LOG.3|ミカ女王様|Queen Mika
俺と、現役モデルと、不倫と…。
こんな人生で、マトモは無理。
たった一度の出会いで、人生が壊れた。
これは、その記録。
————
ミカと
酔いつぶれたリュウトと
3人…というか
2人と0.5人で楽しく飲み明かした。
朝方に、バーを出た。
代行が運転する車の中で、
俺はずっとスマホを握りしめていた。
『さっきはありがとうございました』
と送った。
送ってから
既読がついてないか
何度も確認していた。
リュウト
「シン」
シン
「どうした?」
「吐くのか?」
「車の中はマジで勘弁しろ」
リュウト
「違うよ…」
「楽しかったなぁ…」
「また3人で呑もうぜ…」
あきれた。
同級生だけど、
年下みたいに可愛いヤツだ。
シン
「そうだな」
「来週もこっち来いよ」
「遠くまでありがとな」
俺の地元は
ここから2時間。
リュウトは
2時間かけて、
週末に遊びに来てくれる。
ポンコツだけど、いい奴だ。
リュウト
「来週も…くるぜ」
「呑むぞぉ…」
シン
「そうだな」
「またテキーラ欲しいか?」
リュウト
「いらねーよバカ…」
「うぷ」
シン
「!」
代行
「と、止まりますか!?」
シン
「すぐに止まってくれ!」
オロロロロロ
シン
「あぁ~!!」
リュウト、
俺の車でリバース。
前言撤回。
俺はコイツが嫌いだ。
心底憎い、
二度と一緒に呑むもんか!
そんなこんなで
リュウトをビジホへ送り届けて
なんとか、帰宅。
既読はつかない。
たぶん今日、返信は来ない。
そう思いながら風呂に入り、
ベッドに倒れ込み
気絶するように眠った。
ーーー
翌朝、スマホが震えた。
ミカからのLINEだった。
ミカ
『昨日はありがとうございました!』
『飲みすぎて顔むくむくです笑』
『シンさん…記憶ありますか?』
ゼロ秒既読で返信した。
シン
『ありますあります!』
『俺…緊張しすぎて…』
『すみません…』
嘘だ。
呑みすぎたから記憶が無い。
すぐに返事が来た。
ミカ
『いいのいいの〜』
『アタシも酔ってたし笑』
『それより、整骨院てどんな感じ?』
『撮影の前に遊び行きたい!』
来た。
“あの軽さの甘い誘惑”
がLINEでも炸裂している。
シン
『え、見に来るの?』
『全然いいですよ!』
いやホントは、
全然、よくない。
バカが…!
2人きりだぞ…!
大チャンス。
ミカ
『わーい!行きたい行きたい!』
『もちろんお金払うよ?』
『お客さんとして行ってもいい〜?』
シン
『いや無料で大丈夫です!』
『モデルのお礼としてさ…!』
ミカ
『じゃあ…』
『お客さんとして行くのはナシね?』
『フフ、じゃあ普通に遊びに行く♡』
めちゃくちゃ口説いてやる!
ーーー
ミカはLINEのあと、
本当に店に来た。
ミカ
「あぅ~腰気持ちいい~…」
マリナ
「めっちゃ固いですね」
「スマホ触りすぎですよ!」
タイミング的に、
担当はスタッフのマリナだった。
腰の施術ってことは…
モデルのくびれが見れたのに…
チクショー!
なんで俺はこんな時に
むさ苦しいオッサ、いや!
危ない危ない。
お客様の悪口言うとこだったぜ。
マリナ
「少々お待ちくださ~い」
シャッ!
突然、
仕切りのカーテンが開いた。
シン
「え?どした?」
マリナ
「しっ」
「小声で話して…」
「仕上げの整体なんすけど…」
「私と代わってください」
シン
「はぁ?」
「何かあったのか?」
マリナ
「違いますよ…」
「あのモデルさん…」
「オーナーと喋りたいんですよ?」
「だから来たんです」
「なんで平然と任せるんですか」
「可哀想じゃないですか…!」
シン
「ほう…」
「マリナお前…」
「給料アップな」
マリナ
「バカ言ってないで、」
「早く交代してください」
マリナは
俺が担当していたオッサ、
いや!
お兄さんに話しかけた。
マリナ
「ここからは代わりますね~」
「電気失礼しま~す」
俺は急いで
ミカの個室に向かった。
シャッ!
ミカを早く見たくて
仕切りのカーテンを
つい思いっきり開けた。
ミカ
「あ!いた!」
「うつ伏せ待機長いよ~」
うひょー!
うつ伏せのミカ様ー!
くびれのラインが
お美しいですわ、姫!
シン
「ごめんごめん」
「仕上げの整体しますね」
俺は
鼻の穴をデカくしながら
デレデレで整体した。
そして整体中は
この前の呑み会の話になり、
リュウトのリバースで笑い、
ふと、ミカが聞いてきた。
ミカ
「ねぇ、シンさん」
「どうして整骨院やってるの?」
「整骨院って楽しいの?」
「正直、全然似合ってない!」
「見た目が先生っぽくないもん!」
シン
「はは、そうだよな」
「よく、職人系と間違われるよ」
「うーん…」
「元々は俺ね…」
「医者になりたかったんだよ」
ミカ
「へぇ!」
「全然イメージできない!」
シン
「でもな、なれなかった」
「医学部コースなんて、」
「俺には無理だった…」
「でも、どんな形でもいいから」
「街や人に役立ちたかったんだ」
「今までの行いからしても、さ」
「決して真面目では無かったから」
「あとは…親父が金で苦労したから」
「自分は苦労したくなかったのもある」
「医者だとホラ、ガッポリだろ?」
「まぁ、でも…カルマの精算だな」
ミカ
「ふぅ~ん…」
「かるまのせーさん?」
シン
「ぷ!はは!」
「難しかったかぁ?」
ミカ
「む~…」
ミカは拗ねて、
しばらく黙って、
整体を受けていた。
すると、突然、
ミカ
「ねぇ、シンさんって…」
「なんで彼女いないの?」
「こんなに優しいのに〜」
シン
「おい、なんで…あ」
「マスターが言いやがったな」
「…まぁ」
「なんでだろうな…」
「俺が聞きてーよ」
ミカはうつ伏せのまま、
足をパタパタさせながら言った。
ミカ
「アタシさ〜」
「彼氏いらないんだよね〜」
シン
「え、なんで?」
ミカ
「だって彼氏ってさぁ」
「自由が無くなるじゃん」
「束縛されたり、色々面倒でしょ?」
「形式ばった、あの関係値がイヤなの」
「だから彼氏になろうとする人は嫌い」
シン
「まぁ…確かに……」
ミカ
「アタシは犬がほしいの!」
シン
「……犬?」
「犬って犬?」
ミカ
「犬!わんちゃん!」
「ペットじゃなくて人間のわんちゃん!」
「言うことなんでも聞いてくれる…」
「アタシだけのわんちゃん♡」
「束縛しないし」
「裏切らないし」
「甘えてくれるし……」
「そんな、わんちゃんと暮らしたいの」
シン
「そ、そうなんだ……?」
ミカ…
お前まだ酔っ払ってんのか?
ミカ
「ミカのわんちゃん……」
「どっかにいないかなぁ〜♡」
わざとらしく言う。
その言い方はどこか寂しげで、
でも期待してるようにも見えた。
ーーー
施術が終わると、
ミカは気持ちよさそうに伸びをした。
ミカ
「めっちゃ腰スッキリした〜!」
「ありがとうシンさん〜!」
ちっ。
つい、
清楚に接客しちまった。
口説き忘れた。
シン
「無理すんなよ」
「安静にしてね」
ミカ
「うん!」
「またLINEするね?」
「無視しないでよ?」
「すぐ返信してね?」
シン
「あぁ、すぐに返すよ」
ミカ
「……違うでしょ?」
急に不安そうな顔を見せるミカ。
シン
「え?」
ミカ
「“わん” は?♡」
目が無くなるくらい、
満面の笑みで聞いてくる。
ミカの八重歯が可愛い。
でもな…そんな甘くねーぞ俺は。
ガキが…舐めんじゃねーぞ…!
俺は絶対に犬になんて、
シン
「わん」
成人男性、
人生初の 「わん」だった。
ミカ
「フフッ♡ 」
「よし、帰るね」
そう言って、
ミカは、
出口へ振り返ってドアの方へ向かう。
俺は、
その背中を見送りながら、
いいケツしてんなぁ…と、
ミカが美味しそうすぎて、
心でヨダレを垂らしていた。
ところが、
ドアの前でふいにミカが、
またこちらへ振り返った。
ミカ
「……あっ!」
なにかを思い出したように、
目を丸くして、
てててっと小走りで戻ってきた。
そのまま俺の胸にふわっと抱きつく。
シン
「…っ!」
ミカ
「胸板もふもふ〜♡」
「……これ、好き〜」
ベンチプレスばっかやってるから
胸板だけは自慢の胸板だ。
と、いうか…!
やっぱ、ミカって…!
いい匂い!
"ミカの香り"
で柔軟剤 販売してほしい!
2億でも買う!
ミカ
「落ち着く~…」
猫のように
スリスリするミカ。
だが、
急にパッと離れた。
シン
「…?」
「もう満足な、」
シャッ!
仕切りのカーテンが開く。
マリナ
「ありがとうございました~」
ほう。
マリナの見送りタイミングか。
危機察知能力が高いな、ミカ。
マリナ
「あら、モデルさんも終わり?」
ミカ
「終わりです!」
「ありがとうございました」
ミカが
こそっと耳打ちしてきた。
ミカ
「じゃ、またLINEするね」
「わんちゃん、すぐ返してね?」
シン
「わかった」
ミカ
「よし♡ またね〜」
ミカが
ドアを開けて出ていく瞬間、
急に寂しく感じた。
その日から、
俺の理性と性癖は
確実に侵食され始めた。




