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助かる方法は3つある

絶望的なクラッシュの状態から、突如現れた「J」の存在。

果たして彼の目的は?

「お久しぶりです、ケンイチ」


 そんなJにケンイチも一つ笑顔を返す。


「相変わらずだな、J。まさかこんな形で再会するとは思わなかったな。」


 Jも一つ苦笑いをこぼす。


「そうですね、ただケンイチ、今はゆっくりと感傷に浸っている時間はありません。

 早速、脱出方法の説明に入ります。」

「ちょっと待って」


 ユキが状況を理解出来ないまま、問いかけた。


「どういうこと? ケンイチ。このJ君って一体何者? どうしてこんな少年が脱出方法を知ってるわけ?」


 Jとケンイチは目を合わせた。

 その後Jは一つ肩をすくめると、


「そうですね、ユキ。まずは僕の立場を説明しないといけません。」

 そのくらいの時間はあるでしょう、そう付け加えるとJはここ、「クラッシュ」へ侵入するまでの経緯を語り始めた。


 僕はクラッシュ解明チームの一員に選ばれたんです。もちろん極秘ですが。

 度重なるオルタナクラッシュの原因解明には表向きの科学者だけでは手が足りず、

 時に優秀であればハッカーでさえ重要な任務に採用される事があります。

 僕は偶然、このクラッシュの現象を探っているところを声をかけられて、

 解明チームに採用されました。

 そして、今日もクラッシュの糸口は無いかとオルタナ上を巡回していたんです。

 すると、奇妙なプログラムに出会いました。

 それが、あなたたちです。

 普通の人には分かりませんが、専門家にはすぐ分かる。

 あなたたちのオルタナの行動は、この行動プログラムを数値化し、

 乱数表に当てはめ、表現された、つまり人工的な行動パターンだったんです。

 そこで、あなたたたちのプログラムをよく調べたら、どうやらどうしてもつじつまが合わないことに気づいたんです。

 そこで、試しにケンイチに「オフラインメール」を送ってみたんです。


「オフラインメール?」

「オフラインメールってのはな、通常見られたくない極秘な内容を個人同士でやりとり出来る、

 最も安全なメールのやり方だ」


 その説明を聞いてから、Jは続けた。


 内容も悩みました。

 もし核心をついた内容がこのクラッシュの主に見つかったら、

 削除されてしまうかもしれない。

 そうすればあなたたちの命が危なくなる。

 侵入方法も、あからさまには出来ませんので、苦肉の策がこのやり方だったんです。


「そうして見事この「クラッシュ」への侵入に成功したわけだ」


 Jはうなずいた。


「相変わらず、頭のキレるやつだよ、お前は。それにしてももし俺がそのメッセージの意図に気づかなかったらどうするつもりだったんだ?」

「ケンイチ。あなたが気づかないはずはありません。そこだけは自信がありました。」


 一年という時の流れは一気にすっとばされて、ケンイチとJの距離は縮まった。

 そもそも、ケンイチも昔、とある国のサイバー攻撃を回避するプログラム作成に

 極秘に任命された同じチームの一員だったのだ。その頃の苦難や思い出は、

 語らなくとも二人の間に流れていた。


「それではそろそろ、脱出方法の話に移ってもいいですか? 」

 ユキとケンイチはお互い目を会わせてからうなずいた。


「それでは始めます。まず始めに、脱出方法は3つあります」


 その言葉に一同思わず息を飲んだ。

 これで助かるのだろうか?

 全ては解決するのだろうか?

 とりあえずは、Jから発せられるだろうその先の言葉を待つ事にした。



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