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私から黒い靄が生まれた

  王宮に向かう当日は朝早くから、準備に追われ、侍女さん達が総出で準備をしてくれた。

 鏡に映った姿を見て、思わず「此れは誰?」と、思ってしまった。

 私の記憶にある私は、お婆さんか、おばさんなのだ、でも、今鏡に映った自分は、とても可愛い少女だった。前世で言うなら、恐らく小学校低学年位かなぁ?

 まあ、どちらにしても、侍女さんたちの力で、可愛くして貰ったのです。

「皆さん、こんなに可愛くして頂いてありがとうございます。では行って来ます。」

「いってらっしゃいませ。」と、みんなに見送られ馬車でオステオ公爵夫妻と王宮に向かった。

 馬車の中では奥様が私を見て、可愛い、可愛いと連呼してくれるので、いつの間にか自分でも本当に可愛いのではないか?と勘違いしそうになっている自分がいた。

 不思議なものだね。


 王宮に着くと、迎えの侍従さんが出迎えてくれ、控えの間に案内された。

 暫くそこで、侍女さんに入れて頂いたお茶を飲みながら待って居ると、先程の侍従さんが、私を迎えに来た。

「アマル様、アルノー様がお待ちです。此方へどうぞ。」と呼び出された。

 私は、侍従さんに付いて部屋を出ると、アルノー様の所に向かっている?

 正確には、侍従さんに連れられ、幾つもの部屋の前を通り過ぎる、長い廊下の先を曲がった所で後ろから誰かに口を塞がれた。その後の記憶が無い。


その頃、控えの間に残された、オステオ公爵夫妻はゆっくりお茶を飲みながら、

「本当にアルノー王太子殿下とアマルは仲がよいですね。」

「そうだね。アマルはまだ六歳だけど、王太子殿下もまだ十五歳だ。先々はどうなるか分からんな。」

「そうですね。楽しみですね。」

「所で……⁈ 先程アマルを迎えに来た侍従が王太子殿下の事をアルノー様と呼んで無かったかい?」

「はい、確かにそう呼んでいましたね。」

「いかん、ここは王宮だ、王太子殿下をアルノー様とは呼ばない。」

その異変に素早く気が付いたのがオステオ公爵だった。

「ドラン様かシズル様いませんか? アマルが誰かに誘い出されました。王太子殿下に連絡お願いします。」

 と? 天井に向かって叫んだらしい。

 近くの護衛達も反応が早く直ぐに動き出したようだった。



 まず王宮と王国の門が全て封鎖され、王宮内の人々のチェック、今日の為に集まった貴族達や共の者に不審者がいないかチェックが行われた。が、不審者は見つからなかった。

 私達を王宮内に迎える予定の侍従は誰かに眠らされた上に、口を塞がれ、手足を縛られた状態で王宮の物置に閉じ込められているのが発見された。

 一方、曲者眠らされた私は、貴族の馬車の荷物入れに乗せられ、王宮の門が閉じられる直前、門番の目を搔い潜り王宮から出ていた。


 王宮から出た馬車の捜索が王都全域で行われ、乗り捨てられた貴族の馬車は王都の塀の外の森の中に隠されるように放置されているのが見つかった。が、中は勿論空っぽだった。

 乗り捨てられた馬車はオステオ公爵家の物であった。

 オステオ公爵が無実な事は周知の事実であったが、アマルが見つかる迄は、王宮内に止め置かれる事となった。



 その頃私は、王都の商人の荷馬車に乗せ換えられ、その商人の別宅の地下部屋で、眠らされていた。

 王宮内では、今集まっている貴族達もそのまま止め置かれ、今日の為に準備された、晩餐を楽しむ事となった。

 ドランとシズル達は今集まって居る者達に目を光らせていた。


 皆が晩餐で楽しんでいる間、国王様、王太子殿下、オステオ公爵夫妻で、内々でアマル誘拐は内部犯の犯行が濃厚と考え、来賓として王宮に来ていた貴族を探り、検証した。

 検証① アマルが此の王宮に来ることが決まったのは二日前と直近である事

 検証② 国王様の執事が、到着時刻に合わせて出迎える者に、控えの間を教えたのはオステオ公爵夫妻の到着時刻の三十分前だった事。

 検証③ 最初に出迎えの指示を出した者が腹痛を訴えた為、別の侍従に変更して指示をした。その者が出迎え出来ないよう物置に呼び出した者が居る。只、この者は物置の前で誰かに後ろから鼻と口を塞がれ眠らされたために、顔を見て居なかった。

 その全ての事に関わった人物が、国王夫妻、王太子殿下、国王執事、王太子殿下執事、と侍従長だった。

 直ぐにドランが呼ばれ、二人の執事と、侍従長の動きにおかしな所が無いか調べるよう指示が出された。

 暫くすると、ドランが、「侍従長がエイトラル公爵と何やら密談のような会話を晩餐会場の隅でしていたようです。ただ申し訳ございません、内容を聞き取る事が出来ませんでした。」と、報告して来た。

 やがて晩餐会は終了し、貴族達はそれぞれの屋敷に帰って行った。



 その頃、商人の別邸で目を覚ました私は、ベッドから起き上がり部屋を出ようとしたが、扉に鍵が掛かって居て出ることが出来なかった。

 中から扉を叩くと扉の上部格子窓から男が顔を出した。私の顔を見て驚いて居た。その男はマリアが以前勤めていた商会で、治療院の食材、主に調味料を購入する契約を交わしたクルリ商会の主だったのだ。

「アマル様お久しぶりです。ご気分は如何ですか?」

「気分は最悪です。 所で何故あなたが、私を此処に閉じ込めて居るのですか?この場所は?」

「さるお方に頼まれまして、貴方を私の別邸に、お連れしたのです。」

「さるお方とは、誰なのでしょう?」

「アマル様がお知りになる必要はございません。もうすぐ貴方はこの国から出て行くのですから、もう暫くご辛抱下さい。それとお食事を今お持ちしますのでお召し上がりください。」と、扉の下部分が空き食事が運び込まれた。

 その後クルリ商会の主は何処かに行ってしまった。

 私は、食事に薬物の混入が無いか調べたが大丈夫そうなので、美味しく頂いた。



 ただ私は無性に腹が立って仕方なかった。見ず知らずの者に攫われるなら、仕方がないが、面識が有り、あまつさえ商売上の取引相手で有るうえ、ギルドで契約まで交わした筈の私を攫うなんてどんな了見をしているのだろうか?

 考えれば考える程腹が立って来る、なぜかそれが抑えられなくなってきた。そこに格子戸から覗き込んで来た男が、急に怯えた顔をした。

「貴様は誰だ、何時さっきの少女と入れ替わった。おい!親父を呼んで来い。」と誰かに言いつけ、男は私を見ていたが、

「婆さん、お前は魔法が使えるのか?」

「何故、そんな事を聞く。」

「お前の周りから、黒い靄が見える。それにさっき此処に居たのは少女だ、お前のような老人では無かった。魔法を使って入れ替わったのだろう。さっきの少女は何処に遣った。教えろ。」

 黒い靄……⁉ 

 黒い靄とは何だろう? 

 確かに先程よりこの部屋は暗くなったような気がするが、此の事と関係が有るのだろうか? 

 その時、背中が痒くなったので、背中を掻く仕草を頭で考えると、何故か背中を手で掻いている様に感じ痒みも落ち着いた。此れってもしかするのかなぁ?

 次に私の頬っぺたを抓った想像をしてみると【痛い、痛い、いたーい。】

 では、あいつの頬っぺたを抓る想像してみた。すると扉の向こうに居る奴が、

「痛い、痛い、痛~~い誰だ俺の顔を抓んだ奴は、誰がやった? え!誰も居ない。」


 これは、利用できるかもしれない? やって見よう。

「そうだね、この黒い靄はお前達に取り付いて殺すかも知れないが、構わないだろうね?」

「冗談を言うのを止めろ。」

「冗談かどうか試して見るかい?」ますます男の顔が青くなっていく。

 試しにあいつの腕を捻り上げて見ようか?

 頭の中で男の右腕を捻って突き上げる想像をしてみた。

「痛い、痛い、痛い、やめてくれ~~~。この腕はどうなって要るんだ~~。」

 男の右手が在らぬ方向の曲がろうとしていた。

 足を蹴り飛ばす想像をすると、今度は男が膝を抱えて倒れた。

「さっき此奴の言った事は本当だったんだ、こいつは人間じゃないバケモノだ―。」と叫んだ。

 これが出来るのであれば、もしかしたら他の事も出来るかも知れない。


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