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Geister Kontinent   精霊大陸での日常  作者: うぃんてる
第一部 賢者の学院編
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81.捉え方で岐れる未来

 予想通りに他の門から外へ出て森を目指そうとしていた学院生を身柄確保して連れ戻しあのパーティーの良心とも言える吟遊詩人と神官の二人組に引き渡す。 その際にどうするのか決まったかどうか確認するとパーティーとしての体を成していない現状では仮に新しい引率者を確保してもダメだろうと結論に至ったので明朝にはラドルに向けて出発するとの事だった。


「というか、さ。あなたたちのリーダーはどうやって決めたのよ。言っちゃ悪いけれど……あの子じゃ不適格だと思うわよ?あの対応は」


 アイシャの指摘にデュリーとリフィーは顔を見合わせる。


「確かに彼女を一人で抑えるのは難しいかなとは思うけどさ、別にリーダーを一人でやらなきゃいけないってわけじゃないんだよ?」

「例えばウィンテル名誉導師が引率している《氷翼を追う者》。あのパーティーはリーダーが三人いるんだよ。まぁ、構成十人というフルメンバーだからというのもあるけれど、パーティーが機能するためにこの三人は必要だからいるというものでもあるのよ」

「だからあなたたちのパーティーでみるならばデュリーさんとリフィーさんの二人でリーダーをすればいいんじゃないかしら?」


 アイシャからの指摘に二人は戸惑いの表情を見せている。そのような事は教わっていないというように。


「んー。一つ聞くけどさ。あなたたちの指導担当教官って誰?」

「メルクリウス技官です」

「あー、あの無愛想な口下手かぁ。でさ、メル君はリーダーは一人だけって言ったの?」

「いいえ。でもリーダーって普通は一人だけじゃあ、ないんですか?」

「悪いけどそんな規則ルールはないよ?それは君たち学生が勝手に思い込んでいるだけ。思い出してごらん?技官たちは一度でもリーダーは一人だけって言ったの?言ってないでしょ?」

「そ、それは……で、でも!リーダーが複数いたら混乱するじゃないですか?」

「なんで?」

「え。だって方針が違ったら揉めるじゃないですか」

「……あのね。リーダーは独裁者じゃないことくらいは理解できてるよね?異見がでたらそれを調整して取り纏めて行くのが役目であって、それができないのはリーダーには不向きとしか言えない。普通の仕事じゃないんだよ?私たちの場合は生命をかけてるの。揉めてる暇なんて無いんだよ。そんな暇があるなら妥協点を見つけるか相手を納得させれる説得力を見つけるか考えるのが先決。そういうこともしないで自分の考えに固執し続けるなんて限りある時間の中で本当にできると思っているのかしら?」

「あ……う……す、すみません……」


 最近の学生はあんまり考えて行動出来る人が少ないというか、物事の一面に囚われがちだなとアイシャは嘆息しながら思っていた。確かにリーダーは一人で出来るならその方がいいとは思うけれど負担がかかるのも事実で、限界に達した時に相談できる相手としてのサブリーダーがいれば気分的に楽なのも事実。だから学院ではリーダーは一人だけとは絶対に教えない。とはいえ積極的に複数リーダー制を勧めることはしない。業種によっては違うというのもあるけれど、基本的に冒険者に対していたせりつくせりと言うのは将来的な生存力を考えた場合に害悪にしかならないと考えられるからだ。


「リーダーの件もそうだけれどね。君たち学生は教えられた事だけできればこの先本当に大丈夫だと本気で思っているの?」

「えっと……」

「最低限必要な基礎知識や実技は勿論学院は教えてくれる。君たちが望み、その下地があるならその応用もね。けれども世界はそれだけが全てじゃないよね?想定外なんて事はよくある話だよ、今回みたいにさ」

「……つまり、常に考えて対応していける力を付けろということかい?」

「デュリー君はいい線行ってるけれどもう一つかな。常に考えるのは勿論大事。けどさ、あらゆる全部を考えるつもり?」

「そんなの無理です、先輩」

「なら言いたい事はもう分かるでしょ?向こうに戻ったら二人で頑張りなよ」


***


 向こうの情けない引率者に引き継ぎを終えてアイシャはようやく皆が待つ部屋に戻ってくる。その間もウィンテルは眠り続けていたらしく、今回は本気でしっかり回復しようとしているんだなぁと感心していた。


「お帰りなさい、アイシャ先輩。なんだったんですか?」

「聞き分けのできない後輩へのお仕置きと、情けない引率者への小言、見込みのある後輩への臨時指導。それだけだよ」

「アイシャ先輩のお仕置き…………」


 ドゥエルフが思わず顔を引きつらせて後退りしているのをアイシャは呆れたように見ながら、


「何後退りしてるの?ラミエルにナンカシタノ?」

「いや、何もしてない。ただほら先輩のあれは……」

「今回の対象は女の子だから。戦士だったし、軽く殴り倒してブレストプレート越しに蹴っただけよ。犯罪者に対して踏み躙ったりしたわけじゃないって」

「いやいやいやいや。十分怖いから。アイシャ先輩魔術師だろ、なのに防具付けてる女の子とはいえ戦士に殴る蹴るとか普通無理だから!」


 と、背後からラミエルがドゥエルフの後頭部を軽く叩く。情けないモノを見るような視線を送りつつ。


「あのね。あんたは別に問題起こしてないんだから堂々としてりゃいいの。この前のコンペの時といい、変なところで情けなくなるわねぇ」

「いやそりゃラミエルは女だから「そんなんじゃなくて。自信持ちなさいってこと。大体あんたが間違ってることしてたらアイシャ先輩が踏む前にあたしが殴ってるわよ!」…………」


『うー、何かあったのー……』

「あら、ねぼすけ姫が起きてきたわ。良く休めたの?」

『もう少し眠りたいけど、お腹空いたよぅ』

「はいはい。エレン、悪いけど……ってあれ?」

「あ、エレンちゃんならさっき配膳室の方へ行きました」

「お姉さま、風邪引きますからこちらを羽織って下さいませ」

「……さすがねぇ」


 アイシャが指示する迄もなくウィンテルが起きてきて表情を見るやエレンは疲労が完全には回復していないことを見抜き、それでも起きてきたのは空腹だからと理解して食事を受け取りにいち早く部屋をでていた。リリーはというとエレンの目配せからウィンテルの食事がしやすいようにと席の準備を始めていたし、ミランダは寝間着のまま起きてきたウィンテルの為に直ぐ様部屋に戻って軽く羽織れるものを選び羽織らせている。それぞれが自分で状況を理解して考えて判断して実行している。そして役割も理解している。こういう事が普段からできている子たちは強いとアイシャは思っていた。


「ラミエル、あたしはもう帰っても大丈夫かしら?」

「はい、わざわざ来てくださってありがとうございました」

「ん。ウィンちゃん、明日は調査行くんでしょ?頑張りなよ?」

『うん、アイシャちゃんありがとうね』



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