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天国

クラッシュのリミットが終わりを告げた。

 風が、その心地よい風が草原の草を優しく撫でていた。

 その先には遥か遠くから、おそらく昼下がりの太陽が暖かく見守っている。


 小鳥のさえずりだろうか、時折何かの鳴き声も耳に入ってくる。


 誰にも邪魔されず、何も考えず、自由な時間を過ごす。

 こんな時間を過ごすのはいつぶりだろうか。


 じっと見ていれば、どこかから子鹿でもひょっと顔を出してきそうだ。


 ひらひらと蝶が舞っている。

 この蝶は一体どこへ向かうのだろう?

 いずれ、一つの黄色い花にたどり着くと、その蜜を吸い始めた。


 気がつくとその様子をじっとみつめる一人の女がいた。

 しばらく眺めていると、蝶は恥ずかしそうに、また新たな花を探しに、

 飛んでいった。


 その飛んでいく様子を最後までじっと、女は眺めていた。

 そのうさぎ耳の耳当てをした女は、微笑みをあふれさせながら、

 いなくなった蝶の姿をじっとみつめていた。

 ふとその奥にある日差しのまぶしさに気づき、少し眉をひそめた。


 それからその目の前に広がるお花畑の中をまるでダンスでもしているかのように、

 走り回っていた。


「あー、いい気持ち。」


 一通り走り回ると女は、とある場所に寝転んだ。


「気持ちいいね」


 横には一人の男が横たわっていた。


「私、天国がここまで気持ち良いところだとは思わなかった」


 相変わらず、時折優しい風が二人の頬を撫でる。

 夏なのか冬なのかも分からないその空間で流れる時は、

 まるで永遠のようにも感じた。


「あっ、ちょうちょ」


 そいう言うと、女は再び、お花畑へ走り出していった。


 男はただじっと黙って、空を見上げながら、

 何か考えていた。

 いや、何も考えていないのかもしれない。そのどちらともとれない頭のまま、

 何度もみつめたその「空」とされる場所に浮かび上がる文字に目をやった。


 その文字は16カ国の言葉で書かれていた。


「しばらくお待ちください」


 そして再び目を閉じると一つ大きく深呼吸をするのだった。

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