私化け物かな?
「凄いぞ、アマル魔法が使えるんだ。」
「「アマルちゃん凄い、本当に凄い。」」
「でも突然、魔法が使える様になるって、アマルちゃんがお婆ちゃんになった事と関係あるのかなぁ。」とリリアが、疑問に思っているようだ。
「いや、魔法は元々使えたが、覚醒とか言うのをしていなかっただけじゃないのか? アマルが倒れたのはその魔法覚醒が原因じゃなかったのか。」とノアが言い出し、みんなそう思う事で納得したようだ。
「みんな、私の事、お婆ちゃん顔って言うけど、見て見たい、鏡とかある?」
「鏡、そんな上等な物が此処に在る訳ないだろう。」と、ノアが怒ったように言った。
「そうだよね、アマルも顔、見て見たいよね。それじゃぁ、出かけようか?」とアンが言い皆で出かける事にした。
でも本当に貧民街というのは、今の私が住んでいるような、何処かから板を持って来て自分達で建てた様な家がずぅーと並んで建っている。
私の足で十分位歩いたところで、私達より多少ましと思える服を着た大人の男性が座っているのを見つけた.
「みんな、あの人にこの辺りに怪しい人影を見なかったか聞いて見よう。」 と、リリアが提案してくれた。
「あのう、す…」と私が話し掛けた所、顔を上げたその人は、私を見ると驚き何か叫びながら、逃げるようにして行ってしまった。
今あの人は、何て言っていたのだろう、確か、バケモノだ、子供のくせに老婆の顔をしている? と言って無かった?
「老婆のような顔?さっきからお婆ちゃんの様な顔とは言われているが……!?」みんなの顔を見ると、彼等は横を向いてしまった。
鏡、鏡を見せて。もしやあの92歳の顔のまま私は転生したのだろうか?
辺りを見回すと、建物の窓ガラスあった、そこに写った私の顔は、あの日息子達家族がみんな揃って訪ねて来た時と同じ顔をしていた。あの神が言っていた事はこういう事だったのだ。
あの時神様は何て言っていた? 思い出せ、思い出すんだ。
「私の性根の根底が変わらなければ、老婆の顔になる。」と言っていた。
それなら、私はどうしたらいいの?
考えろ、しっかり考えて見るんだよ。
そもそも人間の性根の根底はそんなに簡単には変わらないでしょう。
でも私は、神様からこちらの世界にせっかく生まれ変わらせて貰い、もう一度人生をやり直すチャンスを貰った。それなのに今のような老婆の顔で、今後死ぬまで生きて行くなんて絶対嫌だ。
前世での私は、若い頃にはそれなりに夢や希望も持っていた。
私が小学生の時、母親が病気で若くして亡くなった。
そのせいか私は、父親の会社で病気を治す研究者か、お医者さんに成りたかった。だが、父親の会社が負債を抱え倒産寸前となった時、父の研究知識と研究所の資料が欲しかった夫の父親は、負債を全て肩代わりする代わりに、研究成果は全て夫の父親の会社だけに資料を渡す約束を交わし、お互いが裏切らない様にと、私はほぼ身売り同然で元夫の元に嫁がされた。
お互い愛情の無い結婚生活で、夫は愛人宅に入り浸り家には帰って来ない。
私は夫の会社で専務という肩書を付けられ仕事に追われる日々を送っていた。
そして父が亡くなり、双方の会社を合併させ、夫が後を継いだ。
そんなある日、夫の愛人に子供が出来た。子供を育てる気はないからお前が育てろと連れて来たのが、あの一人息子義男だった。
私はその子を育てる事を条件に、離婚と慰謝料に養育費を要求、夫は全てこちらの条件を飲み、離婚が成立した。
夫は離婚成立後、愛人と晴れて結婚。会社も大きくなり幸せに暮らしていたようだ。
その、一人息子も高校生に上がる頃になると、元夫が会社の跡取りとして育てると連れて行ってしまった。
私もその頃には会社を経営し、その傍らでも金貸しとして成功していたから、息子は夫に渡した。が、その頃から、心のどこかに穴が開き埋めようのない寂しさに押し潰されそうになっていた。その穴を埋めるため知らず知らずのうちに、人を人とも思わない人間になってしまっていたようだ。
前世の私の息子義男、嫁の小百合さんに曾孫のめぐみちゃん、そして孫のゆかりちゃん家族。せっかく皆で会いに来てくれたのに本当に悪かったね。
そして私が残し、皆の恨みが籠った財産を清めてくれてありがとう。
「義男、小百合さん今迄本当にありがとう。そしてみんなほんとにごめんなさい。」
知らず知らずに涙が溢れて止まらなかった。その時身体が光って優しい温もりに包まれたような気がした。
みんな突然の事にビックリしたようで、どうしていいか分からない様子で、私から少し離れた所で立ちすくんで居た。暫くして落ち着くと、みんなに向かって笑って見せた。するとみんなが近くに寄って来てくれた。
「アマル、顔が少し変わったみたい。ノアのお腹を治した時も少し思ったけど気のせいかな? と思っていたの、気のせいじゃないんだね。教えてくれる。」とリリアに聞かれた。
私は全てを教える事は出来ないので、簡単に教える事にした。
「実は、家で倒れた時神様の夢を見たの、その時神様がこう言ったの、アマル、今から病気を治す魔法を使える様にしてあげよう。その代わりお前の顔は老婆になる。だけど良いことをすれば若返り、悪いことをすれば直ぐに老婆の顔に戻る。って、言われたの。夢だと思って居たけど、ノアのお腹の青い光を見た時、あれは本当の夢だったんだと改めて思ったの。それに皆もお婆ちゃんの顔になっている。って、言って居たし。」
「それじゃあ、アマルは悪い魔法や妖術に掛かっていたわけじゃなかったんだね。良かった。」とリリアが安心したように言った。
「直ぐに伝えなくて、ごめんなさい。」
「気にしなくていいさ。所で今日のご飯どうする? アマルが倒れたから途中で帰って来たけど、まだ金になるのが残って居ると良いけど?」
「みんなでもう一度捨て場に行ってみましょう。」
「それもそうだな。」
みんなで捨て場に向かい、お金に変えられそうな物を拾ったが、収入は銅貨一枚だけだった。これは、リリアが巾着にしまった。
「明日は朝から又みんなで来ましょう。」リリアに言われみんな励まされた。
今夜は、昨夜ノアが残したパンが一個あったので、それを皆で分ける事にした。
翌日は、みんなで朝から一生懸命一日かけて捨て場で色々拾った。
捨て場に集まる子供や大人は多い。
昨日と同じ時間に買い取りのおじさんが荷馬車でやって来て換金してくれた。
「此れ全部で銅貨三枚だ。」とお金を渡してくれた。
この銅貨三枚で、どれだけ食べられるのだろう?
換金した金額は、他のみんなも似たような感じだった。
その中の一枚の銅貨をリリアは首から下げた巾着にしまい、残った銅貨二枚を持ってみんなで市場に向うと、リリアがパン屋のおばちゃんと何か話していたが、パンの切れ端が入った袋を下げて来た。
今日はおばさんがサービスにいつもより多く入れてくれたわ。みんな、帰ってパンを食べましょう。
「アマル、さっき捨て場で話して居た男の子は何処か悪かったの?」リリアが聞いて来た。
「うん、捨て場で上にあった木材が落ちて来て頭を打ったみたい、怪我をしていたの。それと足が動かないって言っていたから。」
「直してあげたの?」
「うん。でも良く分かったね。」
「昨日も治してあげたでしょう。」
「うん。」
貧民街の人達は、毎日みんなで朝から夕方まで捨て場でゴミを拾って過ごしている。それでもパン一個もまともに食べられない、リリアはもしもの時に備えて毎日銅貨一枚は残すようにしているそうだ。
その時ふと、前世のある人を想い出した、返済期日になると利息の数万円だけを握って来る。そして一生懸命頭を地面に擦りつけて返済をもう少し待って下さい。お願いします。お願いします。と頼み込んで来ていた人を思い出した。あの数万円を、毎月どんな気持ちで持って来ていたのだろう? 今更かも知れないが…?
私は、前世で会社経営の傍ら、金貸しも生業にしていた。お金を借りに来る時だけ下手に出て来るが、いざ返す時には、上から目線で此方を蔑むような奴もいた。が、本当にお金に困った人も多かった。
そんな人達を見ても、私は仕事をしないのが悪い、仕事が出来ない? 仕事を選ぶのが悪い、病気になるのが悪いと思っていた。
「借りた金が返せないなら、臓器でも、娘でも売って借りた金はきっちり返しな。」と言って来た。
私は最低の人間だった? むしろ人間の心など遠の昔に何処かに置いて来ていた。
命を絶った人も多くいた。葬儀の受付で、私の香典を叩き返し、涙をこらえ私を睨み付けながら焼香灰を投げ付けて来た娘の顔は今も忘れてはいない。
次に死んだ時、彼方の世界に行くことが出来たならお詫びしなくてはならない方が沢山居るな。と考え、困っていた人達に、もっと優しくなれていたなら良かったのに。と考えていると、リリアが急に、
「アマル、今顔が少し変わった気がする。ねえ、みんなもそう思わない?」




