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Geister Kontinent   精霊大陸での日常  作者: うぃんてる
第一部 賢者の学院編
25/234

21.閑話 4月23日 サン・ジョルディの日

記念日閑話シリーズその1

サン・ジョルディという日にドキドキさせてくださった、ナツ様へのお礼も込めて。


最終改稿日2015/04/11

 今日は4月23日。異世界日本では認知度は低いけれどサン・ジョルディの日で、親しい人に本を贈る日なんだそうだ。男性は女性に赤いバラを贈り、女性は男性に本を贈るとされているらしいんだけど、男女ともに本を贈りあったり、親子や友人の間でも本のプレゼントをしたりするそうなんだけれどもね。

 そう言えば向こうの世界では多分前世の彼だと思うのだけれど、病院内の本屋さんで彼のために本を探して贈ったら、その日の夕方には真っ赤な薔薇の花束を持ってきてくれたっけ。……嬉しかったなぁ、あの時は。病院の廊下を歩いているとき看護婦さん達ににやにやされて凄く恥ずかしかったとか照れていたけれども。

 ……そんな前世の思い出話を家族に話してみたら、じゃあ我が家でもやろうという話になってしまったので、現在私は王立地下図書館の地下25階付近を下に降りる階段探して彷徨っていたりする。タイムリミットは夕食の時間までだから少し余裕はあるものの、エレンがリリーちゃん達も誘いたいと言うことになって幼なじみ達も一緒に夕食を囲むらしい。

 さて、どうして私がこんな所を一人で彷徨っているかというと…………お父さんに贈るための精霊に関する貴重な文献が地下30階付近に眠っているという情報を司書長じょうしから聞き出した為だ。これだ、と思って本気装備で背中に氷翼生やして何故か今日に限って次々と開く小さな歪みを叩き潰しながら降りていくこと数回。いい加減精神力がきつくなってきた頃にようやく目的の地下30階に辿り着いた。


「ん…………ここ、他の階層にくらべてすごく落ち着いてるね。当たりかも?」


 静寂に包まれたこのフロアには落ち着いた雰囲気が漂いなぜだかよく分からないけれど気持ちが凄く安らぐ気がする。これだけでも来た甲斐があったような気分にさえなってくる。

 精霊に関する本棚を探しながら静かにフロアを探し歩いていくと、ふと一冊の古びた絵本のようなおとぎ話のような本が妙に私の気を惹いた。思わず私はその本を取り開いてみる。

 文字自体はどうやらプレダナン期頃の古代精霊語のようで今の私には難解すぎて分からないけれど、お父さんなら読めたはずだと思う。仕方ないので挿絵の方を中心に見ていくとストーリーとしてはこんな感じなんだろうか。

 特別な力を持つ少女があるとき悪い人たちに生け贄として捧げられてしまい、悪い人たちのたくらみが為されてしまうその瞬間に神様の奇跡により何とか助かってその少女を助けに来た人が彼女を連れて帰り結ばれる…………。


「…………うーん。よく分からないけれど、何か気になるなぁ、この絵本。ってもうこんな時間?じゃあこの本でいいかな。貴重な文献には違いないし、古代精霊語で書かれた本自体が貴重だしね」


 私はその絵本を大事にバックパックにしまうと護符を握りしめ伯爵家の自分の部屋を思い浮かべて合い言葉を唱える。


「リターン・ランド」


***


 夕食の時間になりそれぞれ思い思いにプレゼントを用意して食堂にみんなが集まってくる。


「やぁ、君たちも久しぶりだね。ラミエルさんにドゥエルフ君。それにリリーさんも。ようこそウィンター家の夕食会へ。今夜はゆっくり楽しんでいってくれ」


 お父さんの挨拶を皮切りに今夜ばかりはみんなでアルコール度数の少ないお酒で軽く乾杯して、お母さんとリリーちゃんの合作料理をみんなで楽しむ。


「本当にエレンには勿体ないくらいいい子よ?リリーちゃんは。ちゃんと幸せにしてあげなさい?」

「勿論にきまっているじゃない。リリーといるだけで幸せになれるんだもん」

「エレンちゃん…………ありがとう……」

「ラミエル。お前も少しは料理できた方がいいんじゃないか?」

「もー。私だって頑張っているのよ?けれども火加減が難しいのよ」

「そうか。じゃあ今度見てやるよ。家では妹たちに料理作ったりしてるからな」

「「「え!ドゥエルフ君料理できたの?!」」」


 思いがけない台詞にリリーちゃんとお母さん以外の女性陣わたしたちが驚愕する。

 そんなサプライズもあったりしたけれども用意された食事を楽しくいただいて、食後のデザートとお茶を準備している間にお父さんとドゥエルフ君、エレンが隣室に消えるとそれぞれ色鮮やかな深紅の薔薇の花束を持ってきた。


「ラミエル。いつも俺を支えてくれてありがとな。だから俺は一生を懸けてお前を愛していくよ。この思い受け取ってくれるか?」

「リリー。私は貴女のことが本当に愛しくてたまらないのよ?だから一緒に幸せになりましょう?これからも永遠によろしくね」

「フェルリシア、そしてウィンテル、エレン。私はお前達みたいな素敵な女性に囲まれて毎日が幸せだよ。どうか私の思いを受け取ってくれないか」


 三者三様の想いのこもった言葉と共に贈られる薔薇の花束を胸に目尻にじんわりと熱いものがこみ上げてくる。リリーちゃんに至ってはポロポロと涙をこぼして満面に幸せさを溢れさせている。


「じゃあ、私からドゥエルフには……これ。魔法金属加工理論の本、欲しかったのでしょう?ユールシアの神殿から送って貰えたの。間に合ってよかったわ」

「私からエレンちゃんにはこのノート。私のお料理ノートを全部写したの。これ見ながら2人で今度一緒にお料理しようよ」

「はい、あなた。私からウィルには…………今まで私たちが送りあったラブレターを本に纏めてみたの。これからもラブラブでいきましょう?」

「お父さん。私からはこれ…………古代精霊語で書かれた絵本、かな。今日地下30階から見つけてきたの。受け取って?」


 ドゥエルフ君はラミエルちゃんが神殿のツテを使ってまで取り寄せてくれた分厚い本を大事そうに受け取って凄く嬉しそうに笑っているし、エレンはエレンでリリーちゃんの指が膨大な量の書き写しで痛んでいるのを見つけて感涙に咽びながらその指を両手でそっと押し包んで癒しの言葉を掛けている。

 お父さんはお母さんの差し出した記念本に恥ずかしさで、そして幸せな気持ちで赤面して。お母さんを抱き寄せると私たちの目の前でこちらが赤面するような熱いキスを交わしていた。そして……


「ウィンテル…………おまえ、無茶はしないって言ってたのにまたこんな無茶なことをするなんて困った奴だな。けれども、お前の気持ちは。こんな無茶をしてまで取ってきてくれたその思いは。とても…………」

「……嬉しいよ」


 そっと優しく私を抱きしめてくれるお父さん。とても大きくて温かくて、優しさの溢れる幸せな空間に私はいつまでもこの日常が続いて欲しいと心の底から願うのであった。

日本の本屋さん、お花屋さんとタッグ組んでイベント起こしてキャンペーン張りましょうよ><せっかくの本の日なのに勿体ない!

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