誕生会
出発の時、孤児院の仲間も加わりってアルノー様を含めた十一人の大人数になった。
そのために、馬車の手配諸々で出発が遅れたが、それでもお昼を過ぎた頃には別荘に着いていた。
別荘に到着すると、王宮のシェフが「お待ちしておりました。腕を振るって美味しいお食事を沢山準備して居ますので、沢山お召し上がりください。」とテーブル一杯に料理を並べてくれた。
私達は美味しい料理をお腹一杯頂きながら、楽しい時間を過ごした。
みんなで食事を終えた後は、湖畔で、ボートに乗ったり、水辺で遊んだり、森を探検したりと、時間が経つのを忘れてみんなで遊んだ。
「そう言えば、食べるために必死で働くばかりだったから、みんなでこうして一緒に遊んだ事無かったわね。」と、リリアが言うと、そうだな、「こんな日が来るとは、思わなかったよ。アルノー様が誘ってくれたおかげだね。」と、ノアが答えた。
「あの日、アマルが倒れた日から、色々な事が急に変わった気がする。」
「そうだな。今では俺達は雨や風、それに食事の心配せずに暮らせるようになったもんな。」
「そうだね。アルノー様や国王様。それと私達を救けてくれたみんなのお陰だね。」
「それじゃあ、今日はみんな揃っているから、かなり遅れたが、みんなの誕生会をやろう。」
「えー、アルノー様は、私達の誕生日の事を知っていたんですか?」
「以前アマルに聞いた事がある。リリアがみんなの出会った五月六日を誕生日と決めたと。」
「はい、アマルに話したのは、まだずーと幼い時だったのに、よく覚えていたわね。」
「うん。」何故かこの事だけは、この身体の少女の幸せな記憶として残っていたのだ。
「今夜はみんなの誕生日パーティーだ。盛大にやるぞー。」
「誕生日のお祝いなんて、して貰った事が無いから、どんなものか知らないけど、凄く嬉しい。」
「そうだね、今夜は楽しみだね。」とみんな境遇が似ているので、口々に言いながら笑い合った。
別荘に帰り、みんなそれぞれの部屋に入ると、着替えの準備がされていた。全員が侍女さん達の手を借りて身支度を整えた後、侍従さんに連れられホールに着くと、あのケーキのスポンジをどうやって焼いたのか分からないような大きなバースデーケーキが鎮座し、その周りに豪華な料理が並び、私達がマナーを気にせず、思いっきり食べられるようにと、アルノー様がバイキング形式にしてくれていた。
そして会場には使用人の方々が並び、私達にバースデーソングを歌ってくれた。
始めて聞いた自分達のためのバースデーソングにみんなは、感極まって泣き出してしまった。
その後ノアが、「アマルこの食事はどうやって食べたらいいんだんだ?」と聞いて来た。
「そうだね、これはバイキングと言って、みんなが食べてみたい物や、味が分からない物を少しずつワンプレートに乗せて食べて見て、もっと食べたいと思った物を食べたいだけおかわりするの。でも食べ切れる分だけ取るのがマナーよ。食べ残したら、作ってくれた人に失礼になるから気をつけてね。」
「分かった。そうやって全部の種類食べてから、好きな物を好きなだけ食べてもいいんだな。」
「そうだね、でも、他の人が食べる分は残して置いてね。」
「分かった、全部食べずに、半分は残しておけばいいんだな。」
「そうね、他に食べたい人と揉めたら、美味しい物も美味しくなるから。」
「そうだな、そんな事になると、楽しくないもんな。」
「そうね。」
「でも、スープや、デザートは、お皿を変えて食べてね。」
「所であの大きなケーキどうやって食べるんだ? そのままみんなでフォークで取って食うのか?」
「違う、違う、シェフがお皿に乗るサイズに切り分けてくれるまで待つの。そしてそれを食べるのよ。」
「それじゃ、ケーキが切り分けられるのを待ちながら食事をして置こう。」
「でも、アマルちゃん、このお料理みんなで食べても食べ切れないけど、残ったら捨てるのかなぁ?」
「そんな勿体ない事しないと思うけど…⁉ ちょっと聞いて見るね。」と、シェフさんに聞いて見た。
「ご心配要りません。アルノー様に私共使用人も、後で食べる許可を頂いています。」
「では、折角なので、温かくて美味しいうちにみんなで頂いた方がいいですよね。アルノー様皆さんも一緒でいいですか?」
「ああ、みんなが良かったら構わないよ。」
「では、皆さんも一緒に私達のお祝いに参加して頂いて宜しいでしょうか? シェフさんの美味しいお料理を皆さんで頂きましょう。」
最初はみんな、初めての事だったのか、少し戸惑っていたようだが、私達みんなが手を引きパーティーに引き込んで行き、みんなで楽しい時間を過ごす事が出来た。
それでもまだ残った分が有ったので、シェフにお夜食で頂きたい事を告げると、
「では、少し味にアレンジをしてから、お部屋にお持ちします。」と、言って貰えた。
その後部屋に戻って、アルノー様を含めみんなで和気藹々とおしゃべりをしていると、シェフが夜食を持って来てくれた。それは、残ったパンに残った料理をアレンジして挟んだサンドイッチや、パンをトーストしてカリカリになった物に残った料理をディップしたり、残ったケーキには、チョコや、ストロベリークリーム、フルーツを乗せ可愛いショートケーキにして持って来てくれた。
見ているだけで、お腹が空いて来た。
「所でアマル、これどうやって食べるの? お皿が足りないみたいだけど?」
「ケーキ以外は手づかみで食べるんだよ。」
「そうなんだ…⁉ 所でアマル、私ずーと不思議に思っていたんだけど、オステオ公爵様のお屋敷に初めて行った日の晩餐で、アマルちゃんフォークとナイフでお食事を普通にしていたじゃない。どうやって覚えたの? それに今日の食事も?」
「なんと無く分かったからかなぁ? そうだ、所でみんなはどうだったの? 私、あの日緊張でみんなの事考える余裕がなかった。ごめんなさい。」
「そうだったんだね。私達も緊張していたから、何も見えて居なかったんだけどね。後でアンジェから聞いたの。あの日アンジェは、私達が晩餐の席で恥を掻かないよう、私達の分の食事だけシェフにスプーンとフォークで全てのお料理を食べられるよう工夫するように伝えてくれていたそうなの。
でも、配膳係の侍女さんが誤ってアマルとアンジェのお食事を配膳してしまい、どうしょうか考えていると、アマルが普通にナイフとフォークで食べ始めたから逆にびっくりしたって言っていたよ。」
「そうだったんだね。今迄全然気づいてなかった。それなら心配してくれた、アンジェにお礼を言わなければいけないね。」
【だからあの時アンジェはあんな事言ったんだ。】
「なあ、なあこの夜食見ていたら段々お腹が空いて来たんだけど。まだ食べたらダメかなぁ。」
「じゃあ。せっかくシェフが美味しくリメイクしてくれたお夜食と、侍女さんが入れてくれたおいしいお茶で、みんな頂きましょう。」と、リリアが言い終わらないうちに、ノアはサンドイッチに手を伸ばしていた。
さすが十一人の食べ盛り、お夜食も結構な量有ったと思っていたが、綺麗に無くなってしまった。
「俺達は、アルノー様に出会うまで、こんな食事食べた事も無かったし、見たことすらなかった。俺は、貧民街に居た時、俺を産んで捨てた親父やお袋を恨んでいたよ。でも今は、もし親父やお袋が生きて居たら、こんな美味い飯食わせて遣りたいと思っている。」とノアは涙ぐんでいた。
「そうだね、食べさせてあげたいね。」と、みんなも涙ぐんでいた。
「それじゃぁ、此れから治療院の開院記念日を、国民みんなのお誕生日会にしましょう。」
「アマルそれはどういう事だ?」
「王都の一流シェフの皆さんに力添えを頂いて、食べた事が無い物を食べて貰うんです。こんなバイキング形式にして。」
「な~~んか考えただけでワクワクするね。」
「参加者に制限は付けず、来た人みんなに無料で食べて貰うの。みんなどう思う?」
「それじゃぁ、貴族も商売人も、庶民や貧民街の皆も分け隔て無く?」
「そう。最初は難しいかも知れないけど、出来る限り毎年恒例にして、住民同士の差別意識を無くせるようにしたいし、貧民街の住人が気後れせずに働けるようにしたい。それと、毎日炊き出しをしてくれているみんなにとっては、知識や経験がみんなの自信に繋がるかもしれないしね。」
「そうだね。それは少し分かるかも。」
「じゃあ、これから益々忙しくなるね。」
こんな話をしている内に夜も更けて行き、みんな眠くなったようで、おしゃべりはお開きとなり、みんなそれぞれの部屋に戻って行くと、侍女さんもお皿類をワゴンに片付け、部屋を出て行った。
私は後に残ったアルノー様と少し話す事になった。
アルノー様に誘われ、湖畔迄散策する事にした。
「アルノー様、今日は私達のお誕生会をして頂きありがとうございました。 本当に楽しい一日でした。私の一生の思い出になります。」
「アマルが楽しんだのなら、私も本当に嬉しい。」
「どうしたんですか? アルノー様、いつもと様子が少し違いますね。 何か有ったのですか?」
「ああ、少しな。」
「私がお聞きしても構わない事ですか?」
「…。アマル、私には隣国セシール王国側から、第一王女ミラン・セシールとの婚約を申し込まれているんだ。」
「そう…‼ なのですね。アルノー様はそのお方とお会いした事は有るんですか?」
「ああ、数回、誘拐された子供達の件で、セシール王国に出向いた時に。」
「そうですか、王族の方は大変ですね。」
「アマル…。」
「ぇ…⁉」
「いや、何でもない。 この季節でも湖畔は冷えるな。もう戻ろう。」
「はい。」
2人共ただ黙って別荘に戻ると、「アルノー様おやすみなさい。」「ああ、おやすみ。」と挨拶を交わし部屋に戻った。
ベッドに潜り込むと、何故か涙がこぼれて来た。
今迄みなさんに、優しくして頂いたので、自分が貧民街の孤児だという事を忘れてしまっていたのかもしれない。恐ろしい事だ。
明日からは、もっと身を引き締めて、自分の立場を忘れない様にしよう。と心に決めた。




