表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Geister Kontinent   精霊大陸での日常  作者: うぃんてる
第一部 賢者の学院編
101/234

90.フローリス侯爵家

「陛下、宰相殿が参っておりますが」

「む、この時間にか。珍しいの……よい、通せ」


 夕刻を過ぎコッタン王宮の奥の宮、国王夫妻が居を構える屋敷に宰相の来訪を告げる知らせが届き国王の寛ぐ部屋に通された宰相の顔は苦渋に満ちていた。


「陛下。スティリーフ王太子がまたやらかしてくれましたぞ」

「またか」

「またです」

「今度は何をやったのだ、愚息は」

「ウィシュメリアにいる我が娘、ミランダからガイウスを通して苦情が来ましてな。殿下が大変失礼な書状を寄越したと。……よりによってウィンター伯爵家令嬢ウィンテル殿に」

「…………内容は?」

「ここに」


 宰相が差し出した紙面をざっと流し読みした国王は深いため息を吐き出すと隣に居合わせていた王妃に紙面を渡して頭を抱える。


「あなた。これはさすがに……」

「宰相、これはサーレントの奴には漏れておるかの?」

「いいえ。ウィンテル殿は我が娘に全てを一任されたようで、再び殿下がやらかさなければなんとかなるとは思いますが」

「なれば早いほうが良いな。スティリーフをここに呼べ」

「はっ」


 しばらくの後に国王夫妻の居室に呼び出されたスティリーフを見た国王は眉をひそめる。


「見事な手形であるな、スティリーフよ」

「…………何か私に用事と伺いましたが、父上」

「あんまりフィナちゃんに心配かけるんじゃありませんよ?スティリーフ」

「申し訳ありません。今急ぎの書状を書いておりまして…………」

「…………ウィンター伯爵家令嬢への謝罪文かの?」

「!?な、なぜそれを。あっ」

「今宵はじっくりと話し合うべきであろうな?スティリーフよ」

「……はい」




***


 一方、同刻。ウィンター伯爵家。

 夕食を終えたウィンテルは普段ならそのまま自室へ戻るところをそのまま食堂に残り、キッチンでフェルリシアが洗い物をするのを眺めながらお茶を飲みつつフェルリシアと他愛ない雑談をしていた。その様子を見ていたエレン達は何か話したい事でもあるのだろうと無言で頷きあって早々にそれぞれの部屋へと戻り、ウィリアムも愛娘にまだまだ万全じゃないんだから無理はするなよ?と言い置いて自分の書斎へと引っ込んでいくのだった。


「はい、お待たせ。それで何を相談したいのかしら?ウィンテル」

『ん。ミランダちゃんとフィナリアさんの事、かな』

「フィナリア、さん?」

『あっ……と、コッタンの貴族でフローリス侯爵家のお嬢さんでミランダちゃんのお友達の子だよ』


 私の悪い癖だ。特に最近は簡単な情報でお互いに言いたい事が通じあえるような状態だったから。お母さんはそんな私の表情を見て相変わらずね、と笑っている。


『んとね、そのフィナリアさんがミランダちゃんに会いたいらしいのだけれど、どうも最近向こうは治安が悪いらしいの。ミランダちゃんはミランダちゃんで、会いたいけれど勉強をしにこっちに来てるのにそれをほっぽりだして戻る訳には行かないって』

「なるほど、ね。それで?」

『あくまでも私の推測なんだけれども、フィナリアさんとミランダちゃんはミランダちゃんがウィシュメリアに来る際になんらかの約束事をしているんじゃないかなと思うの。多分お互いが望まない限りは会わないみたいな』

「ウィンテルは二人を会わせてあげたいの?」


 うん。と私は小さく頷いた。あまりにも遠すぎて意志疎通ができないだけで王太子が暴走してしまうくらいフィナリアさんは襲撃以降心細くなっているんじゃないかな。ただミランダちゃんの邪魔をするわけにはいかないからじっと我慢しているんだと思うんだ。ミランダちゃんもああは言っていたけど多分心配はしていると思う。簡単に勉強を中断したら怒られるんじゃないかって遠慮してる感じは何となくしてるから。


『……ただ、私の手段は場所や距離の制限があるから無理だし、アイシャちゃんは同時に複数人移動させられないし、多分コッタンは知らないんじゃないかなと思うんだよね』

「…………そうねぇ。ミーシャにも久しぶりに会いたいし、お互いが納得するという条件でなら手伝ってもいいわよ?」

『ミーシャ、さん?』

「あらいけない。私もやってしまったわね。ミーシャはね、そのフィナリアさんのお母さんよ。ギルドギダンに赴いた時にお世話になってお友達になったのよ」

『…………驚いたよ』


 今夜はもう遅いから明日にでも遊びに行ってくるから食事とかはよろしく、と笑うお母さんに私は頭を下げるのだった。


 そして次の日の朝、朝食を終えたフェルリシアは腰にマジックバックパックのみを装備して見送りの夫ウィリアムとウィンテルの前に立ち転移門ゲートの魔法を唱え、


「それじゃ明日までには帰るからよろしくね、ウィル」

「ああ、ミーシャとマインツによろしくな。たまにはゆっくりしておいで」

『お母さん、気を付けて。向こうは…………』

「大丈夫よ、直接庭先にでるから。今くらいの季節ならギリギリまだミーシャは庭弄りしてるはずだしね」


 そういって転移門ゲートをまるで散歩でも行くかのように潜り抜けて行ったお母さんを見送ったあとお父さんに気になった事を聞いてみた。


『ねぇお父さん。コッタンは貴族の、しかも侯爵くらいの人って庭弄りなんてするの?』

「普通はしないな。だが、お母さんの親友になるくらいの人だからな、ミーシャは。庭弄りくらいはするさ」

『その、マインツさんは怒らないの?』

「全く。あの国では珍しい恋愛結婚だからな、あいつらは。ま、色々あったのさ……ほれ、もう布団に戻れ」


***


「やっほー、ミーシャ。お久しぶりね?元気かしら」

「もぅっいきなりゲートが出現するから誰かと思ったじゃない、フェル。マインツは元気よ。娘はちょっと、ね」

「襲われたんですってね。ま、生きてるなら大丈夫よ。なんとかなるわ」

「そうね。それにしてもどうしたの、急に。あ、中に入って?お茶でも飲みましょう」


 ミーシャはフェルリシアを庭に面した居間へと招き入れ適当に座って?と言いキッチンへと消えていくのをフェルリシアは見送り言われた通りに庭の様子がよく見える椅子に腰掛ける。

 ミーシャもフェルリシアと同じように家事はなるべく自分でというスタンスを相変わらず貫いているようで、侯爵家というには寂しいくらいの使用人しかいないようだった。


「……フェル?どうかした?」

「んー?相変わらず庭の手入れはしっかりしてるわね、って。うちは庭師さんとウィル任せだわ」

「まぁね。こっちは冬が長いから。だから手入れ出来る間は徹底して楽しみたいじゃない?」


 ところで、とフェルリシアは話題を切り替えてそして声を落としてミーシャに問い質す。


「この屋敷さ、なんでこんなに物々しいのよ。貴女とマインツがいるのに必要なくない?」

「私たちは断ったのよ。過剰だしいざというとき邪魔だからって。そしたら王太子殿下が勝手に敷地外に配置していったのよ……」

「過保護、ねぇ。そんなに治安悪いの?」

「悪いと言えば悪いけど、ここまでするほどじゃないわ。第一娘はしばらく屋敷から出る予定はないしね」


 娘の心配は全くしていない、と言うミーシャの表情は明るいとは言えずむしろ別の心配があるようで曇ったままだった。フェルリシアも大体察しは付いていたがそれでも敢えて尋ねることにした。


「ミーシャ。貴女の心配事、王太子殿下の事じゃないの?娘を嫁がせて本当にいいのか迷っているんじゃないの?」

「…………最近の殿下を見ているとね。フィナリアが襲われて心配するのは分かるのだけど、それだけに気がいってしまってその他が疎かになってしまうようならそれはフィナリアが原因で王国が傾く可能性を想像してしまうのよ」


 それは王国にとっても国民にとっても、そしてフィナリアにとっても不幸なんじゃないかって思うのよ。とミーシャは深いため息を吐く。時々、政務の合間に見舞いに来るなら理解できる。けれどもほぼ毎日のように来るのは流石にちょっとおかしいわ、と言うミーシャにフェルリシアは重症ねぇ、と苦笑するほかなかった。


「ねぇ、ミーシャ。提案があるのだけど……聞くだけ聞いてみる気はある?」

「フェルの提案なら、ね」

「半分は私の長女の提案だけどね。フィナちゃん、うちで預かろうか?」

「え?」

「うちなら防備は全く問題ないし、うざったい王太子からも離れられるし、ミランダさんもフィナちゃんといつでも会えるようになるし、屋敷の外の警護も必要なくなるわ。どう?」

「…………そうね、フィナリアに聞いてみるわ。本人の意志が大事だもの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ