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治療にむかうよ

「それともう一つ報告がある。先日王宮の裏道から、父上を治療して帰る途中でアマルを、待ち伏せしていた奴等の事だが、奴等はやはり第二王太子派閥のバロン・バッシュ卿が雇った誘拐犯だったようだ。まだ調査中だが、恐らくこれ以上は出てこないだろう。数日中には父上が判決を下すと思うが、もう少し待って居てくれ。」

「分りました。」


 次は、「「金色の風」についてだが、予想以上に大きな組織だったようで、我が国だけではなく、セシール王国やフロード王国とバクス王国でも被害がでているようだし、まだまだ被害が拡大しそうだ。」

「そんなに大きな組織だったんですね。」

「ああ、ただこの国の奴等の拠点に目星が付いた。奴等を捕えるために今から踏み込むが、アマルはどうする、一緒に行くか?」

「アマル…‼ その顔は、やる気満々の様だな。この顔をここで漸く見ることが出来た。では今から向かうぞ。」と、オステオ様が面白そうに笑った。


「はい。病人を食い物にするなんて絶対許しません。」

 私は、アルノー様の馬車に一緒に乗せて頂き、建物の少し手前迄行った後、徒歩で建物の近くで待機していた、ドランやシズル他、王都警備隊と合流した。

 アルノー様はドランに、中の様子や踏み込む手順、その際奴等が逃げ出せる出口等で待機している警備隊の確認をした後、ドランとシズルに踏み込みの命を下した。

 ドランとシズルが警備隊に踏み込みの指示を口笛で飛ばした。

 まず扉がノックされ、中から扉が開くとドランやシズルと共に警備隊が中に踏み込んでいくのが見えた。

 中から男達の喚く声や、女性の悲鳴、それと金属がぶつかる音が聞こえていたが暫くすると、建物の中は静かになった。


「では、中に入ろうか。」とアルノー様が私を促した。

 建物の中に入ると、数人の男女と、剣を振り回した男達数人捕らえられていた。

「アマル、此奴らに見覚えがあるかい?」そう聞かれ見渡して見ると、見覚えのある顔を発見した。

「あ‼ この三人、私がアルノー様を助けた夜、私達の家に乗り込んで来た奴等です。お前さん達はわたしの顔を覚えているよね。」

「婆さんは、誰だよ?」

「私の胸ぐらを掴み上げて、もっと婆だったって、探していたじゃないか?」

「お前はあの時探していた婆さんじゃない。お前なんか知らない。」

「じゃぁ、あの時探していたお婆さんは見つかったのかい?」

「あの時探していた婆さんは、お前よりもっと若かった。こんな年寄りじゃぁ無かった。」

「「そうだ、そうだ、もう少し若かった。こんな婆じゃなかったぞ。」」

「もっと汚ねー、ちびの年寄りだった。」

「じゃぁ、お前達はお婆さんを捜して他人の家に乗り込んだ事は認めるのだな?」

「……!? う・ん。」

と、アルノー様は、彼等が他人の家に乗り込んだ事をあっさり認めさせ、皆を王都の警備隊が連行して行った。

残った警備隊員やドランとシズルで家宅捜索が行われ、証拠品や書類、それとかなりの額の金貨と金塊や貴金属が木箱に梱包された状態で見つかった。

「この金銀財宝は何処かに運ぶ予定だったのでしょうか?」

「こうやって梱包されている所を見ると、恐らくそうだろうな。所でアマル、悪者退治に乗り込んだ感想はどうだ?」

「そうですね。退治出来たのは嬉しいですが、此れだけ被害を受けられた人達が、藁尾も掴む気持ちで居る事に、胸が締め付けられます。」

「あ!顔が戻って行く。すごいなー。見る間に元に戻ったよ。まあ、アマルが悪い事をした訳ではないからな。」

「そんなに私の顔は変化しているんですか? 何も感じないんですが。」

「そうなのか? 急に老婆の顔になったり、若者の顔になったり凄いよ。」




「それと、頼みたいのだが、もし良かったら被害を受けた者達を治して貰えないだろうか?」

「それは、構いませんが。被害を受けた方達が誰か分かりますか?」

「多分。書類に貴族や、商人の名前が有ったから、調べれば直ぐに分かるだろう。少しでも早く治して貰いたいのだが、何時からだと回れそうかい?」

「私は治療院が完成するまでは、其処まですることが無いので、今からでも大丈夫です。」

「分かった。では、今から少し回ろうか。大丈夫かい。」

「はい。」



 そのまま、貴族のお屋敷に連れて行かれた。只、一緒に行ったのがアルノー様だったので、家人が何事かと警戒して居たが、用件を話すとすんなりこの屋敷の主の私室に通された。

 天蓋付きのベッドに横たわった彼は、正直言って、生きているのが不思議なほど痩せ細り、顔も青白くどうしてこんなになる迄…⁉。と私は悔しさで、知らず知らずに、奥歯が痛くなるほど歯を食いしばっていた。

 その後気を取り直すと、わたしは何時もの様に彼の身体を確認し、そのまま治療を開始した。

 全身くまなく治療を行い完了した。彼の身体に赤みが射し始め、暫くすると指が少し動いたと思ったら、目が開き、此方を向いた。

 アルノー様が目に入ったようで、突然起き上がろうとしたので止めたが、話している内に少しずつ動き出し、ついには起き上がる事が出来るようになっていた。

 暫くは、消化の良い物を食べさせる事と、何かあった時は夜中でもいいので、オステオ公爵様の屋敷を訪ねて頂く事を、奥様にお願いし、その貴族の屋敷を後にした。

 その後も二軒の貴族の屋敷と、三件の商人の屋敷を訪ね、帰る際、先程の貴族と同様のお願いをした後、オステオ卿のお屋敷に送って頂いた。


 アルノー様は事の詳細をオステオ卿に告げると。王宮に帰って行った。

 オステオ様は、「今日は疲れたでしょう。」と、私に配慮し、食事を侍女さんに部屋まで運ぶ様申しつけられた。

 食事が運ばれ一人でゆっくりと食事を楽しんだ後、私がお風呂を頂いている間に、侍女さんが食器の片付け、淹れてくれたお茶を頂きながらたわいない話をしていた。が、そのまま眠ってしまったようでベッドに入った記憶すらなかった。


「此れを見てくれ」と、アルノー様は翌朝二十数枚の用紙(現世では、A4サイズ位だろうか?)にびっしりと名前が書かれた物を、私に見せてくれた。

「此れは?」

「今、分って居るだけだが、この王都で奴等に騙された家だ、此れだけで三百件以上の名前が有る。アマル、頼めるかい?」

「はい、大丈夫です。が、アルノー様、昨夜はお休みに成られたのですか?」

「私は慣れているから大丈夫だ、では行こうか?」

 私は、アルノー様に連れられ三か月以上の時間をかけ王都や王都外の町や村を回り、騙された人達全員の治療を終了させた。

「お疲れ様。此処で治療は最後だ、アマル良く頑張ってくれた、ありがとう。」

「此方こそ、アルノー様が一緒に回って頂いたので、全ての家で治療をスムーズに行う事が出来ました。とてもお忙しいのに、お付き合い頂いてありがとうございました。」

「そんな事は当たり前だ、此れは我々の責任なのだ。それに父上が私のいない間は頑張ってくれているだろうから心配は要らない。それと、今回の報酬と謝礼金は、アランとミカエルに渡して置くから。後で受け取って置いてくれ。」

「はい、わかりました。ありがとうございます。」

 私は、オステオ様のお屋敷に送って頂くと、そのまま部屋に入りベッドに潜り込むと、そのまま食事もしないまま、翌日の夕方までぐっすり眠ってしまった。オステオ様の奥様の計らいで、起こさないようにしていてくれたらしい。有難いことです。

 夕食もお部屋で頂き、少し寛いだ後、またベッドに潜り込むとそのまま朝まで眠ってしまい、漸く身支度を整えたのだった。


 朝食を皆さんと済ませた後部屋に帰って、久しぶりに仲間達と話していると、オステオ様がお呼びですと侍従さんが迎えに来てくれ、彼に連れられ応接室に向かうと、アルノー様やオステオ様ご夫妻にアンジェにアランとミカエル達が揃って待って居てくれた。

「長い間お疲れさまでした。」とオステオ様に労をねぎらわれた。

「いえ、此方こそ、ご報告もせず部屋に入ってしまい申し訳ございませんでした。」

「そんな事は気にしないでください。無理をしてはいけません。みなさんが元気でいてくれる事が何よりなのですから。」

「アマル、長い間みんなの治療をさせてすまなかった。ありがとう。本当に助かった。父上が礼を言いたいそうだ、近いうちオステオ夫妻と王宮に来て欲しいのだが、構わないかい?」

「私は構いませんが、貧民街の孤児ですが、皆さまはそれでいいのですか?」

「ああ、出自なら気にしなくても大丈夫だ。手はずは此方で整えて置くから。」

「分りました。宜しくお願い致します。」


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