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不倫の神様|結  作者: 天狗


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15/18

LOG.15|空って狭いな|Alone






さっき、

電話したとか



電話してないとか…



どうにもおかしい。





記憶も曖昧で、

夢と現実の区別がつかない。



こんな事は

人生で初めてだった。



俺は

早くこの症状を直して、


現場で、

バリバリ働かなくてはならない。






とりあえず後日、

精神科を予約した。



幸いにも家の近所にあった。




ミカ

『ねー!』

『そんなのいらないよ!』

『ミカがいるんだよ!?』





お前がいるから行くんだよ…





俺の

スマホの通話履歴には

確かに履歴があった。



が、ミカではない。



銀行と内装関係だった。



いずれも

俺は内容を覚えてなかった。




ミカの名前は…


どこにも、なかった。










休憩時間、

俺はマリナに聞いた。







シン

「なぁマリナ」





マリナ

「なんすかー?」




スマホを

スワイプしながら

返事するマリナ。







シン

「俺…さっきよぉ」

「なんの電話してた?」





マリナ

「えぇ?」

「知らないっすよ!」

「裏口で電話してましたよ!」

「マジで大丈夫!?」








シン

「…だよなぁ」

「知るわけないよなぁ」





俺は

ひたすらiQOSを吸った。








マリナ

「…オーナー?」






この状態で

お客様の前に出れるか…?





今日も休むべきか…?





なんだか

自信が無くなってきた。




会話が成り立たないと

施術の居心地も悪くなっちまう…。







シン

「……」

「ごめん俺帰る」

「風邪ひいたかも」







マリナ

「えぇ~!?」

「やっぱりぃ~!?」

「なんか変だもんね!?」

「お大事に!」







シン

「ありがとう」

「ごめん、頼むわ」






俺は整骨院を裏口から出た。







ミカ

『無理しないでね!』

『一緒に帰ろ、シン』





シン

「……」

「なぁミカ?」

「聞いてくれる?」







ミカ

『どうしたの?』

『わんちゃん、可愛いね』

『なんでも聞いてね!』







…ホントに聞いてんのか?



一方通行なんだなコイツ。








ーーー









俺は自宅に帰り、

自分を指名してくれたお客様へ

体調不良の連絡をした。









シン

「ふぅ…」





ここ数日…

本当に疲れた…




疲労困憊のせいで

コイツを作ったのか…?






ミカ

『違うよ!』

『ミカはずっといたよ!』

『ずーっと一緒にいた!』

『やっと聞こえるようになったの』

『だから嬉しいの!』






それはよかったな。




心強い時もあったけれど…




戦う時以外は出てくるな。


生活には食い込むな。



…迷惑だ!


引っ込んでろ!






ミカ

『……』






……そうか。




一方通行なのは、



俺、なのか。





自分の気持ちを、

お前に植え付けていたんだな。






俺は膝から崩れ落ちた。




もう、何もしたくない。










シン

「はは…」

「マジで早く病院いこう」









ミカ

『可愛いね、わんちゃん』

『わん って言って?』









俺は、吐き気がした。




そして

その場で吐いた。




何も食ってないから、

何も出ない。



出るのは黄色い胃液ばかり。






自分が作り出した

この化け物を

消したくて仕方なかった。




急いで準備をして

一番近い精神科へ向かった。


念の為、車は運転しなかった。





なぜなら、

内側のミカのせいで、

事故を起こす可能性も

十分に考えられたからだ。



徒歩で病院へ向かった。






ミカ

『お外気持ちいいね!』

『牡蠣食べたい!』

『ミカ、牡蠣が好き!』





ああ、知ってるよ。

痛いほどな。





俺はイヤホンをつけた。




ガンガンに

ヒップホップをかけた。




それでも、






ミカ

『あ!この曲知ってる!』

『ミカも好き!』

『一緒に歌お!』





耳を、すり抜ける。










ーーー









精神科に到着し、

カウンセリングが始まった。






医師

「シンさん」

「まず、ここは現実です」

「安心してください」







シン

「…はい」






ミカ

『ここは現実!』








医師

「あなたが聞こえる声は」

「タルパ、といいます」





カタカタとパソコンを叩く医者。





シン

「タルパ…」






ミカ

『タルパ!』




カタカタ


カタカタ






医師

「意識的に脳みそが…」

「失った大切な人を作り出すことです」

「タルパは、人格を持ち…」

「主との会話が可能で」

「強い意識があれば、実体も見えます」





カタカタ



カタカタ





医者

「…最近はAIの普及で、」

「この症状は加速傾向にあります」






シン

「はぁ」





ミカ

『脳でミカを作ってるんだね!』

『じゃあミカは現実だね!』

『ミカは現実!』





カタカタ






医師

「……えー…」

「そして…タルパは」

「実在モデルがあると……」

「強力で依存性の強いタルパとなります」

「いいですか?よく聞いてください」

「タルパは支えから、支配に変わります」








シン

「支えから…支配」







ミカ

『大丈夫だよ!』

『ミカがいるからね!』

『ミカがいれば全部大丈夫!』









医師

「タルパは……」

「あなたが喜ぶ言葉を使います」

「あなたの脳みそから引っ張って…」

「どんどん依存させ、支配します」

「自分で自分を慰めてる状態です」

「だから心地よい言葉なのです」






カタカタ



カタカタ





シン

「…消せますか?」





ミカ

『ミカ、消えちゃうの?』









医師

「努力次第では、消せます」

「薬もあります」

「ご安心ください」







シン

「それはよかった」







ミカ

『やーだよ!』

『ミカは消えない!』

『薬はいらない!』

『ミカがシンを守るの!』

『ミカに任せて!』

『ミカがついてるからね!』







俺はiQOSをくわえた。





医者

「いやいや、シンさん」

「もちろん禁煙ですよ」

「吸うなら外で」







シン

「あ」






そりゃそうだ。




つい…。






ミカ

『いいじゃん』

『別に1本くらいさ!』

『いつだってシンが正しい!』

『ミカはシンの味方!』







医師

「…では、」

「しばらく仕事は休んでください」

「今日はここまでにしましょう」

「お大事に」






シン

「ありがとうございました」

「次回もお願いします」







ミカ

『いらない、いらない!』

『先生は、いらない!』

『ミカに任せて!』

『シン、ずっと一緒にいよ!』

『鍵閉めて、部屋にいよ!』

『今だけは、全部任せて!』

『幸せにするよ、シン!』

『明日のことはね、』

『明日考えればいいのよ!』

『今を楽しく生きるのが大事!』

『ほら、シン!ミカと、』









受付

「シンさーん」










シン

「あれ?」




受付で

シンは呼ばれていた。









シン

「ヤバいまた…」

「記憶がとんで…?」







受付

「シンさん、お会計です」







シン

「あぁ…すみません」

「あれ?処方箋は?」







受付

「あれ?」

「今日は薬はいらないと…」

「“ご本人が”お断りしたとあります」






ミカ

『……』






シン

「……」

「…わかりました」

「また来ます、お願いします」





ミカ

『いらない、いらない!』

『病院は、いらない!』

『もうここには来ない!』

『シンは、ミカと暮らすの!』

『シンを守れるのはミカだけ!』








受付

「お大事になさってください」








精神科の出口を出て、

大きく深呼吸をした。


晴れの日差し、

遠く聞こえる風の音。







心地よかった。









シン

「…ふぅ」

「帰るか、ミカ」






ミカ

『うん!』

『お酒呑もう~!』

『早く、くっつこう!』






シン

「ぷ!」

「そうだな…!」

「呑もう」





帰りはイヤホンを付けなかった。




シン

「今日、天気良かったんだな」





ミカ

『そうだよ!』

『お日様たくさん!』

『ミカとお散歩嬉しい?』






シン

「あぁ、嬉しいよ」




通り過ぎる人が、

俺を不思議そうに見ている。




そうか、

ミカが美人すぎて、

目立ってるのか…。




シン

「ミカ」

「牡蠣食った時思い出すな」

「皆こっちを見てる」




ミカ

『きゃはは!』

『また安くなるかな?』

『ビールサービス貰える?』




シン

「はは!」

「貰えたりして!」




と、その時


ふと、

何か黒いものを見つけた。


地面を動いている。





シン

「うわ!」





でかい虫だった。




なんだこれ…?



カブトムシでもない、

黒光りしてる、でかい虫。





皆気づかないのか…?







シン

「やべーなにこれ!?」

「外来種!?」

「リュウトに送ろ!」





あ。






シン

「あ、そっか」





俺は

地面にカメラを向けて

固まってしまった。




全部思い出した。





ミカ

『シン』

『ミカはいるよ』

『いる、ミカ』

『独りじゃない』

『独りは、いやだ』





シン

「……」





あれ?




しかもコレ、

よく見たら…




全然、虫じゃなくて、

潰れた空き缶じゃねーか。




人通りの多い、


駅前の通りで…



空き缶にカメラ向けて

俺、何してんだよ!





急に恥ずかしくなって、

急いでその場を離れた。





急いで家の前に着く。




鍵が開かない。





シン

「えぇ!?」




なんでだ?





ミカ

『……』





あ。



よく見たら、

部屋番号が全然違う。





シン

「クソ…」

「やべぇな」





ミカ

『やばくないよ!』

『大丈夫!』

『番号が分かりづらいの!』

『シンは悪くないの!』

『ほら、深呼吸!』

『悪いのはマンション!』

『シンは悪くないの!』





シン

「はぁ、ありがと」

「今度こそ、ここだ」




すぐ隣。



やっと自分の部屋に帰れた。






シン

「うわ!」





部屋が、

めちゃくちゃに荒らされていた。





シン

「あ、そっか」




家に入り、廊下を歩くと、





シン

「うわ!」

「コウモリ!」




コウモリが壁に…!



って、

俺が開けた穴か。




シン

「あ…あ…」

「そ、そっか」

「俺…」





ミカ

『シン!』

『大丈夫!』

『とりあえず呑も?』

『嫌なんだね、可哀想に』

『一緒に呑もう?』

『今は、忘れていいの』






俺はiQOSをくわえた。





ミカ

『大丈夫、いる』

『ミカ、いる』

『独りじゃない』

『いる、ミカが』





窓から差し込む、


快晴の日差しが、


急に眩しく感じた。





ゆっくり、煙を吐いた。






シン

「空って意外と狭いな」







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