オルタナ後の世界
男はゆっくりと語り始めた。
「しばらくお待ちください」
その言葉に目をやってから、男はゆっくり起き上がり、
座ったまま再び辺りを見回した。
先ほどからただしずかに佇む一つのモニターがあった。
そこには一人の少年が映し出されていた。
「なあ、J。知ってたか」
モニターの少年は答えた。
「何がですか? 」
「これだよ。こんな世界があるってこと」
Jと呼ばれた少年は少し考えてから、音声を発した。
「昔から、テレビなどが緊急停止したときに、一時凌ぎのこういった画面が表示されるという事は聞いた事があります。ですが、実際に体験するのは今回が初めてです。」
その言葉を聞いているのかどうかも分からない表情で、男は遠くを見つめていた。
天国、ね。面白い。
男は先ほど聞いた女の表現に、少し笑みをこぼした。
「さて、ケンイチ。そろそろ話してもらいましょうか」
ケンイチと呼ばれた男は遠くの沈み行くのか上り来るのかも分からない太陽をみつめたまま、その言葉を聞いていた。
「何をだ? 」
「とぼけないでください。あの絶体絶命の状況、クラッシュの主のリミット削減のトリックをどうやって見破って、カオスを実行し、この『オルタナ破壊』をやってのけたのか、をです」
ケンイチはただただじっと視線を遠くに釘づけたまま、少しだけほんの数分前の事実を思い出そうとしてみていた。




