episode4
このゲーム2日目の朝。
「ふわぁぁ~」
今何時だ?このゲームメニューもシステムウィンドウもないんだろうか。
スゲー不便なんだけど…
「お、おはよっすカイガ」
「コータ、起きたのか」
「まーな、ヒメたちはおきたかな?」
ヒメとイズミは当然別の部屋に泊まっている。まあ隣の部屋だけど。
「俺見てくるわ」
「はいよー」
廊下に出て隣のドアをノックする。
「ヒメー、イズミー、起きてるかー?」
「カ、カイガ!?起きてるけど…!」
「そうか、入るぞー」
「ちょ、ちょっとまっ!」
ドアをあけると十分に振りかぶられ勢いにのったイスが顔面にヒットした。
「グハァッ!」
あまりの威力に1メートルほど吹っ飛び、廊下の壁に激突した。
「いっつ~、なんなんだ!?」
顔面と後頭部に激痛が走っている。これで「特に理由はない」とか言われたらさすがにキレるぞ。
「こっちのセリフよ!」
「へ?」
顔を上げるとイズミは下着姿だった、寝る時に装備を外したんだろうか。
「……あ」
というよりこの状況マズいんじゃ…
イズミは顔を真っ赤にしている。
「見るなーーー!!」
「わ、悪い!」
慌ててドアを閉める、これ以上ダメージを受けたくない!
「ヒメ!起きて!早く服着なさい!」
ドアの向こうでドタバタと音がする。
「なんか、悪い事したかな…」
悪い事どころじゃない、もしここがゲームじゃ無かったらマジ告訴で豚箱行きだっただろう。
と内心ゾッとしていると、イズミ達の部屋の隣のドアから、人が出てきた。
「なんだぁー?朝っぱらからうるせーな」
「あ、すいません」
二十代後半くらいの男だ、髪は短髪の黒。
ってこの宿屋にいるってことは!
「あの、もしかしてプレイヤーですか?」
「もしかしなくてもプレイヤーだ、お前もだろ?」
「はい、俺達昨日このゲームに呼ばれて、分からないことが多すぎて困ってるんです。このゲームについて教えてもらえますか?」
「敬語はいらねーよ。よしわかった!そーいうことなら協力してやる」
「本当か!ありがとう!」
「ただし!」
「ただし?」
「さっき騒いでた理由を教えろ」
「…………」
一方イズミ達は…
「まったく!カイガがあんな変態だったなんて!」
「ま、まあまあイズミちゃん、カイガくんだってわざとじゃないだし…そんなに怒らなくてもいいんじゃ」
イズミにしてみれば下着姿を見られたのだ、怒らない方が難しいだろう。
「~っ、そうだけど…やっぱりあとで説教ね!」
「あう、カイガくん大変だね…」
「大変じゃないわ、変態よ」
「まだ言ってる…」
二人が服も装備もしっかり付けて部屋を出ると…
「ブハハハハ!寝起きの下着姿を拝むたぁ、たいしたラッキースケベだなぁカイガ!」
「笑い事じゃねえよラウル」
男二人が廊下に座って話し込んでいた。
「………あんた何してんの?ていうかこの人誰?」
「おお、イズミ、ヒメ、紹介するよ、この人はラウル!俺達にこのゲームについてレクチャーしてくれる人だ」
「ども!よろしくな!」
「はあ、よろしく…」
「よろしくお願いします」
「さて、二人も来たことだし、ラウル、頼むよ」
「おう、じゃ、移動するぞ」
なぜか二度寝していたコータを起こして宿屋を出る、昨日はすぐ宿屋に入ったからあまり見て無かったけど、街は見事なものだった。
西洋風の街は噴水や鉄塔などがあり、広さもなかなかだ、半径一キロといったところだろう。
ラウルは俺達を演習場という場所に連れてきた。
「ラウル、そういやこの街、名前あるのか?」
「ローズベルグだ、ここは最南端の街だな」
最南端か、始まりの街ってところかな。
「さて、レクチャーを始めるぞ、何から聞きたいんだ?」
「そうだな、まずこのゲームってメニューとかないのか?」
「あるぞ、カイガ、頭でメニューウィンドウが出るイメージをしながら指を鳴らしてみろ」
「こうか?」
言われた通りに指を鳴らすと、目の前にメニューウィンドウが出てきた。
「おお!」
「スゲー!指鳴らすと出てくるのか!」
「違うぞ」
「へ?」
「メニューウィンドウはイメージと指定した動作で出るように設定出来るんだ。ちなみに一度設定した動作は変えられないからな」
「おい、じゃあ俺もう変えられねえじゃん」
「ん、まあそうだな、気にするな」
別にこだわりがあるわけじゃないけど…納得がいかん!
「あたしはどうしようかな」
「俺も~」
「わたしは簡単なのがいいですね」
みんな楽しそうに考えているな~、羨ましいわけじゃないけど。
「深く考えずに、使い易いのにするといいぞ」
ラウルのこのアドバイスでそれぞれの呼び出しアクションが決まった。
コータは右手を左から右へ動かす。
イズミは手を叩く。
ヒメは両手を合わせる。
「よし、全員決まったな、次のステップだ」
「次のステップ?」
「メニューを見てみろ、[ステータス]のところに[スキル]があるはずだ」
ウィンドウの[ステータス]をタッチすると、確かに[スキル]のボタンがあった。
「そのスキルが、このゲームでの俺達の最大の武器だ。」
「なるほど」
「わたしたちの魔法もスキルなんですか?」
「そうだな、スキルの使用には自分自身の精神力を使うんだ」
MPの代わりのようなものかな?
「精神力って使い過ぎるとどうなるんだ?」
「集中力が低下したり、最悪気絶するな」
「それってあたしやヒメみたいな魔法使いは不利なんじゃ…」
確かに魔法以外で戦うのが難しい魔法使いには、これはかなりのリスクだ。
「うむ、その点は解決法が何個かある。」
ラウルによると、元々魔法使いは精神力を重点的に強化されているらしい。
他の方法は、レベルを上げる、戦士タイプがメインになって魔法を使う回数を減らすとかがあるそうだ。
「スキルの使用はボイスコマンドだ、まあ最初は必殺技叫ぶ痛い子みたいで恥ずかしいかもしれんが、慣れろ」
「んなもん気にしねーよ!」
「いや、あたしちょっと気にする…」
「わたしも少し恥ずかしいです…」
「まあ、そこは頑張れ。スキルボタンを押すと今使えるスキルがわかるからな、基本はレベルアップで新しいスキルを習得出来る」
「わかった」
「他のパーティーやギルドの機能はカイガがわかるだろ、とりあえず全員のスキルを試しに使ってみろ」
「おう」
「オッケー!」
「わかったわ」
「わかりました」
どんなスキルかわからないから、ラウルと1対1で隣の訓練所で試すことにした。
コータ、イズミ、ヒメ、三人のスキルが試し終わって、カイガを待っていると…
ドオオォォォン!と破壊音が響いた。
「な、なんだぁ!?」
「訓練所からよ!」
「カイガくん大丈夫かな!?」
三人が走って訓練所に入るとそこには剣を持ったカイガと、唖然としたラウルがいた。
そして恐らくカイガのスキルで、訓練所が半分吹き飛んでいた。
「……………なにこれ!?」