おかしなアタシ
こんな状態のまま、
真っ直ぐ家に帰れるワケがない。
カナとマネを拉致って、
無理矢理呑みに付き合わす。
笑
とにかく誰かに、
聞いてもらいたい。
とにかく誰かに、
話したくて仕方ない。
やっと巡り会えた、
向日葵おじさんの話。
あの日アタシは、
何に酔っていた?
あの時はまだ、
気づいていなかったのか、
気づかないふりを、
していただけなのか。
どちらも当たっているようで、
どちらでもナイような…
ただ一つ、
これだけはハッキリ言える。
酒にではナイ。
と。
アッタマ痛てぇ…
毎度のコトながら、
どうやって帰って来たのか…
思い出すのも面倒だ。
苦笑
フラつく足で、
冷蔵庫を開け、
ミネをガブ飲み。
「ブハ~!!」
干からびた大地に、
染み渡る雨のごとし。
つーか、
下品な女だ。
苦笑
うーん…
気持ち悪ぃ…
たまらずソファーに倒れ込む。
行き倒れか。
笑
目を閉じると、
蘇る昨日…
あ!
名刺…
飛び起きて、
ヴィトンを逆さに振る。
財布、
手帳、
ポーチ、
…
あれ?
ない…
コート!
夢中でポケットをまさぐる。
泥棒か。
笑
あった…
手にとって、
再びソファへ。
何分見てたっけな…
藤城 暁海
フジシロ…
アカツキ…
ウミ…?
何て読むんだろ?
会社は、
東京か…
何の会社?
何の仕事?
気になる…
何もかもが気になって、
仕方がない。
思い返せば昨日、
彼の素性に繋がる話は、
何ひとつしていない。
男女を問わず誰かについて、
『知りたい』
と、
そう思ったのは、
生まれて初めてだった。
何してんだろ、今。
仕事中かな。
東京の人なのに、
なぜ昨日札幌にいたのだろう。
アタシのアタマはもう、
彼について知りたいコトだらけ。
電話したいな…
名刺には、
携帯番号も載っている。
でも、
仕事中だったら迷惑だし…
てか、
何気遣ってんだろアタシ。
何でこんなに、
ソワソワしてる?
完全に、
いつものアタシじゃない。
とりあえず一本つけよ。
重いカラダを引きずって、
テーブルの上のマルメンに手を伸ばす。
フゥ~…
何時もより、
長く吸い込んだのは、
完全に、
コイツのせいだ。
よし。
タバコをもみ消し、
名刺の番号にダイヤルした。
男にかけた電話で、
あれほど胸がドキドキしたのは、
後にも先にも、
この時しか、
ナイ。
「はい…」
5コール目を待たず、
受話器から昨日の声。
「あ、海です。ゼブラの…」
「え?誰?」
まさかの返事。
「え…?」
一瞬言葉を失った。
覚えてない?
つーかアタシ、
番号間違えてる?
軽くパニクって、
「え、あ、≠$∞¢\×…」
言葉が出ない。
すると…
「ブハハハハ!!!!」
確かに、
聞き覚えのある笑い声。
「何パニクってんだオマエ」
間違いない。
彼だ。
「も~!!!!
完全に違う人にかけたと思ったでしょ!!
バカ!!!!」
怒ってるアタシの声に、
尚も大笑いして彼は言う。
「で?
どうしたよ?
もう会いたくなったのか?」
「そうそう!
もうね~、
会いたくて会いたくて仕方ないから電話したの~!」
こうなったら、
アタシもとことん、
やってやる。
ススキノナンバークラスを、
ナメんじゃないわよ。
笑
「ブハハハハ!!
そかそか。
で、何だよ?
本気でこんな昼間から営業か?」
「そうそう、
仕事熱心だからアタシ~、
って、違うよ!
昨日…
どうして最初に…」
そう言いかけた時、
「ゴメン、キャッチだ。
オマエ、今日も店か?」
「え?あ、うん…」
「そうか…悪いな」
ツーッ…
ツーッ…
ツーッ…
電話が切れた時の音なんて、
今までに何回、
いや何千回、
聞いてきただろう。
こんなにも、
物悲しい音だった?
僅か3分にも満たない、
彼との通話時間。
一番伝えたかったコトが、
伝えきれずに切れた電話。
もう少し。
いや…、
もっと。
いや…、
もっともっともっと。
ずーっと。
話していたかった。
今日も店か?
と、
そう聞いてきたのは何故?
今日…、
逢えるの?
ねぇ…。
知らず知らず、
期待してる…
ホント…
どうしちゃったんだろう。
アタシ…




