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Geister Kontinent   精霊大陸での日常  作者: うぃんてる
第一部 賢者の学院編
52/234

44.伯爵邸攻防戦 前編

最終改稿日2015/04/12

 ウィンター伯爵家の開放された正門に光り輝く大きな門が出現し観音開きにゆっくりと開いていく。そして中から黒い霧がモワァッと溢れ出でるとともにゾロゾロと青白い肌をした深紅に輝く瞳の女性の集団がおよそ20人程扉より出現しゆっくりとサーレント達の方へ歩み寄っていくその後方から最後に壮年ぐらいに見える漆黒のマントを羽織った、やはり深紅に輝く瞳の男性が現れると扉がゆっくりと閉じて消えていく。


吸血鬼卿シルフィニアスの犠牲者か……。迎撃陣形を組め、殲滅させるぞ!」

「御意」


 サーレントの号令に全周警戒を行っていたメンバーが視線を合わさぬように留意しながら迎撃陣形へと隊形を変える。


『……我が名はシルフィニアス・セレニアス。余の人形共コレクションを引き取りに来た……』

『……無駄な抵抗はせず大人しく引き渡すが良い。さすれば命だけは助けてやろう……』

「断る。今宵を貴様の命日にしてくれる……我が神ノヴァの名の下に」


 虫酸がはしるような邪悪の笑みを浮かべた吸血鬼卿が見下すように尊大に要求を述べるもサーレントは即座に拒否する。この手の手合いに交渉は不要。ただ撃滅するのみだ。


『……くくく。我に勝つ気でおるか。小賢しい……』

「……やれ!」


 余裕を崩さぬ吸血鬼卿を無視しサーレントが右手に持った銀の小剣を高く掲げる。その合図と共に屋敷の屋根上に控えていたハンター達が白く輝く矢を一斉に犠牲者達レッサーバンパイアに射掛け始めたのを皮切りに戦闘の火ぶたが切って落とされた。


「歴戦の勇者たちよ、哀れな犠牲者達を解放させよ!」

『……回復効果のある矢、だと……?』


 ヒーリング・アローを身に浴び苦悶の声を上げる犠牲者達に銀製武器を装備した戦士達が取り囲まれ無いように注意しながら攻撃を開始する。精神に打撃を与える攻撃さえ受けなければレッサー種如きは駆逐できる自信があった。200年前には存在していなかった新種の矢に一瞬驚いた吸血鬼卿であったがすぐに余裕を戻し一言、二言発す。


『面白い物を見せてくれた礼だ。受け取れ……簡易詠唱「サモン・ワイバーン」』


 吸血鬼卿の上空に召喚陣が描かれるとそこから鋭い鳴き声を上げた全長10m以上のワイバーンが飛び出しまっすぐ屋根上のハンター達に襲いかかって行く。回避する間もなく振り回されたワイバーンの尻尾攻撃を受けた数人のハンターが顔色を悪くして蹲る。尻尾の先にある猛毒の針により毒を受けたのだ。


「くそっ、高級解毒剤を飲ませろ!ひとまずこいつを最優先に倒せ!!」


 ハンターリーダーが指示を叫び目標の変更を余儀なくされたことに歯がみする。


「魔術師隊はハンター隊の援護を。神官たちは戦士への回復と精神力譲渡を優先にせよ」

「哀れなるさまよえし魂に偉大なるノヴァの祝福を授けん、ヒーリング・オール」


 高等魔法語魔術師と高等精霊語魔術師たちにワイバーンへの攻撃を指示しつつサーレントはレッサーバンパイアの群れに通常の人間であればかなりの生命力を回復させるであろう回復魔法を掛ける。元々が普通の領民である娘達のなれの果てだけに大半が抵抗に失敗し神々しい光の奔流に飲まれ崩れ去っていく。僅かに残った数体も間もなく戦士団によって撃滅されるであろう。


『……ヒーリング系、だと?貴様、ウィザードか……』

「厳密には違うがな。まぁ似たようなものだ」


 エルフ族が生来習得している精霊語魔術には神官が習得する神霊語魔術同様に回復系ヒーリング魔法が存在するものの、女性にしか扱う事が出来ず男性のサーレントには唱える事すら出来ない。他に似たような回復系魔法が存在するのはウィザードくらいしかないという結論にたどり着く事はおかしくはない。最低でも800年以上生きているハイエルフという存在が異質過ぎるだけなのだ。


『……成る程。帝国の末裔か……ハイエルフ。ならば手加減せずともよいか……』

「笑止。貴様の本気などたかが人間族の娘に敗北する程度であろう?」


 暗にたかが人間の小娘リンに封印された風情の情けない吸血鬼のくせに、と嘲笑された吸血鬼卿ではあるがピクリとも表情を崩さずに言葉を紡ぐ。


『……冥界が貴族、シルフィニアスが命ずる。忠実なる我がしもべどもよ出でよ、「サモン・シャドウドラゴン」』


 サーレントたちの目前の地面に大きな召喚陣が描かれそこに漆黒の竜種が恐怖を引き起こすような一鳴きと共に出現する。


「「ぐぅっ?!しまった!!」」


 対峙している2人の戦士が思わず怯み身体を強ばらせ動きを止められてしまう。

すかさずそこに鋭い竜種の爪が迫る。咆哮に身体の自由を奪われた2人はただ茫然とそれを見つめ……死を覚悟した。


「麗しき乙女がエントの庭に侵入せし愚か者よ、その身に刻め罪の薔薇。ローズ・ガーデン」


 ……と、その直前。不意に響いた声と共に地面を割って太いイバラが竜種に十重とえ二十重はたえと瞬く間に絡み付き動きを止めさせ、続けてドンッとサーレントたちの背後から飛んできた特大の火球が竜種を包み弾け燃える。さすがの竜種も苦悶の叫びを上げて後退り、飛んできた方向をギロリと睨み付ける。


「陛下、遊んでいる暇はございません。さっさとケリを着けてくださいませ」


バルコニーに出たフェルリシアが上位特大火球フレアボールを飛距離と命中値を強化させて竜種にぶつけ息も乱さずに何時も通りのゆったりとした口調で話し掛ける。


「そうですぞ、陛下。このままでは我が庭園が荒れてしまうではないですか。とっとと終わらせましょうぞ」


 続いてシルフィニアスの後方から現れたウィリアムが美しい乙女の姿に具現化した中位精霊エントの頭を撫でて労いながらサーレントに苦言を申し立てる。


「っ!今だ、かかれ!」


 ウィンター伯爵夫妻のあまりに自然な連携魔法に暫し呆気に取られていた戦士たちが気を取り戻し竜種に反撃を開始するのを見やりながらサーレントはとりたて態度を変える事無く吸血鬼卿から視線を離さずに言葉を返す。


「済まぬな、フェルにウィルよ。“日記”を元に向かったセシールからの連絡を待っておるのでな」

「そうなのですか。ところであなた?貴男が精霊に好かれるのは知っていますが……妻の前でイチャイチャするのはどうかと思うのですけれど?「炎撃光線フレアレーザー」」

「妬かないでくれよ、フェル。私の愛する女性は君だけなんだからさ。なぁ、フラウ?」

『うおっ?!この期に及んで夫婦げ……なっ、がぁぁっ!!』


 いきなりフェルリシアがシルフィニアスの背後にいるウィリアムに高熱を放つ炎属性の光線レーザーを放つ。シルフィニアスは何をしているのかと射線上から身体を避けるものの、いつの間にかにウィリアムの前に可愛らしい少女のような氷の中位精霊フラウが具現化して氷鏡を避けた先に合わせて展開しているのに気が付き、慌てて半身捻るも間に合わずに反射した炎撃光線フレアレーザーをまともに食らい、身に纏っていた魔法防御盾ルーンシールドでも庇いきれないダメージがそのままシルフィニアスに突き抜け爆発とともに炎が包み込む。


「本当かしら?そう仰りながらもまた増えているじゃありませんか……「雷撃光線ライトニングレーザー」」

「いや、誤解だよ、フェル。彼女たちは可愛い友人みたいなものだから。なぁノーム?」

『貴様らいい加減に……何!?ゲハァッッ!!』


 続けてフェルの指先から放たれた雷属性の光線がシルフィニアスを避けてウィリアムに向かい当たる直前に急に角度を極端に変えまたもやシルフィニアスに直撃して全身を激しいスパークが襲い貫き煙りをあげる。

 見ればその足元には背の小さな女の子がにこやかに笑って手を振りながら地面に消えて行くところで、その身体は光沢のある金属のように見えていた。


「シルフィニアス……お前、本当は大したことないのではないか?」


 サーレントはコントのような光景を目の当たりにして呆れたように浮かんだ疑問を思わず口にしたのだった。

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