偵察に行っているわ。

 ジミー先生のことだって、ゴローがテレビを全然見ていないって言っていたから、だったらここへ連れてきてみようという話になったの。


 一人でも多く仲間を集めたかったから。」

 ミリンダがジミーの問いかけに答える。


「じゃあ、これから仙台市へ行って所長さんの様子を探って来ます。」

 ハルが塔の階段を下りて行こうとする。


「ああ、マイキーもおいらへの指示の内容を考えると、洗脳はされていないと思う。

 但し、マイキーは敵の情報を探るのが目的だから、会っても挨拶はしないようにね。

 それと、随分と危険な相手のようだから、くれぐれも用心して行動してくれ。」


「はい、分りました。」

 ハルは微笑みながら、階段を下へと駆け下りて行った。



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