24.ご褒美
引き続きミランダ中心視点です。
最終改稿日2016/10/28
結論から言うと、フェルリシア様の実力は引退して第一線から退いていらっしゃるというのに…………開いた口が塞がらないどころか、私達12名は身動きすら出来ずにしばらく硬直してしまっていた。
そして、ウィンター伯爵家は絶対に敵に回してはいけないと心底思い知ったのだ。
ソーサラーの上級魔法にはテレポートという魔法があるのはセレスに聞いて知っていたのだけれども、フェルリシア様はルーン・マスターの上級魔法でテレポートの上位魔法、ゲートを事もなげに伯爵家本邸大広間に展開し、オリンポス火山のウィシュメリア側麓にあるウィンター伯爵家の所有する温泉を敷地内に複数もつ別荘へと繋げてしまわれたのだ。
「……ミランダちゃん、行くよ?おーい、ミランダちゃん戻っておいで?」
「はっ!?」
あわてて私達は荷物を持ってゲートを潜り抜け、最後にフェルリシア様とヨハン様がこちら側にいらっしゃいましてゲートは跡形もなく消失してしまった。
「はい、お部屋は二人一組だから、ミランダちゃんたちは館の東側の客室六部屋ね。エレンとリリーちゃんは西側の客室の一つを、ドゥエルフ君とラミエルちゃんも同じく西側の一室を使って……」
「ちょっと待て、先輩。何自然に男女同室にしてるんだよ」
「だってあなたたち恋人同士でしょう?大丈夫、大丈夫」
「ドゥエルフ……。私と一緒じゃ、いやなの…………?」
ドンガー様とウィンテルお姉様のやり取りにラミエル先輩が泣きそうな表情を見せる。
「だぁぁぁぁぁ!分かった、分かったから泣くなよ。ラミエル。一緒でいい」
「……本当に?」
「ああ、二言はない」
「やったー♪」
あ、嘘泣きだ。さすがラミエル先輩。ウィンテルお姉様は西側の一室に一人で泊まられるとの事。寂しくないのだろうか。後でお邪魔してみようかな……?
「さて、みんな。よく聞いてね?ここの温泉は女湯と男湯に別れてはいるけれど、それぞれの中間は繋がって混浴になっているから注意してね。じゃあ、いい休日をね」
***
「んー…………。やっぱり露天風呂は気持ちよいわね……」
白く濁った、いわゆる美人の湯に私たちは浸かって身体を癒している。ラミエル先輩はまっすぐ混浴に向かって行ったのでドンガー様とゆっくり過ごすのだろう。さすがに私たちは未来の旦那さま以外の男性に柔肌を晒すわけには行かないのであちらに行くのであれば大きなタオルを巻くしかないのだけれども。
「セレス?私のことはいいからアリアとイチャイチャしてきなさい。ほら、行きなさい?」
「申し訳ありません、ひぃさま。お言葉に甘えますね」
この旅行の間だけは侍女たちもその役目から解放されて一人の女の子としてゆっくりするようにと、私は許可を出している。せっかくの旅行だもの、いつもお世話になっている彼女たちにも感謝を伝えて労わなきゃね。
「なんだかんだでカップル成立してるのね?私たち以外は」
「お姉様?」
お姉様が隣に寄り添って肩を並べて下さっている。いつもよりドキドキしてのぼせそうだ。
「ミランダちゃんは新しい恋、見つけないの?」
「お姉様の、隣がいいんです。お姉様の、隣じゃなきゃ、ダメなんです。私が好きなのは…………お姉様なんですから」
「クスッ……可愛い子ね。いいわ、今日はサービスしてあげる」
「……え?」
お姉様が私の腰に手を添えると、そのままお姉様の柔らかな弾力のある太股の上に私のお尻を乗せて背後からきゅっ、と抱きすくめてくれる。
「ふふっ、ミランダちゃんたら顔真っ赤よ?もうのぼせちゃったの…………?」
「…………お姉様が魅力的すぎて……」
「最近よく頑張ってるって聞いたわ。だからご褒美あげる…………」
「…………今夜は添い寝してあげるわ。お部屋にいらっしゃいね?」
「…………///」
お姉様が私の耳元で思いも寄らない事を囁きかけてくださり私は嬉しくて小さく頷いた。柔らかくて温かくて、ふわふわしてきて…………天にも昇るような心地ってこういう事を言うのかな?
「そろそろお昼ご飯の準備をしないといけないから、私は一旦上がるね?」
「…………ぁ……わたし、も……手伝います……」
「んー…………ミランダちゃん顔真っ赤だよ?まぁ取り敢えずいっしょに上がろうか。立てる?」
「はい…………ぁっ」
あれ。足腰に力が入らない?あれ?どうして……?
「……いいよ、無理しないで。運んであげる」
「え……」
見た目は華奢な体格のお姉様に私はバスタオルで包まれた上、お姫様抱っこされて更衣室まで運ばれてしまった。……恥ずかしい……。
すがすがしい爽やかな香りのする草を幾重にも編んで作ったと思われる敷物の上にゆっくりと下ろされた私はお姉様が私服に着替えていく様をぼんやりと眺めている。あれ?は何だろう。どこかで見たような。うう、ダメ。顔だけでなく身体が、全身が火照っているような感じがする。…………熱い。何も……考えることが出来ない。
「……大丈夫?やっぱりのぼせちゃったんだね……起きあがれるようになるまで、扇いであげる」
「……ん……」
お姉様は荷物の入った手提げ袋から質素だけれども作りは上質な扇を取り出すと、私の頭をお姉様のお膝に載せてくれてからゆっくりと私に涼しいそよ風をにこにこと微笑んでくれながら火照りが鎮まるまで送ってくれたのだった。
***
「はい、お水」
「ありがとうございます」
結局私は日当たりの良い窓際の近くにある壁際の椅子に座ってお姉様とフェルリシア様がお料理する様を眺めていた。もう落ち着いてはいるのだけれどもフェルリシア様から今日はお客様なのだからとやんわり断られてしまった。先ほど倒れた私を心配してとのことだろうけれども。
それにしてもお姉様とフェルリシア様の距離が羨ましい。あんなに近い距離で過ごせるなんて私には今でもあり得なかった。侯爵夫人であるお母様は私と一緒に過ごす時間は驚くほど少なく、ましてや同じ事を一緒にして過ごすなんてことは滅多になかったからだ。
「……はぁ。いいな……」
お姉様が私の方をチラッと見てフェルリシア様になにやら耳打ちをしている。……なんだろう。気になるけれど……この距離では唇も読めない……。残念。
と、思っていたらフェルリシア様が私を手招いているので飲み干して空のグラスを返すついでに近寄ってみたら。
「ミランダさん。今夜は人数が多くて私たちとリリーちゃんだけでは手が足りないの。手伝ってくださるかしら?」
「はいっ、是非よろしくお願いします♪」
茶目っ気たっぷりにウィンクしながら仰られたフェルリシア様の言葉に私は嬉しくてすぐに頷き返事をしたのだった。……マリスに頼み込んでお料理教えて貰っていて本当に良かった……。




