40.閑話 6月1日 プロポーズの日
記念日閑話シリーズその4
最終改稿日2015/04/12
俺たちの長旅も後少しで終わる。ようやくウィシュメリアへの国境を越えたあたりで日が暮れた為、俺たちは野営の準備をして火を熾しこの長旅で一番お世話になった彼女の料理を堪能する。
そして今は俺と彼女が最初の警戒番をパチパチと爆ぜる焚き火に時折拾い集めた木々の枝をくべながら肩を寄せ合い座っている。
「思えば本当に長い旅だったな、フェル。……君には本当に色々と世話になった」
「そうですね……ウィル。地下図書館しか知らなかった私には色々と大変でしたけれど……貴男のおかげでどうにかこうにか、帰って来れました」
「……ナーシャ様のクエストは……さすがにあの話は驚きに尽きるものの、どうやら達成できそうだ」
「ですね。……ヨハンさんの引退だけが残念でならないのですけれど……それ以外は無事に帰ってこれてホッとしています」
しんと静まりかえった闇の中、焚き火の爆ぜる音だけがしばしの間響いているのを2人は揺らめく炎を見つめながら聞いていた。
「……なぁ、フェル。王都に戻り神殿へ報告したら……また図書館に戻るのか?司書として」
「ええ。そのつもりよ。ウィルは……どうするの?」
「俺か。……そうだな」
この3年間を振り返って思い出す。廃都ギルドギダンへ赴き直々の神託を受けそして帰ってきた今までの苦労と苦難に満ちた長旅をその能力と、いつでも絶やさずに微笑んでくれたことで俺ばかりか他のメンバー全員を癒し続けてくれた彼女……フェルリシア・ドレンの事を。
そして彼女に負わされたこれからの未来のことを。
「……フェルリシア。君に伝えたいことがあるんだ。……聞いてくれないか?」
「どうしたの、改まって。……いいわ」
「廃都での事で決めたわけではないんだが……この3年間、フェルには心身共に本当に世話になった。そして……俺にはフェル。君が必要なんだと思い知ったんだ」
「…………うん。それで?」
「……ウィリアム・ウィンターは君、フェルリシア・ドレンとこれから産まれてくる娘達と共に支え合い慈しみ合って幸せな未来を築き上げる事を誓い、一層の努力と愛を重ねたい」
「……結婚してくれないか?フェルリシア……」
ずっと微笑みを絶やさなかったフェルリシアの表情が初めて少し歪む。けれどもすぐにいつもの、いやいつも以上の微笑みをウィリアムに向けそして一筋頬に流して応える。
「やっと……言ってくれたのね。本当に……いつも決断が、慎重すぎるんだから」
「……すまない」
「けれどもそんな貴男ならきっと、いい家庭が築けると思うの……」
「じゃあ……?」
「ええ。……末永く愛し合い、産まれてくる娘達と共に幸せになれるよう……お願いしますね、ウィリアム」
寄り添ったまま2人はお互いの穏やかな笑顔を見つめ合い、どちらからと言うではなくそれが当たり前だというようにそっと唇を重ね合いお互いを感じ合うように抱きしめたのだった……。
ちなみにフェルリシアはこの時点では妊娠していません。身重で冒険者が出来るほど世界は甘くありませんし、それを自覚しているので肌を重ねることがあってもきちんと管理をお互いに徹底しています。




