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3つ目の方法

3つめの方法は途方も無い物だった。

「それでは3つ目の方法を説明します。」


 残された3人の間に一瞬の静寂が走った。


「最後の手段、このオルタナをぶっ壊します」

「ぶっ壊す? どういうこと? J君」

「全て壊してしまえば、このオルタナクラッシュともおさらばです。何も無かったことに出来るんです。」

 この死神も、この灰色の空間も、全て消え去ります、そう付け加えた。


 そのあまりにもあっけない答えにユキとケンイチは拍子抜けした。


「やりたいことは分かった。だがな、そもそもそんなことしたら、趣味で遊んでいる連中はまだしも、世界中のオルタナに依存した、例えば医療現場などはどうするんだ? 遠隔手術や、生命維持装置をオルタナに頼っている人は世界中に沢山いるんだぜ? 」

「それも承知の上です」

 でも大丈夫、そう付け加えると、

「通常オルタナデータは最長5秒に一度バックアップされます。また、オルタナに依存した医療現場などは通常非常時に備え補助プログラムを兼ね備えていますから、少なくとも数時間は乗り切れます。その間にオルタナは復旧するでしょう。」


 確かに、そんな事を言っている場合ではない、そのことはケンイチも承知していた。


「で、そもそもそんなことが可能なのか? そんなことが簡単に出来てしまったら、世界5億人のオルタナユーザーが簡単にひっくり返るぜ? 」


「はい、当然ですが僕もまだ一度もこのプログラムは発動させたことはありません。ですが、この方法しかありません。」


 ケンイチはJを見つめた。


「出来るんだな」

「はい、とあるプログラムを使えば。そのプログラムの名は『カオス』」


 ケンイチの背筋が氷りついた。


「おいJ、今何て言った? 」


 Jはまっすぐケンイチを見つめた。


「プロラムの名は『カオス』です」


 一瞬の静寂が走った。


「ケンイチ、知ってるの? その『かおす』って」


 ケンイチは神妙な面持ちを崩さなかった。


「あぁ、知ってるも何も。オルタナやり込んでいるやつらに知らないやつはいない。

 伝説のプログラムだ。まさかお前、本当に『カオス』完成させたって言うのか?」


 ユキの頭がこんがらがってきた。


「もう、二人だけで話進めないでよ! 何? その伝説のプログラムって」


 ケンイチはJを見つめたまま、ゆっくりと口を開き始めた。


「あぁ。『カオス』の話をするにはまずとあるハッカーの話から始めないといけない。

 その昔オルタナを荒らしまくってた一人のハッカーがいた、

 そいつのハンドルネームは69(ロック)。こいつの頭はとんでもなくきれるやつだ。

 そいつがある時、一大発表をしたんだ」


「発表? 」


「そう、このオルタナを一気にぶっ壊すプログラムを開発したってな。

 使われたくなけりゃ●●$払えって。」


 ユキの目が飛び出しそうになった。


「そんな、国家予算にあたる位の額じゃない!」


「そうだ、だが、もしそのプログラムが本物だったら、

 被害総額はこんなんじゃ収まらない。マクロメディア社は後一歩でその額を支払う準備をしていたんだ、

 だが……」


「それで? 」


「それを境に69は消えた。」


「消えた? 」


 ケンイチは一つうなずくと


「まったく表舞台に姿を現さなくなったんだ。派手好きだったやつのパフォーマンスは一切オルタナ上から無くなったんだ。」


 Jも一つ大きくうなずいた。


「真実はよくわからないん、実在の人物を特定されて消されたという説もあれば、

 実は既に金を受け取って、このオルタナの世界から足を洗ったとも言われている。

 だが、それから年月が経つとある一つの疑問がわき上がった。」


 ユキはじっとケンイチを見つめた。


「そもそも、本当にそんなオルタナを一瞬でぶち壊すようなプログラムがこの世に存在するのか?

 だ。」

「それで? それで見つかったの?」

「そのプログラムは『カオス』と名付けられ、その後たくさのハッカーが名を売るために、

 このカオスを開発した、と名乗り出た。だが結局どれも偽物だった。オルタナを一瞬で

 ぶちこわせるプログラムなど作り上げられるものもいなかったし、結局存在すらしなかった。

 いずれこの『カオス』というプログラム自体本当は存在しなかったのではないかと囁かれるようになった。

 そして今、このプログラムはある意味都市伝説のように実在したかもわからない伝説のプログラムとして

 オルタナユーザーの中に知れ渡っている。」


 クラッシュの灰色の牢獄の空間に、一瞬の静寂が走った。

 その静寂のせいで、忘れかけていたどこかの店のBGMが虚しく響き渡る。


「そんなプログラムをJ君が開発出来たってこと? 」


 Jは大きくうなずいた。

「まだセミファイナルテストをクリアしただけで、ファイナルテストはこれからだったんです。ただ、セミファイナルテストをクリアしたのは、僕だけです。」


「ちょっと待って。」


 ユキは鋭い眼差しをJに向けた。


「何でこのJ君がそんな乱暴なプログラムを持ってるわけ? J君は本当は悪者なんじゃないの? まさか…」


 一呼吸おいてから、ユキは、


「まさか、J君がクラッシュの主だったりして! じゃないとこんなこと出来ないよ、きっと! 」


 Jとケンイチは目を合わせたあと一つ大きくため息をついた。


「ユキ。僕はホワイトハッカーなんです。違法なプログラムを先に開発し、それに対する防御策を先手を打って作っておく事によって、本当の悪のハッカーからオルタナを守る。そのために開発をしていました。

 今回のクラッシュの対策委員に選ばれたのも、この『カオス』のプログラムのセミファイナルをクリアしたからなんです。」


 なーんだ、そういうことか、そういうとユキは肩をなで下ろした。


「このプログラムは間違ってもどこかのハッカーなどに見つかってはいけませんから、オルタナ上の分散させて存在させています。あくまで開発用としていたのですが、まさか本当に使う日が来るとは思っても見ませんでした。ただ、今日を除いていつ使う事があるでしょうか」

「分かった。早速始めてくれ」

「はい、ただ、時間がかかります。データを収集し、組み立て、起動させるまで……えー、5時間と2分必要です」


 咄嗟にケンイチは時計を見た。


「何て言った? もう一度言ってくれ」

「所要時間は5時間と2分です。」


 もう一度時計を見ていた。

 リミットまでは5時間と3分しかなかった。


「待てJ、余分な時間は1分しかないぞ?」


 Jは首を振った。


「違いますケンイチ。1分もあるんです。この方法に賭けるしかありません。さあ始めますよ。」


 そういってJはオルタナ上の分散させたオルタナ崩壊プログラム「カオス」のデータを集め始めた。

 リミットは5時間を切ろうとしていた。


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