治療院無事開院
「所で今迄、アマル達に悪事を働こうとした、リガード公爵、バッシュ公爵それとウォーター商会や「金色の風」を捕えた際に没収した金額の中から、誘拐された子供達の取り戻しと、その慰謝料とアマルに対する対価と謝礼金で、先日国王と契約書を交わした、毎月の診療報酬から経費を差し引いた金額から一割を王宮に返済の約束の、王都の広場の土地購入代金、治療院及び設備それと建設に掛かった全費用の半分の全てを差し引いても、渡せる対価と謝礼金が余りそうなのだ。予定通り一割の返済にするか、完済してしまうか、どうする?」
「そんな大金を頂いてもいいのでしょうか?」
「それは当然の対価だ。気にする事は無い。」
「それならば、完済して頂いても宜しいでしょうか。」
「分かった。それらの全ての支払い完了後、残金は、アランとミカエルに渡して置こう。」
「ありがとうございます。宜しくお願い致します。」
「分かった。それと、アマルに一つお願いがあるんだが、誘拐された子供達が三十二人居たんだが、心のケア―をお願い出来ないだろうか?」
「分りました、何処まで出来るか分かりませんが、お引き受けいたします。」
「ありがとう。頼む。」
「それでは、この治療院でみんなと一緒に生活しながら心のリハビリをしながら通常の生活が出来るようにして行きましょう。」
「任せてしまっていいのか?」
「はい。所で、その人達のお部屋は、炊出し職員専用棟の部屋が開いているのですがその部屋で大丈夫ですか? 高級な家具と入れ替えは必要ですか?」
「恐らく大丈夫だろう。必要な時に対処しよう。」
「分りました。何時から来られますか?」
「今日でも構わないか? オステオ卿の許可は取ってある。」
「はい、大丈夫です。では、皆さんと会った時に一度治療をした後に決めましょう。」
「それと治療院のある土地と建物全てについてだが、ギルドで売買契約をするとしよう。そうすれば、アマルは何の憂いもなく治療院の経営に専念出来るだろう。」
「ありがとうございます。お願いします。」
「所でアマル、治療院の休日はあるのかい?」と、アルノー様が聞いて来た。
「決めていませんでした。」
「大事なことだよ。みんなが倒れてしまう。」
「そうですね。では、土曜日と日曜日を休日としましょう。」
「分かった。王都の掲示板に触れ書きを出して置こう。」
その後、アルノー様が子供達をオステオ様の屋敷に連れて来た。
子供達の表情はまちまちだったが、やはり暗い表情や怯えた表情をしていた。
その表情を見ていると、彼等の置かれて居た状況を考え、胸の奥が怒りで押し潰されそうな気持ちになった。危うく黒い靄を出しさらに怯えさせてしまうところだった。
気持ちを持ち直すと、私は別の部屋に移動し、彼等を一人ずつ抱きしめると、癒やしの光で全身を包んで行った。
光が収まると、暗く怯えた表情は無くなり、笑顔が見える様になっていたが、数日は続けたほうがいいのかも知れない。辛い記憶迄治せると良いのに。そう思いながら、子供達に治療院の話をした。
その日からオステオ様のお屋敷でお世話になって居る子供達のベッドに3人づつみんな別れて潜り込むと、安心したのか直ぐに寝息が聞こえ始めた。元々ベッドが大きいので子供が四人寝てもまだ余裕が有った。
翌朝食事の後、子供達の治療を終えた頃、「ご主人様が御呼びです。」と侍従さんが迎えに来た。
侍従さんに付いて応接室に向かうと、国王様とアルノー様に国王様執事とギルドマスター、それとオステオ夫妻にアランとミカエルが待って居た。
「アマル、今から広場の土地購入代金、治療院建設及び設備費用の売買契約書を交わそう。その後、以前の契約書の破棄を行う。が良いか。」
「はい、お願い致します。」
「では、先ずアマル、今回の儂らの暗殺未遂それと王都の子供達の誘拐事件の解決それと、金色の風の被害者達の治療。本当にありがとう。世話になった。これは対価と謝礼金の受け渡し状じゃ。」
「ありがとうございます。」その受け渡し状をみた途端、身体が強張ってしまった。
それを見ていたアランは、私の手から受け渡し状を抜き取ると、ミカエルの側に持って行き何かを書いていた、その後「ありがとうございます。確かに受け取りました。これは領収書です。」と、国王様に書面を一通渡した。
「それでは、国王様、アマル様、ギルドマスターこちらの確認をお願い致します。」と、国王様執事が、
契約書三通を渡した。
「此方で大丈夫です。」
「儂も大丈夫じゃ。」
「確認しました。」
「では、皆さん、サインをお願いします。」みんなそれぞれ三枚を、交代にサインをした。
「此れでアマル、あの土地と建物の全ては其方の物じゃ。憂いなく治療に専念してくれ。」
「はい、ありがとうございました。」
「では、前回の契約書は破棄しようか?三枚揃ったな。では、アルノー、オステオ夫妻それとギルドマスターはこの契約と契約書破棄の見届け人じゃ良いな。」
「「「はい、仰せのままに。」」」
国王様は、前回契約した、治療院土地と建物の毎月の分割払いの契約書をみんなの前で破り燃やした。
「では改めて、治療院の完成おめでとう。」
「ありがとうございます。皆様のおかげで、私の夢の第一歩を踏み出す事が出来ました。本当にありがとうございます。」
「アマル、対価と謝礼金の、治療院の土地と建物の残金、金貨十五万枚は、アランとミカエルに渡して置いたから、後で確認して置いて。」
「ありがとうございます。」
本日無事に治療院が開院の運びとなった。ここ一か月程は治療院の準備、患者さんの案内や治療の進め方、や治療費の精算等みんなで練習し、半年以上お世話になったオステオ様のお屋敷からのお引越しなどで、忙しい毎日を送っていた。
アンジェやフィーネとカリーナが、オステオ様のお屋敷でお世話になっている間、みんなに読み書き、算術、それと貴族に対する礼儀作法にテーブルマナー迄教え込んでくれたので、私の仲間9人は、何が有っても一人で十分暮らして行けるようになっていた。
「アンジェとフィーネ、カリーナ私の仲間達をここまで育て上げてくれてありがとう。これで、貴族の方々が治療に訪れても安心できます。本当にありがとうございました。」
「「「どういたしまして。私達も楽しかったわよ。」」」
「皆さんのお陰で、無事開院できます。皆さん此れからも、宜しくお願い致します。」
このお礼を言った時、治療院の門が開かれた。
最初の来院者はオステオ公爵が定期検診を受診に来院してくれた。
その後は、貧民街の人達と、庶民の方が訪れ、お昼前には貴族や、商人の方々が数人訪れた。
気が付いたら、教育施設にも、空き時間の警備隊員や子供達が多数集まってくれていたし 地下の公衆浴場も貧民街の方々や庶民の方達が多く集まり、利用していた。
思わず、炊き出しが足りるか心配になり、マリアに確認したが、
「大丈夫です。工事期間中から大人数の炊き出ししていたので、戸惑う事なく作業は順調に進んでいます。本日は多く準備しすぎた位かもしれません。」と笑って答えてくれたので、私は安心した。
本日の来院数は、貴族三名、商人十名、庶民、貧民五十五人だった。
「アラン、ずっとこの患者数で、やって行けそうですか?」
「アマルは心配症ですね。初日でこれだけの患者が集まればいい方ですよ。」
「診療報酬も金貨二百五十枚でしたよ、大丈夫ですか?」
「そうですね今日は赤字でしたが、アマルが開院前に行った、治療費や悪者捕縛の協力諸々で、相当な金貨を王宮から受け取っています。これは、この治療院の一年以上の経費分を超えています。お気になさらなくても大丈夫です。」
「アラン、ミカエル、まさかと思いますが、オステオ公爵からは、治療費は受け取って居ませんよね。」
「はい、オステオ公爵様から差し出された金貨千枚の分はお断り致しました。ただ、長男ご夫婦から金貨五百枚と次男様からは金貨二百枚を受け取りました。それと国王様とアルノー様には、治療費及び礼金として金貨一万枚を別で受け取っています。」
「そんなに頂いていたのですね(汗) お会いした時お礼を言って置きます。では、単純に一日どれ位の経費掛かりそうですか?」
「そうですね、今の感じでは一日金貨二百枚位でしょうか? 但し、アマルの分は含まれていません。」
「分りました。それと、アラン、ミカエル、リガード公爵家とバロン公爵家から来て頂いた方達への報酬は、公爵家で受け取っていた報酬より、絶対低くしてはダメです。寧ろ上げて下さいね。」
「それはどうしてですか?」
「それだけの価値が皆さんにはあるからです。私や貧民街の職員と同額で良いはず在りません。今迄頑張って身に着けて来た事を私達に教える側なのですから。」
「分りました。そうさせて頂きます。ではこの治療院が軌道に乗ったら、報酬を上げさせて頂きます。」
「お願いします。」
そうこうしながら毎日が忙しく過ぎて行き、開院三か月を無事迎える頃には、王都での治療院の認知度は上がって行き、当初は貴族の方々や、商人の方々は、庶民やまして貧民街の人達と一緒の治療院など汚らわしいと言っていたそうだが、アルノー様やオステオ公爵様達、他一部の貴族の方々や、商人の方々がこの治療院を訪れている事を知ると、皆さんの考えも変化したようで、段々と治療院を訪れる貴族や商人の方々が増えて来た。
そして、それに伴う貴族の方々の往診も増えた。が、今迄貴族や商人ご用達として、法外な値段で薬を処方していた薬師がこれを心良く思っていないらしく、診療中や、夜陰に紛れて荒くれ者達を送り付け、治療院内外で暴れ回らせる者も出て来た。
この者達を、警備隊たちが捕らえ、依頼した者達も処罰された。
只、薬師の方々の薬草に関する知識は絶対無くしてはならなものなので、国王様が薬師を保護する事で、王都や王国内の町や村で、国民を守って頂く事になり、私も、年に一回数か月掛け、王国内の町や村々を回る事となった。
私が治療院に居ない間は王都に残った薬師の方に治療院を任せる事で、この一連の騒動に終止符が打たれた。
治療院も漸く落ち着いたある日、
「アマル、今度の休みに予定はあるかい。」
アルノー様が聞いて来たので、休みの日は何時でも予定なしの私は、「何も予定は在りませんが、どうされましたか?」
「いや、気分転換に少し遠出はどうだろうかと、思ったのだが?」
「ありがとうございます。」
「では、つぎの休みの朝、迎えに来よう。」
「お願い致します。楽しみにお待ちしています。」
数日後の治療院がお休みの日、アルノー様が朝早くから迎えにきてくれた。
「アマル、王都の外れの湖畔に別荘があるから今日はそこに行こう。」
「分りました。」
「あれ~、アマル、アルノー様と、何処かに行くの? それとも今日も診療?」
「違う、違う、アルノー様が湖畔の別荘に誘ってくれたの。」
「えー、アマル私も行きたい。」
「そうだ、みんなと一緒に遊ぶともっと楽しいかも。アルノー様、みんなも一緒にいいですか?」
「え…!! ああ構わないよ。」
「えー、良いんですか? どんな所だろう、楽しみだね。」
「みんなを呼んでくるね。」
「ドラン、馬車の準備を頼む。」
「分りました。アルノー様、お気の毒でした。」
「大丈夫だ、想定の範囲内だ。」




