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Geister Kontinent   精霊大陸での日常  作者: うぃんてる
第一部 賢者の学院編
27/234

23.休息は大事

ミランダ視点中心です。


最終改稿日2016/10/28

「ミュー、カレン。今日も守ってくれてありがとうね?」

「そんな、ひぃさま。勿体のうございます」

「そうですとも。ひぃさまが無事ならそれ以上のことはありませんもの」


 連日の戦闘連携訓練でドンガー様たちに率いられて王立地下図書館に潜り続けているミランダたちは毎日充実してはいるものの、そのたびに矢面に立たざるを得ないミューとカレンの疲弊が激しい事にミランダは心を痛めていた。身体の傷こそ、生命の精霊神を奉る光の精霊神官戦士であるリリー先輩が綺麗に跡形なく癒してくれているものの、そろそろ心が限界だろう。


(そうだ。ウィンテルお姉様に相談してみよう)


 とは思うものの、お姉様は連日の護符作成でかなりお疲れのご様子。直接お会いするのは気が引ける。それならばお手紙にて伺えばいいと思い付き筆を取ることにした。

 みんなが着替えている間に急いでお手紙を書き、帰り支度を始めたエレン先輩にお姉様へ渡して貰えるようにお願いした。


「ん、分かった。今夜必ず渡してあげるね」

「ありがとうございます、エレン先輩」


 快くお引き受けくださった先輩に感謝して急いで自分も着替え始め、ドンガー先輩たちに守られながら帰宅の途についた。


 翌日。いつものように滞在している屋敷まで迎えに来てくださった先輩方と合流し、図書館に赴くとエレン先輩が手招きしていらっしゃるので小走りにお側に行くと。


「明日は闇の日で図書館は午前中で終わってしまうし、明後日は氷の日でお休みでしょう?お父様たちとも色々相談したのだけれども、貴女達、侍女さん達も含めて今夜はうちに全員泊まりなさいな。そして明日明後日は完全に休養日にしてしまいましょう。だから今日はアフタヌーンティーの時間になったら上がるわ。いいわね?」

「えっ?!」

「お姉ちゃんも休ませなきゃいけないから丁度良かったわ。オリンポス火山の麓にある温泉へ行きましょう。そのつもりで支度なさいね?」

「はいっ、わかりました。…………その、ありがとう御座います」

「滞在費はお父様が王家から預かっているそうなので気にしないでいいわ」

「は、はい」


 サーレント国王陛下はコッタン王国宰相であるわたくしのお父様のお祖父さまの旧友でなにかと気を遣ってくださり本当に有り難く思い、またまだまだ未熟なわたくしのために便宜を図ってくださったりしていただき誠に申し訳なくも感じている。だから一生懸命勉強していつかこのご恩を返せるようにしなくてはと考えているのだけれども…………。


「ひぃさま、大丈夫ですか?皆さまもう少しでお揃いになりそうですけれども…………」


 あ、いけない。早く着替えなければ。集中集中。


「ごめんなさい、ちょっと考え事をしてたわ。ありがとうねセレス」

「いえ。先ほどエレン様とお話しされていらっしゃいましたけれど……何か御座いましたか?」

「えっと、今夜はウィンテルお姉さまのお屋敷にマリスたちも連れてお世話になって、明日明後日はオリンポス火山麓の温泉に連れていってくださるそうなの。だからそのようにみんなに伝えてくれる?」

「ええっ?!…………なんだか本当に申し訳ないですね……わかりました。伝えてきますね」

「ええ、お願いね」


***


 いつものように隊列を組んで地下に降りていく。私たちはまだまだ余裕はないので寡黙に警戒をしながら進んでいくのだけれどもエレン先輩方は学院生活4年目だけあって警戒はしながらも雑談しつつ進むだけの余裕をお持ちになっているようで、どうやら先輩方も今回の温泉旅行には今夜から同行されるとのこと。地図の作製自体も目標は地下20階に設定してあって、今が地下18階であるから来週前半にはなんとか到達できそうではある。うん、先輩方の期待に応えられるよう精進しよう。


「よーし、休憩しよう。お昼だしな、交代で見張りしながら飯を食え。そうだな、ラミエルとリリー、それから後方警戒してたミランダたち、先に喰っていいぞ」

「ありがとうございます。ですが、私とセレスはあとで構いませんのでミューとカレン、クレアを先にしても宜しいですか?」

「ほう。理由を言って見ろ」

「はい。私まで休んでしまいますと神官が全員休憩することになりますし、ミューとカレンを後にすると戦士系の方々がまとまって休憩することになりますから万が一の時にバランスが悪くて即応がしにくいと思うのです。それから、私とセレスはみんなに気遣っていただいてまだ余力があるので」

「…………そうか。まぁ、いいだろう」

「ひぃさま、別に私たちは……」

「いいえ、率いるものが真っ先に休むようでは問題ですから。ですからドンガー様もエレン様もお休みになられていないのでしょう?」

「…………やれやれ。初めて出会った頃の面影全くないじゃないか、ミランダ」

「ほんと。率いるものとしての自覚、ちゃんと芽生えて来てるわよ」


 さりげなく何度も試されていたし、お手本は目の前にいるからあとは私のやる気次第。フェンリルの信徒らしく貪欲に吸収してやるんだから!

 それから現在のフロアを探索し終えてマップを完成させて地上に戻ることになった。

 地上に戻るとさすがに緊張も解けてどっと疲れが押し寄せてくる。

甘いものが食べたいなぁ。この前ウィンテルお姉様に連れていかれたケーキ屋さんは美味しかったなぁ。私と同い年の子が作っていると聞いてびっくりしたけれど。


「ほい、注目。各自着替えたら食堂に集合。このあとの打ち合わせするぞー」

『はーい』


 さすがにこの1週間、濃密で過酷なスパルタ特訓をやらされていたおかげでみんな疲労の色が隠せなくなってきている。身だしなみと簡単なお化粧で誤魔化してはいるものの、お父様やお母様が見たら卒倒されそうで怖い。

 けれどもその代わりに得られた貴重な数々の経験に比べたら……大したことじゃないように最近思えて来たのは卵からヒナくらいになれた証なのだろうか。もしそうだとしたら嬉しいな。本当に。

 重い金属鎧を身に付けていて思うように脱ぐことのできないミューとカレンの着替えをみんなで手伝い、揃って食堂に着いた頃には午後のお茶の時間になってしまいかなり混雑してしまっていた。


「ミランダちゃん、こっち、こっちー!」


 食堂の奥の方にある有料の小会議室の入り口でエレン先輩が手を振っている。どうやら落ち着いて話をするためだけに借りたみたいだ。


「すみません、遅くなりました」

「お疲れさま、ミランダちゃん、それからみんなも。さ、席について寛いで?」


 大きな円卓の一番奥に座っていたウィンテルお姉様が席に座るよう、私たちを労ってくださりながら微笑んでくれる。


「ドゥエルフ君のスパルタは大変だったでしょう?けれどもその代わりにおそらく貴女たちはかなり成長しているはずよ。だから、今夜から明後日まではゆっくり、身体を休ませなさい」


 さ、お茶会を始めましょう?というウィンテルお姉様の言葉とともに先輩方が紅茶を淹れてくださり、ホールケーキを切り分けて配って下さって恐縮するばかりだったのだけれども、今まで頑張ってきたのだから気にするな、と言われてしまい甘える事にした。


「食べながらでいいから、ちょっと聞いてね?マリスさんたちはもう準備を終えて荷物を伯爵家の方にもう運びこんだという連絡がさっき来たの」

「だからドゥエルフ君とラミエルちゃん、リリーちゃんは準備して私たちの屋敷に集合ね。ミランダちゃんたちは私たちと一緒に移動するから」


 私はずっと疑問に思っていたことを聞いてみることにした。


「ウィンテルお姉様。一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「なぁに?ミランダちゃん」

「オリンポス火山は王都から日帰り出来る距離じゃないんですけれど、どうやって行くのですか?」


 オリンポス火山はウィシュメリア、シェルファ、コッタン、ケイオスの四ヶ国に跨る大陸最大の巨大な火山で、王都から普通に行けば片道軽く1週間かかるはずだから。


「明日の朝のお楽しみ。ヒントはお母さん。ソーサラーの上位職“魔炎の申し子”高等ルーン・マスターだからね」

「!?」


 高等ルーン・マスター?何その化け……失礼。お姉様のお母様、恐ろしい実力をお持ちのようで……。

 その日の晩はフェルリシア様と、お姉様、そしてリリー先輩の手料理をご馳走になり、大浴場でゆっくりと湯に浸かって癒しを受け、久しぶりに身体と心の緊張を解して眠りにつく事ができたのだった。

いつもお読みくださり大変感謝しております。


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