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【完結】不倫の神様|結  作者: 天狗


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LOG.6|踏み絵|Trial of Love






ミカに、

「覗いたら殺す」

と釘を刺されて、



ミカのシャワータイムを

覗かずに我慢して

乗り切った俺。





我慢した俺を見て、


ミカは

とっても嬉しそうだった。




ニコニコしながら

ベッドに向かうミカ。







ミカ

「ここに寝て」



ベッドの真ん中を

ポフポフと叩くミカ。


言われたとおりに

俺は仰向けになって寝転んだ。





ミカは俺の上に寝そべり、

身体全身を預けてくる。


ミカが

掛け布団みたいで可愛い。






ミカ

「体貸して~」

「アタシここでYouTube見るね」






そう言ってミカは

俺の体の上でスマホタイムが始まった。



ゼロ距離で、

"ミカの香り"を浴びている。


あまりにも気持ちよすぎて、

白目向きそうになった。





いきなり、

首元にふわりと唇を近づけてくる。

触れてるか触れてないかのギリギリ。






シン

「んぎゃ!」






全身が跳ねた。






ミカ

「弱いんだ、そこ?」

「ふふ…」






バスローブの胸元がゆるい…!




色々とギリギリ…!




心臓が死ぬ…!







地獄の焦らしが、

3時間続いた。



あと1時間生き残れば...!


このデスゲームも終わって...!


ミカと永遠に会える...!



ミカはスマホを見ながら、

抱きついて、



そのついでに、

首や耳をほんの少し噛む。




それに苦しむ俺を見て...






ミカ

「……フフ♡」







心底、嬉しそうに微笑む。



痺れるな、ミカ。



やっぱりお前は、

全てが、俺のツボだ。









ーーー








あと30分。




ミカは、

チラッと残り時間を確認した後、


YouTubeに飽きたのか、

突然スマホをポイッと遠くへ投げた。



そしてミカは

四つん這いになり、俺の上に跨った。



俺の目を、

ゼロ距離で真っ直ぐ見つめる。




ミカ

「ねぇ、今からアタシが言うこと…」

「全部ウソね」

「シン、大好きよ」

「アタシをめちゃくちゃにして…?」




そう言ってミカは

唇が触れるギリギリで、

ピタッと寸止めした。





シン

「..........っ!」







俺は この時、

走馬灯のように思考が巡った。




そもそも、だけど…






俺はミカが欲しかった。





この"欲しい"が、





体、なのか



心、なのか



よくわかってなかった。






でも

間違いなく好きではある。






つまり、




つまり、だ。






ここの一発で終わっても…








別にいいんじゃね…!?




それにミカのことだから


笑って許してくれるっしょ!




脳がゴーサインを出した。






もう無理だ。


そして、

最後の一線が折れた。






ミカのほっぺを掴み、

力任せにキスしまくった。








その瞬間、





ミカの目が変わった。


猫のように可愛かった目が、

一気に感情を消し、

冷たいガラスみたいな目になる。









ミカ

「あーあ」

「さよなら」










ミカの、舌打ちが、聞こえた。






シン

「あ、ちょ、」

「そんなつもりじゃ…」





どうやら間違えた。


全然笑ってくれなかった。


思ったより深刻なミスだ。






ミカは立ち上がり、

バスローブを落とし、

全裸になった。







ミカ

「もう会わないから好きにして」

「ほら、早く」








無駄な肉のない、彫刻のような、

完璧な体が目の前にあって、

我慢なんてできるわけがなかった。


俺は何も言わず飛びかかった。






けれどミカは…


人形のようだった。




声を出さない。

喜ばない。

怒らない。

求めない。






ただ遠くを見るような目をしたまま、




天井を眺め、


俺に合わせて、


揺れる、


だけ。









涙が、


目尻に、少し、浮かんでいた。

















ーーー









そして俺は、

ミカに飲み込まれたまま、果てた。




世界が、急に止まった。


無音の時間が流れる。









ミカ

「……どいてくれる?」

「重いんだけど」







シン

「ご…!ごめ…!」







俺は急いで賢者タイムの体を

ガバッと起こした。





俺は肩で息をしていた。

理性は崩壊したままだった。


俺だけが肩で息をしていた。




ミカは、

まったく違う世界にいた。





ミカはベッドに座り直し、

バスローブの紐を結び直した。




そこからミカは

勢いよくスクッと立ち上がり、


足早に

バッグからメイクポーチを取り出す。





…思えば、


さっきまでミカは、

化粧なんてほとんどしていなかった。


ただのキャミ姿、

髪も自然に垂らして、


それでも

“完成されてる”

みたいな美しさで。






ミカは鏡の前に座り、

淡々と、機械のように化粧を始めた。


ファンデ。ライン。

ハイライト。リップ。


ひとつ塗るたびに、

ミカの顔が“別の誰か”になっていく。


最後に香水を手に取り、






シュッ。シュッ。シュッ。







あたりに広がる強烈な甘い香り。


ホテルの空気が

全部その匂いで塗り潰された。



"ミカの香り" は完全に消えた。




ミカは鏡越しに俺を見る。





暗い。

冷たい。

底がない。




ミカは立ち上がり、

ワンピに着替ながら、


鏡を見たまま目も合わせず、

こう言った。









「よかったね、モデル抱けて」









声が平坦すぎて、逆に刺さる。







ミカはスマホを取り出し、

淡々とホーム画面を開いた。





ミカ

「じゃ、LINE消しとくね」






シン

「ま、待ってくれ、」

「ミカ、たのむ」





ミカ

「嫌だ」

「送迎はして?」

「早く、ミカを…」

「元の場所に戻して」






“アタシ”じゃなかった。

語尾もテンションも違う。


もう完全に、

俺の知ってるミカじゃなかった。


バッグを肩にかけ、

香水の匂いをまとったミカが

ドアの前に立つ。






ミカ

「ここに長くいたくない」

「さっさと来てくれる?」






冷たすぎて、震えた。


廊下を歩くミカの背中は、

まるで“知らない他人”だった。


エレベーターに乗り込んでも話さない。





車に乗っても、

視線はずっと外に向いたまま。


行きと違って、

足は、一切パタパタしていない。







ーーー







パーキングに到着し、

ミカはすぐに車から降りた。


そして、ぽつりと言った。






ミカ

「……じゃ」







それだけ。


そしてミカは

パーキングの暗闇に消えた。


残された香水だけが座席に漂っていた。




その香りが

とにかく嫌で


すぐにiQOSで中和した。





気づけば、

もう1箱無くなった。



1本も無くなってから



ようやく帰る気になれた。




あの日、俺は完全に壊れた。









ーーー








数日後…




施術中でも、

港で笑ったあの横顔ばかり浮かんだ。





マリナ

「…すけど」

「どうします?」

「…オーナー!」

「ねぇ!聞いてる!?」





シン

「え、あ!」

「なんだっけ?」

「ごめんごめん」




マリナ

「もー!」

「呑みすぎっすよ!」

「ちゃんとしてください!」




シン

「ごめんごめん…」











仕事を終えて、

店を閉めて、

夜風の中でひとりになった時。




いてもたってもいられず…




マスターの店に電話をかけた。






シン

『やっほ』

『ミカさ、最近来てる?』





マスター

『お、なんだシンか』

『ミカ、来てねぇぞ?』

『撮影の日程は決まったんだろ?』





シン

『あぁ、うん...まぁ...』

『決まって…る』







マスター

『なんだよ…?』

『撮影前にまた呑みたいってか?』





シン

『いや、まぁ……』

『そんなとこだよ』





マスター

『うちの店で会うならいいけどよ』

『二人で会うなよ?』

『約束は守れよ?』





シン

『あー…うん』

『わかってるよ』

『またな、マスター』






マスター

『おい、いいのか?』

『俺から連絡してみるか?』





シン

『あぁ、いや、いいんだ』

『大丈夫…』

『ホントに深い意味はないんだ』

『なんとなく、撮影前にさ、』

『改めて呑んだ方がいいのかなって』

『そう思っただけだよ』





マスター

『そうか、またな』

『またいつでも呑みにきてくれよ』






電話を切った瞬間、

肩に岩が乗ったように

ズシンと重くなった。



わりぃ…マスター。


全部言えるはずがない…。






チクショー。



たかが小娘1匹に、

こんな弱体化するとは。




心底ムカつくぜ。







通話が終わったタイミングで、

LINEが“ポン”と鳴った。




画面を見ると、

リュウトだった。




リュウト

『仕事やめちった』

『近々遊びいくわー』




あのバカ…

また辞めたのか…



リュウトは

すぐに仕事を辞める。


昔っから変わらない…。



と、思ってスマホを閉じたら、


続けてポンと通知が鳴いた。






うっせぇな、ニート。




もう分かったっつーの!





もう一度、開く。



…違う、リュウトじゃない。



消えたはずのLINEが

ひとつだけ復活していた。



いや…


よく見たら、

“復活”じゃない。




新規トーク。

でも名前はミカのまま。


開くと、

数行のメッセージ。










ミカ

『インスタ撮影の件ですが、』

『こちら“お仕事”ですので伺います』

『日程は3月20日でよろしいでしょうか』













絵文字もない。

呼び捨てもない。

“わんちゃん” もない。





でも…来るんだ。


仕事だけは切らない。

でも感情は切る。

そのミカの矛盾した距離感。




でもそんなことはどうでもいい。








シン

『はい』

『その日で大丈夫です』

『よろしくお願いいたします』







既読だけつき、返信なし。


そして、撮影の日が、近づく。




その"3月20日"は


俺が思っていた方向とは

全く違う方向へ向かう。





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