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52話

                    12

「ば・・・爆弾を、どこへ隠しやがった?」

 神宮寺は驚いたように、周りをきょろきょろと見回しながら叫んだ。


「爆弾は、お前の腹の中へとしまった。

 誰にも取り出せない。


 今後のお前の行いが良ければ出してやるが、行いを正せなければ、一生爆弾はお前の腹の中だ。」

 竜神は、そんな神宮寺の様子を眺めながら、無表情に告げる。


「ふざけるんじゃねえ、誰がそんな戯言を信じるかい。」

 そう言いながら神宮寺はコントローラーのスイッチを押す。


 すると次の瞬間、神宮寺の腹から幾筋もの光の束が渦を巻くようにぐるぐると飛び出してきて、やがて全身を光が覆い尽くした。

 それは瞬間的で、後にはわずかばかりの灰しか残ってはいなかった。


「ふうむ、残念だのう。自爆してしまった。」

 竜神は他人事のように呟いた。


「し・・・死んじゃったの?」

 ハルが瞬きも出来ずに目を見開いて尋ねてきた。


「ああ、なんせ核爆弾を腹の中へと入れておいたのだからなあ。

 だが、核爆発とは言っても、お前たちには何の影響もないぞ。

 わしが特殊な方法で、核のエネルギーは最小限度で、目標物のみに効果がある様に改良してやったのだ。


 周りには何の影響もなく、その相手のみを灼熱の高温で焼き尽くす。

 どうだ、わしって頭がいいだろう?」

 竜神は、自信満々とばかりに、鼻息荒く何度も頷いて見せた。


「そ・・・それは・・・。なんか新型弾に似ている・・・。」

 ジミーが小さな声で呟く。


「うん?どうした?

 わしのしたことがあまりにもスマートすぎて、理解できんか?

 まあ、未熟な人間の事だから、仕方がないぞ。


 それでも、年を重ねるごとに知恵も増していくから、追い追い気づくこともあるだろう。

 中には、全く気付かずに一生を終えてしまうものも、いることはいるだろうがな。

 この場では、ただわしに感謝しておくことだな。」

 竜神は、未だに自慢げに振る舞っている。


「そういった効果の武器は、あたしたちも持っているのよ。

 でも、数千度とかの超高温だと、魂が燃え尽きてしまって天国や地獄へ行く前に消滅してしまうらしいわね。


 死んで天へ上ることで浄化されていくべき魂の輪廻が、それで終わってしまうってハルに指摘されて、評判が悪くてあたしたちの中では使用禁止になっているの。


 それを・・・、何よあんた、感謝しろですって?」

 ミリンダが怒りに拳を震わせながら、ようやく事の重大性を告げる。


「えっ?そ・・・そうなの?」

 竜神の言葉に、高僧以外のその場にいる全員が頷いた。


 竜神のこめかみ部分から、一筋の汗が流れ落ちる・・・。(あくまでも、こういう気分だろうという演出です。実際には汗をかくことはないでしょう。)


「も・・・申し訳ない・・・。

 わ・・・わしは神であるにもかかわらず、なんてことを・・・。


 だが・・・、これだけは言っておく。

 あいつの魂は汚れていて、簡単には浄化できないほどであった。

 相当な悪さを重ねて生きて来たのだろう。


 ただ・・・、一瞬だけ神々しい光が・・・、いや・・・なんでもない。

 言い訳はすまい・・・・。すまなかった・・・。」

 事の重大性に気付いたのか、竜神はすっかり元気をなくし、その巨体をきつく巻いて、少しでも小さくしようとしている。


「あたしたちに謝っても仕方がないのよ。

 浄化されなかった、リーダーの魂に謝ってよ。」


 ミリンダは尚も冷たく、竜神を責め立てる。

 すると、ますます竜神はその身を縮こまらせる。


「まあまあ、前回の爆弾騒ぎでは、その爆風を押さえるために、たくさんの浄化されるべき魂が犠牲になりました。

 それが、今回の爆弾では一つだけの魂の犠牲で済んだのですから、被害を最小限に抑えたともいえるでしょう。

 この場では、神宮寺さんのご冥福を祈るのみです。


 それに、その時に私も同じ間違いを起こしたのですがね、そこで、それを改良した・・・。

 ・・・・・・・・・・煉獄の炎弾・・・・」

 所長が竜神に近づいて行って、こっそりと改良弾の事を説明している様子だ。


「それはそうと、彼女がチベットから来た、徳の高いお坊さんね。

 よく決心して、こちら側へと来てくれたわ。


 彼女が竜と契りを交わしてくれたから、竜神が召喚出来たのよ。

 私たちは、契りと言っても結び方など全く知らなかったから。


 今回の問題が解決したのは、半分以上は彼女のおかげかも知れないわね。

 名前を聞かせてもらえるかしら。」

 ミッテランが、所長と竜神が話し込んでいる間に、マイキーへと話しかける。


「○×△□□◇、××○○」

 マイキーが高僧に話しかけている。

 ミッテランの言葉を通訳してくれているのだろう。


「彼女は、自分は修行僧であり、師匠に命じられて日本へ来たと言っているわ。

 名前はホースゥと言うそうよ。」


「そう、ホースゥさんね。

 師匠に命じられたという事だけど、どういった事なのか聞けるかしらね。」

 マイキーがホースゥに耳打ちする。


「△△××○○・・・・○△□・・・」

「彼女の師匠はこう言ったそうよ。


 東の空に暗雲が垂れ込めている。これは災いを呼ぶ雲だ。

 直ちに行って、その災いを絶つように・・・と。


 その地には邪悪なる鬼が潜んでいる。

 彼らを討つには、竜神の力を借りるしか方法はない。


 小さな竜を見つけたなら、その竜と契りを結んで天へと昇らせろ、そうするとその竜は竜神となる。」

 マイキーがホースゥに成り代わって、その言葉を告げた。


「だから、敵のドラゴンと契りを結びたがっていたのね。

 ところが、そのドラゴンは違うと気付いて、こっちの竜の化身と契りを結んだという訳ね。」

 ミリンダが、成程とばかりに相槌を打つ。


「そうね、あのドラゴンは確かに竜に似ているけど、彼女の持つ竜のイメージとは違っていた。

 しかし、他には竜のイメージに当てはまるものはいない。


 彼女は、ドラゴンと契りを結んでいいものか悩んでいたのだけど、その時にあいつの目が光って彼女は操られてしまったの。


 私は何度もあいつに自衛隊の人が操られるところを見ていたから、その効果が長くは続かないことを知っていたの。せいぜい4時間しか続かないわ。


 だから、今日ここでドラゴンと契りを結ばせると聞いて、彼女の意識が戻るまでは契りを結ばせるのを邪魔しようと考えたのよ。」


「それで、マイキーさんもドラゴンと契りを結びたいふりをして、ホースゥさんとの契りが結べないように順番争いをして、邪魔していた訳ですね。

 マイキーさん、頭いい。」


「あったりマイキーよ。」

 ハルの言葉に、マイキーはポーズをとってウインクをした。


「そこで、あなたたちが登場して、少し中途半端だけど、正面から見ただけではまさに竜のイメージがドンぴしゃの召喚獣が現れたから、彼女はこちらこそが師匠から命じられた契りを結ぶべき竜だと言い張って、こっちに来ようとしたの。


 ところが、そこでもう一度目を光らせて、彼女を操ろうとしたものだから、私があいつを殴って逃げて来たのよ。」


「ふーん、そうだったの。

 まあ、あいつの場合は只の干物がふくれただけで、召喚獣ではなかったけどね。」


「ホースゥさんは神宮寺に操られていたとして、マイキーはどうして平気だったんだい?」

 話を聞いていたジミーが不思議そうに尋ねる。


「私は神宮寺の命じることには、何でもハイハイと言って応じていたわ。

 おかげで、あんなことやそんなことまで色々とさせられて・・・・。

 だから、操る必要性を感じなかったんでしょうね。」

 マイキーは、少し恥ずかしそうに顔を赤くしてうつむき気味で答える。


「あんなこと?そんなこと?色々・・・?」

 ハルが、不思議そうな顔をしてマイキーの方を眺める。


「こ・・・子供は、気にしなくてもいいことだ。ハハハハハ・・・・。」

 ジミーが顔を赤くして、ハルの耳を両手で塞ごうとする。


「どういった事なの?マイキーさん、教えて。」

 ミリンダが直接マイキーに訪ねる。


「いやっ、だから・・・。」

 ジミーが慌てて、マイキーを押さえようとするが間に合わない。


「ただ毎日、神宮寺が話したことを要約して、担当者に渡して指示をしていただけだけどね。

 神宮寺は、私には絶大な信頼を置いていたわね。」

 マイキーがいたずらっぽい笑顔で答える。

 よく見ると、ジミーだけではなく、所長の顔も赤く少し慌てていた様子だ。


「それはそうと、チベットの方は召喚魔法と言い、かなり高度な魔法が使えるようですが、これは昔から伝えられた技術なのですか?」

 所長が、何気に話題を変えようと質問をしてきた。


 確かに、徳の高い高僧と思っていたのが修行僧であり、彼女が高度な魔法技術を取得しているのであれば、チベットでの魔法技術は相当に高度なものに違いはないだろう。

 遠い昔から伝わる秘法なのではないだろうか。


「○△□※▽×□・・・・■◆▽・・・」

「いいえ、チベットの山中で被災を免れた寺で修行をしているけど、魔法技術は過去からの伝承ではないそうよ。

 世界中を巻き込んだ戦争の後に、大きな人型の魔物たちが避難してきた人達目当てに襲い掛かってきたと言っているわ。


 そう言った魔物たちとの長年の戦いで、魔法を身に付けた技術の様ね。

 長年にわたる修業の下地があったので、高度な魔法技術を身に付けることが出来たのだろうとも言っているわね。」

 ホースゥの言葉をマイキーが通訳する。


「ふーむ、そうか・・・。

 やはり、魔法技術は戦後の物なのかあ。

 そうすると大規模な戦争被害により、極端に減少した世界人口と言うか、世界中の生物たちの生存数とも何か関連が・・・・。


 うん?いや、今はそういった事を検討している場ではないな。

 まずは、この場を解決しなければ・・・。」

 一瞬深い思考に入ろうとした所長は、すぐに思い直して事態の収拾の検討を始めた。


「そういえば、目が光るとか角がどうとか誰か言っていなかった?」

 ミッテランが突然思い出したように口を開いた。


「多分ゴローよ。こっちへ来てからなんかおかしかったもの。」

「でもゴローさん、燃えて灰になっちゃったね。」

 ハルが小さく呟く。


「まあゴローは、しばらくすれば復活するから、どうってことはないわよ。」

 ミリンダは平然と答えた。


「さっき鬼がどうとか言っていたけど、その鬼って頭から角を生やした、まさに日本の昔話の鬼と一緒なの?」

 ミッテランがゴローに成り変わって尋ねる。


「□□○△×・・・○○・・・◇△」

「そうよ、額から1本から2本の角を生やした鬼だそうよ。

 中には3本の角を生やした鬼が居て、そいつは強力な呪術が使えるそうよ。」


「ふーん、何か心当たりがあるのかも知れないから、ゴローさんが蘇ったら教えてあげましょう。」

 ミッテランは皆の顔を見渡すと、皆も大きく頷く。


「それにしても、遠いところからわざわざ、この国の為に。ありがたいことだわ。

 船が難破していたところを助けられたと言っていたけど、他にも苦労があったでしょう?」


「○○□△×・・・・・・・・・◇○□・・・・・・・・・○△」

「チベットから陸路を7日、船で3日かかったって言っているわ。

 船は嵐に見舞われたせいで、ものすごい勢いで流され、かえって予定より早く着いてありがたかったって言っているわね。」


「ふーん、随分とポジティブ思考の人みたいね。


 で、ここで生活していた人たちに、召喚魔法を教えてあげた訳よね。

 人に召喚魔法を教えるってことでも、若いのに相当な魔法の使い手、つまり大魔道士よね。

 修行僧とは言えないでしょ?謙遜?」


 ミリンダはホースゥの姿を、目を細めながら見つめた。

 まだ20歳前にしか見えないのに、高度な魔法を極めている彼女は、ミリンダにとってあこがれの存在なのであろう。


「△○×□・・・・・・・・・・・・△○※・・・・・△△」

「いえ、彼女は未だ修行の身と言っているわ。

 召喚魔法も、実は彼女も使えない。あれは護符のおかげと言っているわね。」


『護符?一体どういった事?』

 この言葉に、ハルたちみんなが反応した。


「△△□△○、△×□」

「後で説明すると言っているわ。」

 みんなの注目が集まる中で、ホースゥは笑顔で答えた。


「まあ、ともかく問題は片付いた。

 核爆弾も爆発してしまったしね。


 今、ロビンさんに頼んでふもとの米軍には連絡してもらったが、自衛隊の攻撃が止むまでは、停戦できそうもない。

 大至急、中腹の基地へ戻って、自衛隊に降伏する様無線連絡させよう。」


 所長がいつまでも山頂で長話をしている間でもないとばかりに、皆を急き立てる。

 丁度、ハルがゴローの遺灰を集めて、大きなふろしきに包み終わったタイミングだ。


「じゃあ、戻りましょうか。」

 既に、ミリンダの魔法効果は薄れて、雪化粧はほとんど無くなっている。


「おや?こ・・・これは・・・。」

 それは、金色に光るガラスのように透き通った玉であった。

 先ほど、神宮寺が灼熱の高温でわずかばかりの、灰になったが、その灰が吹き飛んだあとに残ったのだ。


「そうか・・・、だから奴は2つの魔法を同時に・・・。

 どうやら、あの男は既に死んだも同然の状態だったようだな。


 生きている時そのままに意識はあったので、周りどころか本人も気づいてはいなかったのだろうが、屍人同様に操られていたのだろう。


 そうなると、既に奴の魂は昇天していて、残っていたのは魂の残像。

 しかも、邪悪な面のみ残されたという訳か・・・。

 せめてもの慰みだな。」

 竜神は、その玉を持ち上げながらひとり言のように呟いた。


「何よ、その欠けた玉は・・・。

 それに、死んで操られていたってどういうこと?」

 ミリンダも、不思議そうにその玉を見つめる。


 確かに、その玉は傷だらけで、しかも大きく欠けて1/4程が失われているようだ。


「いや、なんでもない。

 これは、ここにあってはいけないものだから、わしが預かっておく。」

 そう言い残して、竜神は天へと昇って行ってしまった。


「なによ、あいつは・・・。ポチのくせに・・・。」

 ミリンダは、そんな竜神の後姿を、苦々しく思いながら見つめていた。


「じゃあ、下山しましょう。」

 ミッテランはミケの召喚を解くと、中腹の基地まで瞬間移動した。



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