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不倫の神様|結  作者: 天狗


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LOG.2|完璧美少女|Tequila

俺と、現役モデルと、不倫と…。


こんな人生で、マトモは無理。


たった一度の出会いで、人生が壊れた。


これは、その記録。

————






リュウトが吐いたゲロを

マスターと2人で掃除した。




なんとか、

ミカが来るまでに間に合った。





マスターのスマホが震えて、

通知音が鳴る。


そのたびに、

俺はビクッと肩を跳ねさせた。


楽しみすぎて、

完全に挙動不審だった。




マスター

「お、ミカ来るってさ」

「もうすぐ着くらしいぞ」




シン

「今から!?」

「平日の夜11時だぜ!?」

「おい!ホントに来るってよ!」

「聞いてんのかリュウト!」





リュウト

「よ゛がっだね゛…」




リュウトの体力ゲージは

赤く点滅していた。



だが俺には、

1ミリも関係ない話だ。



普通に、ひっぱたいた。




パシッ!




シン

「生き返れ!」

「モデルが来るぞ!」





マスター

「おい…死ぬぞ…」







マスターのスマホが震える。






マスター

「お!」

「そこで飲んでて、今解散したらしい」

「ナイスタイミングだったな」







血管が爆発しそうだった。



本当に来るんだな、

あんな美人が。




嬉しさで、

麦焼酎が生きてるみたいに震える。


氷がカラカラ鳴って恥ずかしい。





で…



生き返れ、リュウト。



ぶっちゃけ、

2人きりで会話はヤバい。



確実に惚れちまう。








シン

「リュウト!」

「ガチでお前起きろ!」

「ぶん殴、」






リュウトを叩き起こそうとした、


その時、







店の外、ドアの向こうから...


ハイヒールの

“コツ、コツ、コツ”

という音が近づいてくる。





そして


彼女がバーのドアを開けた瞬間、

店の空気が、変わった。







ーーー






黒ワンピのシルエットが完璧で、


スラッと伸びた脚と

スラッと伸びた長い茶髪が


反則級に綺麗で、


155cmと小柄なのに八頭身のスタイル。


猫みたいな可愛い目をしていて、

目は笑ってないのに口だけ微笑んでいる。


少し色黒でラテン系美人。


黒い宝石だった。






いろいろ破壊力が強すぎて、

俺は最初の一言すら出てこなかった。






シン

「あ…あぁ、あ!」




リュウト

「……」





パニックの俺と、

リュウトの死体。






あまりの賑やかっぷりに

小さくクスッと笑うミカ。






ミカ

「こんばんは」

「お隣、しつれい」






ミカはカウンターで

俺の横に座った。


フワッと、

いい香りがただよった。



何の香りでもない、"ミカの香り"



一瞬で、

記憶に刷り込まれた。







ミカ

「マスター、こんばんは」

「アタシ、いつもの」






マスター

「ありがとなミカ、きてくれて」

「こいつ、LINEで説明したやつ」

「シンっていうんだ」

「と…死体がリュウトだ」






そう言いながら

シャンディガフを出すマスター。






ミカ

「はじめまして、ミカです」

「モデル名はメイでやってます」





小さくチンッと乾杯した。





ミカ

「お店広告のモデル…」

「私でよかったんですか?」






なんだか、

都内の一流キャバクラにきた気分だ。


油断すると

”テキーラ観覧車” を注文しちまいそうだ。






シン

「も、もちろん!」

「もちろんですとも!」

「いや~…ね!ホント」

「ははは…」






脳に酸素が回らない。



パニクった俺は、


反射的に、

iQOS(電子タバコ)をくわえた。



頼むリュウト、起きろ。



俺はカウンターの下で

リュウトの死体をつねった。



起きない…。









ミカ

「ねぇ……」

「さっきから固すぎですよ!」

「ね、インスタの撮影ってさ、」

「アタシって何すればいいの?」

「セリフとかいるの?」






シン

「いや…まだ…そこまで…あの」

「にしてもねぇ、ホント」

「ホント…ははは」





いつも俺は

こんなんじゃない。



この

黒い宝石の破壊力が強く、

いつもよりキショくなっている。







ミカ

「ねーってば!」

「意味わかんない!」

「会話になってないじゃん!」

「なんでそんな固いんですか~?」

「アタシ、電気受けれるの?」

「ビリビリしてもらえるの?」






こっちが緊張していたからか

ワザと明るく振舞ってくれるミカ。


正直、かなり助かった。





というか緊張してる理由、

わかってるだろ...。







シン

「いや…うーん」

「したいならするけどよ」

「実際撮影は…そうだな」

「筋トレメインかな?」

「とにかく伸ばしたいんだ」

「インスタとかSNS!」

「ついでに店の宣伝だ!」






ミカ

「あは! そっか!そっか!」

「やっと会話できた気がする!」

「でもさぁ…撮影とは別でさ、」

「実際に電気受けてみたいんだけど」

「どんな感じなの?」




シン

「え、店!?来るの!?」

「俺、接客すんの!?」

「いやいやいやそんな……」

「来たら死ぬって俺が……!」






ミカがクスクス笑いながら、

横から覗き込むように顔を寄せてくる。


距離が近い。反則だ。








ミカ

「だって気になるじゃん」

「アタシ腰痛いし~」

「行っていいの〜?」






シン

「腰!?」

「そんなとこに電気…」

「お前それ、それお前…!」

「ま、待て待て待て!」

「心の準備が……!」






マスターが正面から突っ込む。






マスター

「お前、変なこと考えたろ?」








シン

「い、いや!」

「だってコイツ、」

「顔、可愛すぎるだろ!」





あ、





本音が、ポロリ。





口が滑った。






ミカは

そのやり取りを見て口元だけで笑う。


目は完全に笑っていない。




獲物を見つけた、ヒョウだった。








ミカ

「じゃあさ、場所教えて?」

「LINE交換しよ〜?」






まるで

“コンビニ寄る?”

くらいの軽さ。


これが魔性。





シン

「マジで!?」

「もちろ、」






マスター

「ミカ!」

「やめとけ!こいつは手が早い!」

「ダメったらダメ!」

「ライン交換したなんて知られたら…」

「事務所に何言われるか分かんねーよ!」







ミカ

「え〜じゃあやめる〜」





ちっ。




マスターめ。


見て見ぬふりしやがれ。






マスター

「あくまで…」

「"ビジネス"として繋げただけだ!」

「事務所に誤解されないようにしてくれ!」

「簡単な広告のみOK貰ってるからよ」

「整骨院行くなら普通に予約してくれ」






シン

「そ、そうそう!」

「ビジネスだ!」




おしかったぜチクショー。







俺は真正面を向いて

平静を装ったが、

横に座ってるミカには丸見え。





きっと、



LINE交換したい!って


顔に書いてあったんだろう。






ミカの視線が、

横からすっと刺さる。


そのまま口角がゆっくり上がる。






完全に、お見通しの、ニヤリ。








ミカ

「ねぇ~」

「ほんとに行ってみたいんだけど〜」

「どこから予約すればいいの〜?」

「なんで個人LINEはダメなの~?」






わざとらしく困ったポーズをするミカ。








マスター

「シン、ダメだぞ?」

「モデルだけって言ったろ?」

「変な気を起こすなよ?」







シン

「わかってるよ…」

「約束は守る……」




俺は

わざと無愛想に

iQOSをくわえた。







マスター

「ミカ、撮影だけにしてくれ」

「整体は、予約を使ってくれ」

「個人LINEは、しない」

「な? 頼むぞ?」








ミカ

「ふぅん…」









ミカはカウンターに頬杖をつき、

視線をそらしながら、

不機嫌そうに唇を尖らせた。


その仕草が、

少しずつ理性を侵食する。








マスター

「…ったく」

「お前らってやつは…」




肩を下げて息を吐くマスター。




マスター

「…ミカ」

「ポテトか何か つまむか?」







ミカ

「ん? あぁ~…」

「どーしよっかな」

「お腹は空いてるなぁ」








ミカは、会話しながら

マスターには見えない角度で、

俺の足をコツンと当てた。




次に太ももをスッと撫でる。

完全に“死角”を理解した動き。






そのまま、

俺の膝の上にスマホを置き、


カウンター下の影で

LINEのQRコードを開いた。







ご丁寧にメニュー表を見るフリして

”メニュー表バリア”で隠している。


あまりにも、手慣れていた。








え?と嬉しそうな俺を見て、


ミカは小首をコテンと傾け、



「よかったね?」

と言いたげな可愛い顔を向けてきた。







震える指で、

QRを読み取り友達追加した。




リュウト、

ずっと寝てていいぞ!




そのまま、

永遠の眠りにつけ!






ーーー









ミカ

「じゃあ今度、」

「撮影でお店に行くね〜」

「シンさん、楽しみにしてて?」







マスター

「シン、連絡は店の予約を通せよ!」

「個人でやり取りするなよ!」

「いいな!?」






何かをジュージュー焼きながら

マスターが怒鳴る。








シン

「あいよー!」

「もちろんですとも!」




ふはは!


やっぱり

"最高の人生"だなぁ!








マスター

「お前…」

「急に機嫌なおったな…?」





シン

「え、いや」

「おいリュウト!」




困った時は

リュウトを起こす。




バシッと叩いて

電源ON。





リュウト

「んぐ……」

「まだ…呑めるぞ」






シン

「そうこなくっちゃ!」

「マスター!」

「テキーラ!」






マスター

「リュウト殺す気かよ…」






ミカは、

あきれて笑っていた。



そんな表情も

めっちゃ美人だった。






もう、無理だった。


俺は完全に落ちていた。






ーーー






気がつけば

朝方まで呑んでいた。





俺は、


欲しいものは

なんでも手に入れてきた。



ミカ、


今に見てろよ。




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