誘拐
「アマルさん、炊き出し職員の夜の帰宅を警備隊の方々に家迄送って頂けるのなら心強いですね。」と、私とマリアで話していると、ドランが話し掛けて来た。
「アマル、お話し中申し訳ありませんが、ちょっとよろしいでしょうか?」
「アマルさん、私は彼方で明日の炊き出しの準備をして置きますね。」
「マリアさんすいません。何かありましたか?」
「先日、貧民街でアマル達を攫おうとした、曲者二組の事が分かったので、報告に来ました。」
「誰が、私達を攫おうとしたのかが、分かったのですか?」
「最初にロロアが捕らえた、五人は王都の商人の指示でアマル達を攫い、奴隷として売る予定を立てていたそうだ。 ただその裏には、王都の貴族が関わっていたのです。」
「その商人と、貴族の事は分って居るんですか?」
「はい、商人は、ウォーター商会と言って王都では、かなり大きな商会の会長レント・ウオーターです。貴族はリガード公爵で、以前から貴族の間で、両者の黒い関係が囁かれていたので、今回の事件について調べたのですが、リガード公爵の関与を示す証拠は何一つ見つかりませんでした。」
「分りました。では、二組目の真犯人も分かったんですね。」
「はい、此方は「金色の風」と言う、かなり怪しげな団体で、貴族や商人相手に、病に苦しんでいる者の元を訪れては、効きもしない投薬治療やまじない行為を行っては、治療費に高額な謝礼金を要求していたそうです。アマル達が貧民街の人々を治療した事を知ると、それを利用しさらに高額な謝礼金を得ようと、アマル達の誘拐を企んでいたようです。此方も貴族の内情に詳しく、貴族の関与が疑われるのですが、証拠が見つかりませんでした。」と、ドランが残念そうに話していると、突然少し離れていた所で作業していた、リリアやアン達が、数人の男達から取り囲まれ捕まりそうになっていた。
彼女達はその場所から逃げ出そうと悲鳴を上げていた。
それを見た、ドランやシズルと近くで警備していた人達が彼女達の救出と、男達を確保するために、十数人が向かい乱闘となった。
奴等から少し離れた所で、この様子を見ていた、男達の仲間(主犯格?)は何処かへ馬で逃げ去って行った。それを見ていたシズル他数人が、男を馬で少し離れて追って行った。
彼女達全員は無事救出され、逃げ去った男以外は全員捕らえられ、王宮の警備兵舎に移送された。
警備員の半数は、平民の格好をした警備兵だった。
此れは、アルノーの指示で、今日から治療院内外の不届きな輩の警備するために、配属されたばかりだったらしい。
「ボロアさんは、警備兵の事は知っていたんですか?」
「ああ、ギルドで契約するためにみんなが集まった時、アルノー様から皆に紹介を受けていたんだ。アマルが貧民街の者達が来易い治療院作りを目指しているから、王都警備兵と分からない様に紛れ込ませて欲しい。と依頼を受けて居たんだ。」
「そうなんですね。こんな時は、警備員が多いのは心強いですね。みんなを守れて本当に良かった。」
「所で、ドラン、あの男達の誘拐の目的が何か分かるかい?」
「もうすぐシズルが帰って来るだろう。それを待つしかないだろう。それよりもまずは、炊き出しの彼女達とアマルの仲間達を家まで送らせよう。」と、警備兵に指示を出し彼女達を家に帰した。
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ドランの言った通り暫く待って居ると、シズルが帰って来た。
「逃げた男を追いかけた所、裏で糸を引いていたのは、リガード公爵でした。奴等はウォーター商会の会長の手の者の様です。リリアさん達を全員攫って今夜そのまま人買いに売り渡す計画だったようです。それと他にも十数人捉われた子供達が居ました。」
「場所は分りますか?」
「はい、南の船着き場に向かったようです。アマル様先程と違いお顔がかなりお歳を召したように思いますが、どうしたのですか?」
「ドラン、この国の為に使う力なら、歳を取っても大丈夫ですよね。」
「はい、大丈夫です。」
「人を売り買いするなど、まして力の無い子供を狙うなど、彼等が許せません。貴族の家や商会共々潰してやりましょう。ドランとシズルさんそれと警備隊の皆さん、今から悪者を懲らしめ、子供達を救いに行きましょう。」
「「「「おー。」」」」
「そうと決まれば、急ぎましょう。」私達は、シズルの案内で船着き場に向かった。
船着き場に着くと、彼等も今着いたのか、子供達はまだ、馬車の中に居た。
数人の男達が馬車を守っていた。 そして船の中に数人の男が入って行った。
シズルの話では、彼等がリガード公爵とウォーター商会会長で、先頭を行くのが、取引相手でセシール王国の商人だと教えてくれた。
その後ドランとシズルは馬車の周りに居た数人の護衛を声も上げさせない早業で彼等を気絶させた後、警備隊達が彼等を縛り上げ、口は声を出せないように布で塞ぎ、馬車の中の子供達と、護衛達を入れ替えた。
子供達は安全な場所に避難させて、奴等から隠した。この一連の行動の素早さにビックリしていると。船の中から男達の声が聞こえて来たので、馬車の周りの護衛に扮した、警備隊以外は物陰に隠れ、男達が船から降りて来るのを待った。
取引が無事成功したのか、船から降りて来た奴等は馬車の周りの護衛に、馬車から子供達を降ろすように命じた。護衛が馬車の扉を開け、奴等が中の様子を見た途端、何か叫ぼうとしたが、ドランとシズルがすでに彼等の直ぐ後ろに居て素早く口を塞ぐと共に、身柄を拘束した。
唯一声を上げたのが、ウォーター商会会長だった。私を見付け、
「婆さんは誰だ、何故俺達の邪魔をする。」
「私を知らないのかい。」
「お前の様な婆など知らん、お前は誰だ。」
「あんたがさっき、捕まえて売ろうとした子供だよ。」
「婆など儂は知らん。儂が捕らえるよう命じたのは。貧民街に居た子供達だ。お前はいったい誰だ。」
「知らないなら、知らなくていいが、子供達は私が貰って行くよ。」
「貴様に子供達は渡さん。放せ、何だお前たちは。手を放せ。」と、私と話す間、警備隊に身体を拘束されて居たのだ、私に気を取られ気づいて居なかったようだ。
その間に、この取引現場の船の中に残って居た者達は、船から飛び出し、警備隊に向かって主を取り戻そうとする者や、我先に逃げ出そうする者が入り乱れ乱戦となっていた。全員が警備隊やドランとシズル達に捕えられていた。その後王宮警備兵が到着すると、彼等を連行して行った。
捕まっていた子供達の怪我や縄の後など、私が一人一人確認し直した後、王宮警備兵とシズルが彼女達を家まで馬車で送って行った。
その後警備隊の方達は治療院の建築現場を不届きな輩から守る為の警護に戻って貰った。
私は、ドランにオステオ卿の屋敷に送って貰い、ドランは先程までの一件をオステオ様に報告した後すぐに王宮に報告に向かった。
オステオ様は、ドランから聞いた、人攫い達の報告で、不明な点を、私に質問され得心されると、アマルも今日は色々あり疲れたでしょう。部屋に帰ってゆっくりお休みなさいと言われ、私は部屋に向かい、早々に休んだ。
数日後アルノー様がオステオ公爵家に居る私の元を訪れた。
「アマル、先日は又老婆の顔に戻って居たそうだな。理由はドランに聞いている。久々だったのでアマルに会うのを楽しみにして来たのだが? 元の顔に戻って居るんだな。」
「アルノー様それは、がっかりしたと言う事でしょうか?」
「いや、そうともいうが、やはりアマルの顔は今の方がいいかも知れないが…。」
「私も残念でした。ドラン様が連れて帰って来た時には、もういつもの顔になって居ました。」
「そうか、残念だったな。」
「お二人共、人の顔をいじるのはやめて頂けませんでしょうか? 所で、本日の用件は私の顔の件ですか?」
「いや、先日捕らえた、リガード公爵とウォーター商会会長の調査が終わった事と処罰が決定した事を知らせに来た。」




