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Geister Kontinent   精霊大陸での日常  作者: うぃんてる
第一部 賢者の学院編
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87.訪れる気配

最終改稿日2015/04/28

 暗殺者襲来事件からしばらくした後に私の提出した緊急報告書を重く見た陛下とギルド上層部は王家が所有する小型飛空艇にて例の古城に陛下の指名した調査団と護衛の冒険者を派遣し、安くはない損害を出しながらも調査を進め最終的には封印に成功したらしい。……らしい、というのは調査結果や遺跡の内容も含めて国家レベルの機密指定を受けてしまった訳で私にも箝口令がギルド総本部を通じて下命されていた。当時臨席していた領主様やミランダちゃんたちにも通達が行ったようだった。

 そして大陸全土、各国の冒険者たちに相応の被害を与えていた今回の“狩り”は例の古城遺跡が封印されたとされる頃を境に鎮静化し始め、先日ようやくギルド総本部が各国ギルド支部を通じて“狩り”のシーズンオフを宣言したのだった。


『もうすっかり冷えてきたわねぇ……コンッ』

「はいはい、身体壊しているんだから……窓、閉めるよ?」


 ミランダちゃんの護衛任務を終えた後も私はギルドからの要請を受けてアイシャちゃんの補佐兼監視(無理しないように)のもといくつかの“狩り”に参戦しては数多の魔物をシーズンオフ宣言まで殲滅してきた。ある程度の間隔で身体を休めてはきていたものの、それでも例年の数倍にあたる成果に比例して疲労や消耗も激しくそれならばいっそと私が前面に立って他の高ランク冒険者たちの消耗を抑えた方がいいだろうと思い立ち、その結果が今の私である。


「例年の量なら賛否両論ものな判断だったけど、今年に限っては概ね感謝されたし……何も言わない事にするよ。病床とまではいってないしね」

「…………それでも私は前世のイメージが強いからあまり無茶はして欲しくはない、かな」

『葉月ちゃん…………』


 カーディガンを軽くパジャマの上に羽織りベッドの上で上半身を起こした私がベッドの隣に設置した応接セットに腰掛けたアイシャちゃんにため息混じりの軽い小言みたいなものを言われているところへ葉月ちゃんが紅茶のセットを持って私の私室へとやってくる。


「はい、お茶。空気の入れ換えで冷えた身体を温めて?」


 お母さんが直伝してめきめき料理の腕が上がった葉月ちゃんの淹れた紅茶をお礼を言ってありがたくいただくことにする。

 そのお母さんはようやく学院長代理の職を後任に譲ることが出来て嬉々としてお屋敷での仕事や家事見習いの子たちへの指導をしている。お父さんはまだ代理補佐をしているのはまぁ、仕方ないのだけれども。

 新しい学院長代理は宮廷魔術師団にいる先輩が選んだ、先輩の信頼する女性だそうで高等魔法語魔術師のスノーティア・マウティンというマウティン伯爵家次女であるそうだ。代理期間中にお父さんから色々引き継いで特に問題点がなければそのまま来春には賢者の学院としては初の女性学院長になるとの事。一応お父さんはその後も顧問という形で色々アドバイスをするつもりではいるみたいだから、多分なんとかなるんじゃないかなとは思っている。


「そうそう。ウィンちゃんにお手紙来てたよ?はい、これ」

『ありがとう。誰から…………』

「ん?どうしたの、ウィンちゃん」

『あ、うん。ちょっと面倒な人からのお手紙だったから少し固まっただけ』

「ん?どれど…………げっ」


 まだこの世界に詳しくない葉月ちゃんはきょとんとしていたけれど、私とアイシャちゃんは差出人の署名と封蝋の刻印を見て読む前から頭が痛くなるような錯覚を覚えてしまっていた。


「取り敢えずミランダ、呼んでからだね。開封するのは」

『そうだね。明日、丁度闇の日だからセレスちゃんと一緒に来るように伝えてくれる?』


***


 翌日、闇の日の午後。臨時講師として勤務したアイシャちゃんが学院からそのまま二人を連れて帰ってきたので、もともとお休みを貰っていた葉月ちゃんにお願いしてベッド脇にお茶会の準備をしてもらう。この頃にはアイシャちゃんはマリア先輩が借りていた一軒家(フォーリン家本邸はバハル湖畔にあって通勤するには不便な為)を出て私の暮らす屋敷に葉月ちゃんと私の護衛という名目で一部屋を借り受けていた。私としては気心の知れた実力のある親友が傍にいるというのは嬉しかったし、両親やエレンも反対しなかったので葉月ちゃんの隣の部屋に住んで貰っている。


『さて、二人を呼んだ理由なのだけれどね。これを見てほしいの。……本物?』


 私は届いた書簡の封蝋に押された刻印と署名の筆跡を鑑定して貰うべく二人の前にそれを差し出した。


「刻印は確かに精霊王国コッタンの王太子殿下のみがお使いになられるものに間違いこざいません、ウィンテル様」

「そうですわね。それと署名や宛名書きの筆跡も……殿下のものに間違いこざいません、ウィンテルお姉様」


 それを聞いて私とアイシャちゃんは頭が痛くなるような気がすると言う状況ではなく本当に頭が痛くなってしまった。普通は一国の王太子殿下から直接、それも今まで接点が全くない一個人に対して、それも普通郵便と同じように送ってくるなんてありえなさすぎる。


『アイシャちゃん……』

「なぁに?」

『これ、見なかったことにして宛先不明で送り返したい』

「奇遇だね。私も今、郵便事故扱いで消滅させたくなっているんだけど」

「ちょっ、お姉様方、お気持ちは良く分かりますけれどダメですからっ」

『「えー…………」』


 これが中世時代とかの貴族制度な異世界とかで何も事情を知らない貴族令嬢とかならドキドキするのかも知れないけれど、私もアイシャちゃんも異世界日本の記憶を持った転生者であるうえに送り主の面倒な立場も知っているし、なによりも相思相愛な彼女持ちの男の子からお手紙貰っても胸キュンの一つも起きないっていうの。まして外交的な手続きを経ないで届けられたメッセージだなんて……面倒以外の何物でも無さ過ぎる。


『ミランダちゃん……殿下って普段からこんなことする人なの?』

「いえ。幼なじみの私とかフィナちゃんならともかくも、お姉様のような初対面の方にこのような事はなさらないはずなのですが……」

「……てことは、逆に言えば公的な記録に載せられないようなお手紙、ってことだよね?ますます燃やしたい」


 アイシャちゃんの物言いを聞いて何か迷っているようなセレスちゃんが私をみながら意を決してこんな事を言い始める。


「えっと、あの。ウィンテル様。こちらの封蝋なのですけれど。私の記憶に間違いがなければこれは、宛名本人以外の魔力を開封時に感知すると爆発するダナン時代のトラップではないかと思うのですが……」

『えっ!……………………げ。ホントだわ、何してくれてるのよ。クソ太子』

「ウィンちゃん、言葉汚い。アイシャちゃんじゃないんだから」

「葉月ちゃん、それ酷い!」


 まぁ放置しても危険なら開けてしまうしかない、と私は溜息を吐きながら魔力を通してトラップを解除し手紙を開封。中に折り畳まれた最高級品質の紙に書かれた私宛ての言葉を読み始めた。



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