表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不倫の神様|結  作者: 天狗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/16

LOG.1|ミカ|This is Mika

俺と、現役モデルと、不倫と…。


こんな人生で、マトモは無理。


たった一度の出会いで、人生が壊れた。


これは、その記録。

————







後になって思う。




この日、

俺は「選んだ」つもりでいた。




でも本当は……


この時点でもう、

ミカに選ばれていたんだと思う。







ミカと出会う少し前。




その頃の俺は

仕事に命を燃やしてる

“仕事が大好きな男”だった。




整骨院の予約は常にパンパン。


昼飯はほぼ食えず、

スタッフと共に

大量の客をさばき続ける。




汗だくでヘトヘトなのに、

なぜか楽しくて仕方なかった。





口コミは勝手に増える。


金も増える。


その頃は確かに伸び盛りだった。




「シンさん、凄いですね!」


「オーナー!今日も満枠ですね!」


「シンさん」


「シンさん」




皆が、

俺を褒めてくれる。



俺は、

この街を獲った気でいた。







ふん。



バカが、二度と逆らうな。





この無意味な自信と傲慢が

俺の原動力だ。




誰よりも偉くなりたい。





俺の人生は

"最高の人生"なんだ。






ーーー







仕事の終わりは

だいたい夜10時すぎ。


そこから

“いつものバー”へ歩いて行く。




そのバーは俺の“ホーム”だった。




飯がうまい。

雰囲気がいい。


カウンター越しに

他愛もない話ができる。




それに平日夜10時過ぎに行くと、

マスターのバーには

だいたい俺しか客はいない。




仕事でパンパンになった頭を、

ほぼ貸切の

バーカウンターでリセットする。




そのルーティンが好きだった。






街灯の下を歩きながら、

胸の中はなぜかウキウキしていた。




リュウトと

ダーツでもしよっかな!

ってね。





ーーー








カウンターのいつもの席につく。




マスターが

「今日もお疲れ」と

麦焼酎を出してくれる。




マスターの店は、

住宅街の中にぽつんとある


“情報の中心地”だ。




マスターの店、定食屋、床屋。


この三つだけで、

この街の噂話は全部まわる。




逆に言えば、

この三つで変な行動をすれば、

翌日には住宅街じゅうに広まる。









マスター自身は、

見た目60手前とは思えないイケおじで、


街のことを何でも知っている

“酒場のマスター”そのものだった。




困ったことがあれば、

ここに来て相談する。


この街の正解ルートだ。








シン

「なぁマスター!」

「俺インスタ伸ばしたいんだ」

「なんか、モデルの知り合いとかいない?」






マスター

「モデル? 珍しいこと言うなぁ」






シン

「ガチだって」

「店も伸びてきたし…」

「撮りたいんだよ、インスタで映える動画」

「で、何万再生もブン回してさ!」

「社長として目立ちたいんだ!」

「そんでモテまくってよ…っと」





言いながら俺はダーツを投げた。



ズギューンと

ダーツの機械が音を鳴らす。





リュウト

「は!?」

「またBULLかよ!」




シン

「はっはー!」

「1800奢りなリュウト!」

「マスター!」

「テキーラ2つ!」






マスター

「あいよ」






マスターが

カチャカチャとテキーラを出す。






リュウト

「またテキーラ…」







マスター

「頑張れリュウト…」






マスターが

リュウトの前に優しく

テキーラを置いた。







マスター

「でよぉ…シン」







シン

「ぷはぁ!」

「え?なに?」





マスター

「整骨院でモデルって…」

「微妙じゃねぇか?」





シン

「わかってねぇなぁ!」

「電気ビリビリを撮るんじゃねぇ」

「筋トレを始めるんだよ」

「ビジネスとしてな!」




マスター

「ほう」





シン

「今は怪我とか事故だけどよ」

「根本改善として、運動よ」

「やっぱ運動しないとダメ、」

「ってことで筋トレコースだ」

「まだ金額は決めてねーけど!」





マスター

「お前……」

「意外と考えてんだな…」





シン

「舐めんじゃねーぞ!」

「俺だって仕事は真面目だ!」

「で?モデルだよ!」

「いねーのか?モデル!」







マスター

「あ、あぁ…」

「いや実はよぉ…」

「遠い親戚がモデルなんだよ」

「恋愛リアリティショー出てたんだよ」

「番組名は、忘れたけどな」




シン

「マジで!?」

「いんじゃねーかよ!」

「紹介してくれよ!」

「乳デカイ!?」






マスター

「お前なぁ…!」

「中学生かよ、脳みそ!」

「最初の質問がそれかよ!」

「それよりも顔だろ普通…」

「美人だぞ、見てみろ」







その瞬間だった。




マスターがスマホを取り出し、

画面をこちらに向けた。




そこに写っていたのは、

事務所の宣材写真の

完璧すぎるほど綺麗なミカだった。






息が止まった。






正直に言う。






この時、

「綺麗だ」とか

「タイプだ」とか


そういう感想は出てこなかった。






ただ一つだけ、

はっきり思ったことがある。









どうしても、




俺の女にしたい。










画面越しなのに、

ミカの視線が脳に刺さって動けなかった。



それに何故か、

懐かしい感じがした。


初めて会った気がしない。


何度も、会ってる、気がした。









マスター

「どうだ、ビビったろ?」

「多分安くモデル出来るぞ?」

「どうすんだ?シン」







シン

「あ、あぁ」

「えっと……」





ダメだ。


思考が回らない。



他人に興味がない俺が

初めて感じた好奇心だった。



もっと、


このモデルのこと、



知りたい。



知りたくて、仕方ない。









マスター

「…なぁ、シン」





マスターが

カウンターにスマホを置く。






マスター

「ちょっと聞け…」

「モデル撮影するならな」

「少し、条件がある」






空気が一気に現実に戻る。






マスター

「撮影以外で会うな」

「連絡も俺を通せ」

「直接交換は禁止だ」

「ミカの事務所は管理が厳しい」

「頼むぞ、シン」






シン

「……あぁ」







マスター

「条件守ってくれるなら…」

「今、ここに呼んでみるぞ?」

「LINEしてみるか?」







シン

「......あぁ」







マスター

「聞いてんのか!?」







シン

「あぁ……聞いてるよ……」

「………っ!?」

「え?今呼ぶの!?」







マスター

「そうだっつの!」

「...ったく!」

「LINEしてみるぞ」





ふと、嬉しくて

リュウトを見ると



カウンターで

"死体"になっていた。





シン

「お、おい!」

「リュウト!やべーぞ!」

「モデルが来るぞ!」

「聞いてん、」





リュウト

「うぷ」




リュウトが

派手にリバースした。






シン

「うぎゃあ!」






間一髪、

ギリギリで俺は回避した。



今から

美人モデルと会うのに

汚れてたまるかよ!






マスター

「バカ!」

「無理に呑みすぎだ!」




マスターが慌てて

カウンターから飛び出した。



その時、

置きっぱなしのスマホは

ミカを写したままだった。







何回見ても…


ドストライクだ。








今から会えるのか...!

こんな美女と...!




機嫌が良くなった俺は、

掃除を手伝うことにした。






シン

「手伝うよ、マスター」




マスター

「おい……!」

「やめろ、雪が降るぞ!」




シン

「ふざけんな!」

「俺だってやるぞ!」

「ちゃんと反省してなぁ、」





リュウト

「うぷ」







リュウト、

2度目のリバース…



せず!








シン

「……ふぅー!」

「ヒヤヒヤさせやがって」




マスター

「シン…」

「起きたらブチ切れとけ…!」




シン

「ぎゃはは!」

「任せとけマスター!」






引き続き、

2人で床を拭いた。






ふきふき



ふきふき







シン

「…なぁマスター」





マスター

「あん?」




シン

「親戚…って言ったよな?」





マスター

「ミカか?」




シン

「あぁ」




マスター

「そうだ」

「親戚…というか」

「厳密に言うと血の繋がりは無い」




シン

「だよなぁ?」

「そんなん、お見通しだ」





マスター

「あん?」

「なんでだよ?」





ふきふき



ふきふき





シン

「ふん」

「顔見りゃ分かる」





マスター

「顔?」




シン

「美人すぎる」

「マスターと似てないだろ」

「だってマスター…」

「"マタドガス"みてーじゃん」





マスター

「お前なぁ……!」

「誰が"マタドガス"だ!」

「悪口も中学生か!」





シン

「ぎゃはは!」

「じゃ"ベトベトン"か!?」





マスター

「コノヤロー!」

「変なポケモンばっ、」






リュウト

「うぷ」





リュウト、

今度はしっかり、

滝のようにリバース。




シン&マスター

「「ぎゃあ!」」





マスター

「あーもう!」

「ミカが来るまでに…!」

「間に合わせるぞ……!」





シン

「頑張れマスター……!」




マスター

「お前もやるんだよ!」




ゴン




バケツで殴られた。




マスター

「紹介しねぇぞ!?」




シン

「それは、困る」

「なんでもやります」

「押忍」





マスター

「…ったく」

「お前らってやつは…」

「悪ガキ共が……!」





ふきふき



ふきふき







床掃除しながら、

またミカの顔を思い出した。







ごめんな、マスター。


俺はもう、

無理かもしれん...。






めっちゃ、口説きたい…。





この瞬間から、

俺の歯車は静かに狂い始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ