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Geister Kontinent   精霊大陸での日常  作者: うぃんてる
第一部 賢者の学院編
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番外編 温もりと安らぎを求めて

クァウオの花編にてウィンター家に避難する事になったリリーとエレンのお話です。


最終改稿日2015/04/12

 正体不明の人物からずっと脅迫を受け続け、それでも必死に周りの人に笑顔を振りまき続けていたリリーはもう限界だった。つきあい始めたエレンと指を絡めるように手を繋いで学院へ登校したリリーを待っていたものは……炭化した自分の机と白濁まみれの異臭を放つ人形だった。

 悪質を通り越して心身の危険を感じさせる明らかに行きすぎた行為を鑑みたウィンテルの要請によってリリーはしばらくの間ウィンター家にて療養することになり、リリーはエレンの隣室に滞在する事になったのだった。


「いいお湯だったね、リリー。少しは……楽になった?」

「……うん。エレンちゃんが隣にいるからすごく安心してるよ」


 夕食の時からずっとリリーはエレンの隣に居続けた。そしてエレンもリリーを片時も離さないかのように安心させる為の気配りを絶やさずにいた。


「……眠れそう?リリー」

「…………多分。眠れると、思う……」


 ぎこちなく笑うその表情は無理していることが一目瞭然だった。


「……リリー?私、昼間言ったよね?もう隠し事は無しだよって」

「あ、う……うん。ごめんね……多分、魘されると、思う、の……」

「そっか。じゃあ、一緒に寝よう?私のベッドの方が大きいから、枕持ってきて?」

「……いいの?……迷惑じゃない?」


 嬉しさ半分心配半分の表情でリリーがエレンを見つめている。エレンはそんなことは大した問題じゃないとにっこり笑いかける。


「大好きなリリーの為に出来ることがあるなら喜んでするに決まっているじゃない」

「リリーだってそうでしょう?さ、枕持って来て、一緒に……寝よう?」


 天蓋の付いたエレンのベッドに枕を並べて同じお布団に両側から潜り込むエレンとリリー。少し気恥ずかしいのかお互いの顔を見やり頬を染め合う。大好きな人が目の前にいる。

 リリーは次第に心を覆っていた不安が溶けて消えていくのを感じて今日こそはゆっくり眠れる。そう思ってエレンにおやすみを告げて目を瞑ったのだった。

 エレンはそんなリリーの寝顔を見つめていた。この可愛らしい顔を歪めさせようとする存在がいることが信じられなかった。安定した呼吸の音を聴きながらエレンは何があってもリリーの隣に居て穏やかな日常を守り抜きたいと思うのだった。


***


『この泥棒猫。よくも私のエレンを盗んだわね?』

 ……違う。盗んでなんか、いない……よ……

『ならばその穢れた身体で惑わしたのね?最低』

 ……違うよ。惑わしてなんて……私、誰にも許してないもの……

『リリー。お前が強情張るから悪いんだぞ?』

 ……どうして……?わたし、わるいこと、してない……

『お前は悪い子だ。お前のせいで誰かが酷い目にあうんだぞ?』

 ……やめて、そんなの……ひどいよ……

『じゃあその代わりにお前を寄越せ』

 ……そんな……

『あらあら、お友達よりも自分を取るのね?』

 ……違う!でも、でも……わたしは、もう、エレンちゃんのものだもの。

『ふーん。じゃあ見向きもされないようにすればいいんだな?』

 ……え……や……いや……こな、い、で……

『くくく、良い声で鳴いてくれよ……?』

 ……いや、いやぁっ!離してっっ、


「やだぁ……いやぁ……たすけ」

「リリー!ねぇ、リリー?!大丈夫だから、私が、いるから!」

「う……あ……やぁぁ……エレン、ちゃん……助けて……」

「大丈夫よ、落ち着いて。私はここにいるから。貴女のそばにいるから。……ね?」

「……ゆ、め……?」

「そうよ。悪い夢を……見てたのよ。もう、大丈夫……ね?」


 よほど酷い悪夢ゆめを見ていたのかリリーは荒い息をし続けてなかなか落ち着くことが出来ないようだった。エレンは自分の心音を聴かせるように抱きしめて居たのだけれども、辛そうなリリーの様子に意を決しリリーの顔を優しい笑顔を見せながらもう一度ゆっくり囁きかける。


「大丈夫だよ。ここにはリリーを傷つける人はいないよ?」

「ここに居るのはね……リリーが好きで大好きで。心から愛したい……私だけ、だよ」

「…………エレン、ちゃん……」

「……今まで、辛い思いさせて、ごめんね」

「……愛してる」


 そうしてエレンはリリーの柔らかな桜色の少し小さな唇に自分の唇を重ね合わせて初めてのキスを捧げた。


「……落ち着いた?」

「ん……。ありがとう、エレンちゃん」

「良かった……」


 エレンとリリーの間にしばしの沈黙が漂う。エレンはリリーに努めて優しい笑顔を向け続け、リリーはもじもじと何かを言いたそうにしては俯いている。それでもエレンから伝えられた想いに応えようと勇気を振り絞るかのようにエレンの笑顔を見上げる。


「エレンちゃん」

「なぁに?」

「あのね。……私も、エレンちゃんのことが大好き。心から愛してる。……だから」

「……だから?」

「……私をいつかエレンちゃんのお嫁さんにしてください。ずっとエレンちゃんの隣にいて、支え合いたいの。そして……私をエレンちゃんのものにして欲しいの……」

「…………」

「……ダメ……?」


 リリーの、エレンに向けるその瞳は真剣そのものだった。一時の気の迷いなどではなく。キスから繋がる勢いに乗せられたようなものでもなく。愛しい人と生涯共に在りたいという強い意志が込められたその瞳はエレンの背中を押すに充分だった。


「告白の時もさ、リリーに言われてしまって、プロポーズも言わせてしまうなんて……ね」

「ぁ……ごめんなさい……」

「謝る必要なんてないわよ、リリー。……ありがとう。必ず2人で……幸せになろうね」

「うん。……きっと、エレンちゃんと2人なら幸せになれるよ」

「そうだね」

「そうだよ」


 そうしてエレンとリリーは少しの間お互いを幸せそうな眼差しで見つめ合った後、どちらからでもなく再び自然に唇を重ね、お互いの温もりを確かめるかのように抱きしめ合い、ようやく得られた安らぎを分かち合うかのように頬を寄せ合い微笑む。


「エレンちゃん、温かいね……」

「リリーも、温かいよ……」

「安心する……」

「落ち着くね……」

「おやすみなさい、エレンちゃん……」

「おやすみなさい、リリー……」


 安らかに満ちた幸せそうなリリーの寝顔をしばらくの間穏やかに見つめていたエレンは、この幸せを生涯守り抜こうと心に誓うのだった。

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