4話
4
ミリンダは朽ち果てた村の入口の門をくぐり、村の奥へと進んで行った。
やがて崩れかけた建物の影から、広い花畑が見えてきた。
バラなどの大きな花は咲いてはいないが、それでも赤や黄色の鮮やかな色の花が咲き誇っている。
花畑のところどころには白い石の柱のようなものがいくつも建てられていて、まるで墓標のようであった。
そして、花畑の真ん中にある大きな白い墓標の前に、両手を合わせて祈っている一人の影が見えた。
「ミッテランおばさん、ミッテランおばさんでしょ。
やっぱり、ここへ来れば会えると思ったのよ。」
ミリンダは人影に向かって駆け出して行って背中から抱きついた。
「鈴?鈴なの?
弟たち夫婦と一緒に魔物たちを塔に封じ込めるために犠牲になったと聞いていたけど、生きていたんだね。
よかった。
弟たちはどうなの?」
ミリンダに抱き付かれた女性は、懐かしそうにミリンダの顔を何度も見返しながら微笑み返した。
長い間喪に服しているのか、全身黒の洋服を身に着けていて、顔には黒いベールをかけている中年の女性であった。
「パパもママも魔物を塔に封印するために全霊を賭けて魔法を唱えたの。
でも私だけは逃がそうとして階段への入口は封印が遅れて、二人とも力が尽きてしまったわ。
私は迷わず鋼鉄化して階段を塞いだの。
それで、魔物たちは外へ出ることはとりあえずあきらめて冬眠したわ。
ところが3年経った今日、ハルが一人で塔へやってきて私の鋼鉄化を解いてしまったのよ。
とりあえず、代わりのもので塞いできたけど、何日もばれないとは思えないの。
早く塔へ引き返して魔物たちを再度封印しなければ、冬眠から目覚めて出てきてしまうわ。
私では封印の魔法は高度すぎて使えないし、だからミッテランおばさんお願い、一緒に行ってあの塔を封印して。」
ミリンダは、ミッテランにいきさつを簡単に説明した。
「そうだったの、弟夫婦は魔物たちとの戦いで本当に犠牲になってしまったのね。
でも、その代わりに魔物たちを塔に封印することが出来て、平和な日々を送れるようになったという訳ね。
3年間もよく頑張ったわ。
魔物たちとの戦いで、村を襲われた時に私は左腕を失ってしまい、病院で治療していたから最後の戦いには参加できなかったの。
それが残念でならなかったけど、ようやくお役にたてる時が来たようね。
塔の階段への入口位なら左手を失った私でも封印することは出来そうよ。」
ミッテランは黒いストールを外して、自分の体の左側を見せた。
左腕は肩口から金具のようなもので止められていて、それが皮のベルトで体に巻きつけられていた。
どうやら義手のようだ。
手の部分は指先が形作られていたが、白い布の手袋で覆われていた。
ミリンダはじっとミッテランの戦いの爪痕を見つめていた。
「ミッテランおばさん、かわいそう・・・。」
ミリンダの頬を涙が伝わって落ちた。
「大丈夫よ、これは木で出来た義手だけど軽いのよ。
素早い動きは無理だけど、簡単な動きなら魔法の力で動かせるから、家事などの不自由はないのよ、
魔物たちもいるしね。
それよりも、さっきから言ってるけどミッテランってなに?
私の名前は蘭だけど、しばらく鋼鉄化で固まっていたせいで私の名前を忘れちゃったの?」
ミッテランは魔法の力で義手を器用に動かして見せながら、怪訝そうな顔でミリンダを見た。
「いやあね、蘭おばさんは三田蘭だからミッテランでしょ?
加えて私は三田鈴だからミリンダよ。
3年間固まっている間に必死で考えていたんだから。
いいでしょ?お願い。」
ミリンダは、両手を合わせてミッテランを拝んだ。
「ああ、そういう事?
つまりは愛称ね。
いいわよ、私はミッテランで、鈴はミリンダね。
楽しそうだわ。
じゃあ、ハル君も愛称を考えないといけないわね。
何がいい?」
ミッテランは笑いながらハルの方を向いた。
「ずーっと小さかったから、チビなんかどう?」
ミリンダがいたずらっぽい顔をしながら、ミッテランの影から顔を出した。
「小さかったのは3年以上前で、村の子供たちの中では一番大きいです。(周りに同じ年の子供がいないから、よくは判らないけど・・・)
僕はハルのままでいいです。」
ハルは少しほほを膨らませながら答えた。
「了解、ハル君ね。
じゃあ、これから塔の階段の入口を封印しに向かいましょう。」
ミッテランが右こぶしを突き上げて、威勢よく掛け声をかけた。
「それなんですが、階段を封印するのは少し待ってもらいたいんです。
僕があの塔へと行ったのは、鍵のかかった洞窟の鍵を探しに行ったんです。
1階部分はくまなく探しましたがありませんでした。
それなので階段を使って上の階を探す必要があります。」
ハルはミッテランとミリンダに、鍵を探しに塔へと向かったいきさつを説明した。
「あの鍵は魔物のボスに渡してしまったから、多分今でもボスが持っていると思うわ。
うまいこと眠っている隙に取り戻すことが出来るといいけど、もし起こしたら大変なことになるわ。
やっぱり封印して閉じ込めておくってわけにはいかない?」
ミリンダは、鍵を探すことには否定的であった。
それはそうであろう、自分の両親を含め多数の若者たちの命と引き換えに、ようやく封印されたのだ。
しかも自分も封印の当事者であったのだからなおさらだ。
「うーん、でも拾ったラジオからの情報だと、また戦争になるのかもしれないんでしょ?
そうなれば魔物の被害どころではなくなるわ。
何としても戦争は止めなければ。
あの時は村の子供たちをかばったために不覚を取ってけがをしてしまい、最後の決戦に参加できなかったけど、今はその傷もだいぶ癒えたわ。
魔物のボスを押さえこんで洞窟の鍵を取り返しましょう。
それに魔物たちの処遇に関しても、私に考えがあるわ。
そうと決まれば、あなたたちにも協力してもらうことになるけど、大丈夫?」
ミッテランは、急に立ち上がってハルたちを見回した。
「私は大丈夫よ、ミッテランおばさん直伝の天候系魔法があるもの。
雷系の雷撃や暴風雷撃、雨系の雨粒弾や台風系の暴風雨波などが使えるわ。
後は治療系の魔法も得意よ。」
ミリンダは、目の前で雷雲や雨雲や竜巻を作って見せた。
「もっと強い魔法もあるけど、ここではこの程度にしておくわ。」
ミリンダは胸を張って自慢げに振る舞った。
「そうね、鋼鉄化で体の成長は止まっているけど、少しは意識があったから精神の成長はしているようだわ。
3年前よりも魔法の威力を増しているようね。
ミリンダは一人でも魔物相手に戦うことは出来そうだわ。
では、ハル君魔法を見せて。」
ミッテランは、視線をミリンダからハルへとゆっくりと移した。
「炎系の魔法が得意だけど、氷系の魔法も出来ます。
・・・・燃えろ!!!・・・・・凍れ!!!・・」
ハルの魔法で道端に落ちていた枯れ木が勢いよく燃え上がり、そしてそのままの炎の形で凍りついた。
「もっと大きな炎も出せます。
炎の竜巻、燃え尽きろ!!!」
ハルの体を中心に渦を巻いた大きな火炎が広がったが、急速に収縮してミッテランの目の前で止まった。
火炎の威力は相当だが、影響範囲は狭そうだ。
「どうしたの?そんな狭い範囲にしか火炎は届かない?」
ミッテランは不思議そうな顔をしてハルの顔を眺めた。
これならば最初の『燃えろ!』の魔法の方が、少し離れたものも燃やすことが出来るのでましな方だ。
「いえ、そこにミッテランさんがいたから。
火傷させてはいけないと思って、止めました。」
ハルはミッテランの指摘の意味が分からず、とりあえず理由を答えた。
「うーん、そうかあ。
ハル君は集団的魔法の勉強はしている?」
「えっ? なんですか、それ?」
ハルは今までに聞いたことが無い、魔法に関する言葉に不思議そうな顔をして尋ねた。
「上級者のテクニックになるけど・・・。
じゃあミリンダ、ここで暴風雷撃の魔法を唱えて見て。
そうね、今いる広場全体を覆うぐらいの魔法をお願い。」
ミッテランの要求に、不思議そうな顔つきをしたミリンダだったが、とりあえず魔法を唱えることにした。
「いいの? じゃあモンブランタルトミルフィーユ・・・暴風雷撃!!!」
一瞬辺りが暗くなり、強い横風の影響で周りの木立が大きく揺れたかと思うと、まばゆいばかりの閃光が発せられ、周囲の巨木が雷の直撃を喰らって倒れた。
しかし、すぐ近くで見ていたハルには、横風の影響も雷も当たることはなかった。
それは、一緒に居たミッテランや魔物に対しても同様であった。
「わかった?
彼女の魔法は、周りに居る味方には影響がなくて、敵・・・ここでは周りの木立に対してだけど・・・だけに魔法効果がある様にコントロールしているの。
これが集団的魔法攻撃と言って、チームを組んで魔法攻撃をするときには必須の技術なのよ。
いくら強力な魔法でも、味方を巻き込んではいけないし、逆に味方を気づかって威力が減衰してしまうのでは意味がないわ。
ハル君は今まで誰に魔法を教わることもなく、独学でしかも一人で取得したのだから無理はないけど、この技術だけは覚えて欲しいの。いい?」
「は・・・はい。でも、そんな難しそうな事どうすればできますか?」
「周りに意識を集中するの。すると、私やミリンダのオーラを感じることが出来るはずよ。
そのオーラを避けて魔法効果が発揮されるようにコントロールするの。
一緒に行動を続けると、オーラを常に感じていて、無理に意識しなくても自然にコントロールできるようになるわ。」
「判りました。では炎系は危ないので、氷系の魔法で試してみます。」
ハル意識を集中する為に、目を閉じた。
すると、周りからかすかな意識の塊が伝わってくるように感じられた。
懐かしい感じがするものと、暖かく包み込むようなやさしい意識だ。
それらは、ミリンダ、ミッテランのものであることがハルにも認識できた。
「氷の竜巻、凍りつけ!!!」
ミッテランに言われた通り、それらを避けるような気持ちで魔法を唱えると、ハルの体を中心に猛吹雪が発生して四方に広がって行く。
そうして先ほど倒れた巨木などが瞬間的に凍りついた。
「やった!」
ハルは周りを見て、ミッテランの体には影響がないことを確認して、ガッツポーズをした。
「きゃあ、何よ、これ。」
ところがミリンダのレースのスカートの一部が凍りついていたのだ。
大きく広がった裾部分であり、カバーしきれなかったものと推測される。
「ご・・・、ごめんなさい。」
ハルは申し訳なさそうに、真っ赤な顔をしてうなだれた。
「まあ、仕方がないわね。初めてにしては上出来よ。
魔物たちは、こういった事を考えないものが多いから、強力な魔法を唱えても、仲間たちをも巻き込んでしまうような奴がほとんどよ。
いうなれば、同じ魔法を使うにしても人間と魔物との大きな違いといってもいい面よ。
まあ、いくら気づかってコントロールしても、雷系の魔法では電気は流れやすいものに伝わる性質があるから、体が濡れていたりするとコントロールが効かない場合もあるので、気を付けるのよ。
今日はもう遅いから、塔へ行くのは止めましょう。
ハル君は今夜一晩使って、コントロールできるように練習しておいてね。
明日の朝にチェックするわね。」
ミッテランはハルたちを促して、村の奥へと進んで行った。
そこは崩れかけたレンガの壁に囲まれた空間にテントで覆っただけの、雨風をようやくしのげるといった造りの場所であった。
傷だらけのテーブルにクッションがはみ出した椅子が並べられていて、奥の方には小さなベッドも置いてある。
どうやらミッテランの家のようである。
「ここは、私の魔法学校があった建物の名残り。
最後の戦いのときに、私は村の病院に入院していて後から結果を聞いたわ。
その時にはすでにこのコロニーは跡形もなく破壊されていたけど、退院してすぐに戻ってきたの。
私のかわいい教え子たちのことを思うと、村での安閑とした生活なんかとてもできなくて、ここでずっと自給自足の生活をしていたの。
久しぶりのお客さんだから、今日はごちそうにしなくっちゃね。」
ミッテランは、嬉しそうに台所の方へと向かって食事の支度を始めた。
2匹の魔物がそれを手伝っている。
「その魔物は何ですか?」
ハルはミッテランを手伝っている魔物を指さして問いかけた。
リス系の魔物は怯えきった目で、素早くミッテランの影に隠れてしまった。
「ああ、この魔物?
この地で暮らす上で、たった一人だと自給自足もままならないから、近くにいた魔物たちを手懐けて、畑仕事などを手伝わせているのよ。
魔封じの紐を首に巻きつけてあって、強い魔法で抵抗しようとすると首が閉まるようにしてあるの。
でも、最近ではそんなものがなくても、労働に見合った見返りとして肉や野菜を分け与えれば、共同生活は可能かとも考えているのよ。」
彼女はこともなげに答えた。
「へえ・・・。魔物達とも仲良くするのはいいことだとは考えますが、相手は僕の両親や多くの村人の命を奪った魔物ですよ。憎くはないのですか?」
ハルは不思議そうにミッテランに尋ねた。
ハルはそれほど魔物たちに深い恨みは持ってはいない。
それは、魔物たちとの戦いがハルの小さい時の話であり、ハル自身が実際に凶悪な魔物の被害を目の当たりにしたわけではないからである。
しかし、ミッテランは実際にこの地を守る戦いをしたはずだ。
犠牲者たちを近くで見ていただろうに、平気なのだろうか。
「この魔物は強力魔法は使えないし、力もそれほど強くはないのよ。
村人たちを襲ったような強い魔物ではないわ。
3年前戦いでは、身内も含めたくさんの仲間たちが魔物たちの犠牲になったのわ。
でも、私は魔物たちに今でも恨みがあるかと言うと、そうではないわ。
お互いがこの地で生きていくために、争った結果だものね。
当時は考えもしなかったけど、魔物たちとの共存という事を、最近は考えるようになって来たのよ。
まあ、このように力の弱い魔物だけに限られるかもしれないけどね。
それにこの考え方は、もともと私の考えではなくてハル父さんに教えてもらったのよ。
私も、もっと早くこんな考え方をしていれば、村人たちの犠牲ももっと少なかったのにと、未だに後悔しているの。」
ミッテランは、少しうつむき気味で微笑みを返した。
―――――
「お父さんは、これから魔物たちとの最後の戦いに行くんだね。」
ハル父さんの前には幼いハルの姿があった。
ハル父さんはしゃがみこんでハルと目線を合わせてやさしく答える。
「いや、戦いに行くのではない、話し合いに行くんだ。
魔物だって人間と同じ言葉を放すし、知能だって低い訳ではない。
このまま争いを続けて行って、お互いに数を減らしていくのは得策でない事にはとっくに気づいているはずだ。
父さんは、これから皆に提案して、魔物たちとの共存生活を訴えていくつもりだ。
だから、心配しないで待っていて欲しい。
父さん、留守中ハルの事よろしくお願いします。」
ハル父さんはハルの後ろに立っている、ハルじいさんに向かって軽く会釈をすると、そのまま瞬間移動の魔法で消えた。
ハルはにっこりと笑顔で、父の姿を見送っていた。
「蘭先生、容体はどうだい?」
ハル父さんは、診療所へと瞬間移動したようだ。
ベッドには中年の女性が青白い顔をして横たわっている。
「良くはないわよ、あの魔物の奴。
次に出会ったら八つ裂きにしてやるわ。
足をけがして動けない子供を狙うなんて、本当に魔物ってやつは卑劣だわ。」
蘭はベッドから上半身を起き上がらせ、失った左手のあるべき場所を探る様に右手を這わせた。
「まあ、まあ。
魔法が使えない大人たちが、体が小さいのをいいことに子供の格好をして魔物を油断させ、不意を突いて銀の剣で倒すなんて奇襲を何度も行う人間側にも悪い面があるさ。
そうなれば、魔物だって子供でも容赦せずに標的にするしかなくなっていく。
いい加減、こんな不毛な争いは止めて、お互いに共存の道を探った方がよっぽどいいよ。」
ハル父さんはベッドの脇の丸椅子に腰かけながら、蘭の左腕の付け根に回復魔法を唱えて、痛みを和らげてあげた。
ハル父さんも蘭の魔法学校で魔法の勉強をしたのだが、どちらかと言うと共同研究のように、お互いに魔法の研究をしながら上達していった間柄だ。
それでも、魔法学校設立の言い出しっぺは蘭だったので、ハル父さんは未だに蘭の事を先生と呼ぶのだ。
「そういえば、あなた、怪我をした魔物たちにも回復魔法を使って治療して、逃がしてあげたそうじゃない。そんなことをしたら、ますます魔物たちは図に乗るわよ。
折角、我々人間たちに有利になりかけた戦局にも影響するわ。
止めてちょうだい。」
蘭は、回復魔法を受けた左腕の袖を直しながら、厳しい口調でハル父さんをたしなめた。
「その考え方には賛同しかねるね。
魔物達だって生き物なんだ。
その魔物が傷ついて助けを必要としているんだったら、俺は放っては置けない、治療するさ。
それに、生きているんだから食べ物が必要だし、生活圏も必要だ。
その為の争いを我々人間たちと繰り広げているだけで、お互いに相手が憎くて戦っている訳じゃない。
だから、うまい事その生活圏を区分することで折り合いをつけて行けば、共同生活も出来るんじゃないかね。
治療して逃がしてやった魔物たちは皆、人間たちとの共同生活に賛成してくれたよ。
食べ物を報酬にくれれば、畑仕事や肉体労働も問題ないってやつばかりさ。
後は、我々人間側が考え方を変えればいいだけさ。」
ハル父さんは、明るい笑顔で答えた。
「うーん。私には理解しかねるわね。
それでも、本当にそんなことが出来るのなら、確かにこれ以上争いを続けるよりも、いいことだとは思うわ。
でも、他の人たちはどうかしら。
中には大切な家族を魔物たちに殺された人も大勢いるし、簡単に納得するとは思えないわ。
そんな人たちをどうやって説得するというの?
私が付いていければ少しは手助けも出来るけど、こんな体じゃ無理よ。ハル父さん一人で大丈夫?」
蘭は心配そうな眼差しで、ハル父さんを見つめた。
「うーん、確かに自信があるわけじゃないけど、妻だって納得してくれたし、真剣に話せばみんな分ってくれるさ。何とかなるよ。
蘭先生は、そんな心配はしないで、1日でも早く回復するよう療養してくれ。」
ハル父さんは、そう言い残してから診療所の建物から表へ出て、瞬間移動で村人たちとの集合場所へ移動した。
ハル父さんは村人たちを必死に説得しようとしたのだろうけど理解を得られず、結局は魔物たちを追い詰めた塔にて最終決戦となってしまう。
そこで、魔物たちの総攻撃に遭い多くの村人たちは犠牲になり、ハル父さんたちは捕えられてしまうのであった。
ハルもミッテランも、この時は同じ事柄を思い起こしている様だ。
―――――
「氷の竜巻、凍りつけ!!!」
ハルは外の庭で、味方に見立てた狸系の魔物を練習台に、魔法の練習をしていた。
しかし、最初の魔法では魔物が凍りついてしまい、慌てて炎の魔法で解凍する始末であった。
それでも、何度も繰り返して練習を続けた。
そうして、まだ魔物の体の一部分が凍りつくが、大まかにはコントロールできるようになって来た。
「へえ、いいじゃない。上達したわよ。
これ以上は魔物の体が持たないから、後はハル君が頭の中でイメージトレーニングしてね。
明日の朝確認しましょう。
では、晩御飯が出来たから、食べましょうね。」
ミッテランは、テーブル一杯に魚や肉などのごちそうを並べた。
ハルとミリンダはごちそうにかぶりついた。
特にミリンダは鋼鉄化で眠っていたとはいえ、3年ぶりの食事に夢中であった。
この日はそのままベッドとソファアで眠ることとなった。