神父様は許して下さるでしょうか。
アルノー様は私をオステオ様のお屋敷まで送ってくれた。
その後皆で食事を楽しみ、部屋に帰る前、執事さんに、私の部屋へ来て頂くように声をかけて置いた。
部屋帰り侍女さんと話していると、執事さんが私の部屋を訪ねてくれた。
「遅くなって申し訳ありません。御呼びでしょうか?」
「御呼びたてをして申し訳ありません。バロン様にはお許しを頂いていたのですが、治療をさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「有難いお話ですが、私は何処が悪いのでしょうか?」
「目と鼻と腰に違和感は有りませんか?」
「はい、目に時々痛みは有りますが、直ぐに治まります。鼻には重たい感じと腰は以前捻ってしまい、その後の調子が少し悪かったのですが、でも本当に良く分かりましたね。では治療を、お願いしても宜しいでしょうか?」
「分りました。」
「では、此方のベッドに横になって貰って頂いても、良いでしょうか?」
「このベッドに、ですか? 恐れいりますが、其方のソファーではいけないでしょうか?」
「構いませんが、ソファーで宜しいのでしょうか?」
「大丈夫です。では、これで良いでしょうか?」と、言いながらソファーに横になった。
「はい、では目と鼻を同時に治し、腰を治療します。では開始します。」
いつもと同じように、体内の魔力を掌に集め治療を行い、光が消えた事を確認し、治療を完了させた。
「お加減は如何ですか? 治っていると思いますが?」
「はい、あんなに重かった感じが無くなり、腰もスッキリしました。ありがとうございます。」と、とても喜んでくれた。
「これからの執務が楽になりそうです。本当にありがとうございます。では、私は失礼させて頂きます。」と、執事さんは部屋を出て行き、その後侍女さんが部屋を出て行った後、少し寛ぎ休んだ。
一方オステオ様の執務室では、オステオ様御夫妻と、アラン様が診療所の金庫番に付いて、秘密裏に話し合って居た。
「アラン、お前は王都の広場に建設が予定されている治療院の金庫番をしながら、アマル様を守って貰う。」
「父上、何故突然そんな話になったのでしょうか?」
「恐らく、アマル様の治療院は繁盛するだろう。ただアマル様の力を狙う奴等も数多く現れるだろう。治療中の現場で狙われた時、直ぐに守れる者が居ない。その場所で直ぐに対処できるアラン、お前を国王様に提案したんだ。」
「何故私だったのでしょうか?」
「お前には婚約者は居ない。年齢も一番近い、それに治療院の多額の診療報酬や他多額の経費の管理を一人で任せられる程の算術に長けた人物を、アランお前意外に私は知らないからな。」
「父上や母上にそう思って頂けて貰えて嬉しいです。」
「アラン、アマル様はこの国にとってとても大事な人物だ。必ず守り切るんだ。嫁に迎えてもいいんだぞ。」
「父上、それは、気が早いのでは?」
「お前は嫌か?」
「いえ、そんな事はありません。アマル様は可愛い方ですし。ただ今はそれ所では無いと思います。」
「そうか、そうだな。では治療院の金庫番とアマル様の護衛は頼んだぞ。」
「アラン、アマル様の護衛をしっかりとお願いしましたよ。」
「はい、父上母上の仰せのままに。」
翌日アンジェと私達四人は、馬車で孤児院に向かった。
孤児院に着くと、アンジェの後をついて裏口から教会に入り、神父様のお部屋に向かい、扉の前に立ち、アンジェが扉をノックすると、
「お入りなさい。」と先日と同じ優しい声が聞こえて来た。
扉を開けると、神父様はお部屋の窓から、外を見ていたようで、私達が訪ねて来た事が分かっていたようだ。神父様は私達を見ると、
「良く訪ねてくれました。先日は私の身体を治してくれて感謝します。」
と右手を差し出してくれ、私もそれに答えて握手を交わした。
その間にアンジェがお茶の準備を整えてくれ、神父様に進められると、皆でソファーに座りお茶を楽しむ事になった。
「アマルの顔がかなり若くなっていたので、始めは人違いかと思いましたよ。此れから貴方達は、何をして暮らして行く予定ですか?」
「神父様、その事でご相談があって、アマル達と参りました。」と、アンジェがまず答えてくれた。
「私にどのような相談ですか?」
「神父様、アマルの治癒魔法の力を見て頂いたと思うのですが、アマルは貧民街の人々や庶民で、貧困で病院に掛かれず病に苦しむ人々を中心に病を癒す治療院を作りたいと思っているのです。」
「それは、良い心がけです。」
「でも、生意気なことを言うようですが、ただ病気を治すだけではダメなのです。」
「どういう事ですか。」
「貧民街の人達には、身体を作る基本の栄養が足りていないと思うのです。」
「そうですね。貧民街の方々は今日食べる食事に困っている方が殆んどです。」
「それで、治療に来た方や付き添いの方に、一食かもしれませんが、お腹一杯食べて頂こうと思っています。それと彼等が将来独り立ち出来るよう、希望者には文字の読み書きや、算術を勉強して貰きたいと思っています。勿論、学習市に来る人達にも食事はして頂きます。」
「もしかして、アマルは将来的には貧民街を無くしたいと思っているのですか。」
「そうなれば嬉しいですが、でも、恐らく無くならないと思います。人の心は弱いですから。それでも一人でも多くの人達が自立できたら良いと思って居ます。」
「そうですね。でも、その計画を実行するには、お金が沢山掛かりますよ。貧民街の方々は、貴方が感じている通り診察料やお食事代のお支払いは出来ません。どうするつもりですか?」
「はい、貧民街の方や、庶民の方は、お野菜一個、パン一個~銀貨一枚までで、支払える物なら、拾った野菜のクズ等なんでもいいのです。病気を治し、未来を考えられる意欲を持って頂ければいいな。と思って居ます。その代わり、商人や、貴族の方々には過分なお支払いをお願いしょうと思っています。」
「成るほど、では、私に相談とは、どのような事ですか?」
「アンジェから、孤児院の方々は文字の読み書きや算術が出来ると聞いています。彼等達と、私の仲間三人に、私のお手伝いと、治療院に学習を希望して集まった人達に文字の読み書きや算術を教えて頂けないか? と思っています。勿論相応の報酬と食事と住む場所の準備は致します。但し、彼女達のお仕事は口外無用な事も耳にはいると思うのでギルドでの契約が必要になります。」
「相応の報酬とはどれ位を予定していますか? それと、治療院は何処に作るのですか? それと彼等達が狙われる可能性は在りませんか?」
「神父様のご心配は分ります。まず彼等の報酬ですが、一日金貨一枚と三度の食事を考えています。治療院は王都の広場で国王様に、治療院と学習施設、それと炊き出しする建物に、治療院で勤務する方々と警備員の宿舎を含めた全ての施設の準備をして頂く予定です。そして警備員や警備兵が昼夜常駐するとのことです。」
「それ程の警備兵を配置すれば、貧民街の住人や庶民は入りづらいのではないですか?」
「中で働くのは、警備兵の一部以外、全て貧民街の住人の予定なので、大丈夫だと思います。」
「そうなのですね。でも、国王様が全て準備している。と言っていましたがどう言う事なのでしょう?」
「はい、私は、私のこの力を、この国の人達のために使うお約束を国王様としました。そして私は国王様の庇護下に入る契約を交わしました。」
「只、彼女の力は異端なので、彼女を狙う輩が居ます。その輩から、彼女や人々を守るために、警備に力を入れる事になったのです。」と、アンジェが答えてくれた。
「貴方達の考えは分りました。良いでしょう。貴方達の考えを彼等に話し、受け入れてくれたら、連れて行って構いませんよ。」
「神父様ありがとうございます。」
「では、お行きなさい。神のご加護がみなさんに在りますように。」と神父様は優しく私達を送り出してくれた。
私達はそのまま孤児院に向かうと、神父様に話した内容を彼等に話をした所、一番下の一歳の男の子だけは無理だろうという事で、この孤児院で子供達のお世話をしてくれている方が引き受けてくれた。
六人の孤児達は、私達と一緒に来てくれる事になり、今神父様の所に挨拶に行っている。
この後、私達四人は貧民街に向かう予定なので、アンジェには孤児院のみんなを連れて一端お屋敷に帰って貰う事にした。




