予想外に大変な事に
「分かった。では、アマル達の部屋と炊き出しする場所、それと手習い所はどうしたらいい?」
「治療院の上の階は、私を始めとした治療院と炊き出し職員、二十名分位のスタッフルームを作り、別棟に炊き出し場に隣接した食堂と学習室を備え、その上の階に警備員と男性職員のスタッフルームを十六~十八部屋を作りたいと思っています。」
「ではそこで働く職員は、全員治療院内で住み込みをすると考えてよいのだな?」
「ほぼ全ての職員を貧民街からの雇用で考えていますので、住み込みになると思いますが、家族のいる方は通勤なると思っています。只、私達の様に家族が居ない方には、緊急の治療も有ると思うので、住み込みで勤務して貰う予定です。但し部屋代は月額で頂く予定です。」
「報酬と部屋代はいくら位にする予定なのだ。」
「報酬は、治療院職員は緊急の治療時の分も含んで一日金貨一枚、炊き出しと食堂の職員は二交代勤務で一日銀貨四枚、警備員の方は昼夜の交代勤務になるので一日金貨二枚と治療院で働く全ての人には食事を三食付きで考えています。それと、部屋代は報酬の二割を考えています。但し治療院の手伝いと警備員の方はギルドで契約をして頂いた方に限りす。それと格チームリーダーにはリーダー手当一日金貨一枚を考えています。但し職員、特に炊き出し職員の報酬に関しては状況に応じて加給も考えます。」
「アルノー、オステオ卿、報酬や部屋代はこれで良いのか? それとアマルの報酬はどうするのだ?」
「当面の報酬と部屋代はこれで良いと思います。アマルの言う通り、不都合を感じた時に見直しを検討すれば良いかと思います。アマルの報酬も当面は経費を除いた、診療報酬の一割で、治療院が軌道に乗った時に再検討されるのが良いかと思われます。」
と、オステオ卿が答えた。
「私も、それが良いと考えます。」と、アルノー様が答えた。
「そなた達がそう言うのであれば、その様にしよう。」
「では、診療報酬はどう決めたら良いだろうか?」
「アマルの気持ちを汲み貧民街の住人や庶民は現物(パンや野菜)~銀貨一枚、商人は銀貨一枚~金貨五十枚以上、貴族は金貨十枚~百枚以上、往診や夜間診療代、金貨十枚~二百枚以上。 但し貧民街の住人や庶民の往診や夜間診療報酬は日中の診療報酬と同額とする。往診希望の商人、貴族は馬車の準備が必要でどうでしょうか?」
「そうだな、では、今回儂は妃の分と合わせて金貨千枚をアマルに支払う事とするが、ちと少ないように感じる。おいおい補填して行こう。」
「え……!? これで少ないんですか、多すぎると思いますが?」
「アマルは、儂と妃の命を救ったのだぞ、これで足りる訳が無かろう。但し、アマル今から建設をする予定の土地を含めた建設資金は一旦国で支払いを済ますが、半分は診療報酬から経費を除いた一割づつで毎月返して貰うが良いか?」
「勿論です。本来で有れば全額お支払いするのが筋です。半分のお支払いも出来ないかも知れませんが、頑張りますので、気長にお待ち頂けると助かります。」
「分かった。本来は国家で全て支払っても構わないんだが、難癖を付けて来る者達も居るからな。その者達がアマルにちょっかいを掛けて来るだろうからな。それではこの事も契約書で残しても構わないか?」
「そうですね、では宜しくお願い致します。」
「それと、診療報酬がかなりの額になる事が予想される、王宮から派遣しても構わないが、色々漏れては困る故、オステオ卿、治療院の金庫番になれる信頼出来る人物がいないだろうか?」
「それでは、読み書きや算術に剣の腕もそれなりにある、三番目の息子アランを金庫番としてお目合わせ致します。」
「うむ、それとアランの報酬はアマルと同額でいいか?オステオ卿にアマル。」
「はい、構いません。と言うより、私と同額で宜しいのでしょうか?アラン様は公爵家の方ですよね。」
「陛下、私共の愚息にアマルと同額の報酬とは、余りにも多過ぎでは無いでしょうか?」
「イヤ、オステオ卿、考えてもみなさい、アマルの護衛兼金庫番なのだ、いずれは、爵位の授与も考慮しなければならない。その位の報酬は必要だ。但し、分かっておるなオステオ卿。」
「はい、愚息に言い聞かせて置きます。」
「それでは、この事も含めた契約をアマル、オステオ卿、アランも含めて近い内に行おう。」
「はい、宜しくお願い致します。」
「それと、治療院は王都の広場に作ろうと思っている。あの場所だと、通りを挟んで、貧民街や庶民の住む街も近く大通りに面した場所だ。立地は悪く無いと思うぞ。アルノー、今からアマルに王都の広場の案内を頼む、それが終わったら、セドリックの所で落ち合おう。」
「わかりました。父上」
「では、我々は、ギルマスと一緒に、一足先にセドリックの所に行っている。ではアマル待って居るぞ。」と、皆様は行ってしまわれた。
その後、アルノー様に伴われて私は王都の広場に向かった。
その広場は石塀に囲まれていた。
前世で言えば陸上競技場三つ分~四つ分位の広さがある様に見える。
「此処を、父上は治療院にしたらどうだろうか? とお考えのようだ。」
「こんなに広い土地を治療院にですか?」
「ああ、でもアマルの希望を入れたら、これでも足りないと思うよ。」と、アルノー様は笑っていた。
「アマル、この広場は、北側から東側に掛けて王宮や貴族達の屋敷多くあり、東側から南側の運河沿いには市場や問屋街で店や商人の屋敷が立ち並んで居る、西側に庶民が多く住む町や貧民街が有るんだ。そしてその中心がこの広場なのだ。言わば生活階層を分けるために設けた場所なのだ。」
「少しも気づきませんでした。」
「父上は、アマルの診療所が、生活階層排除のきっかけになれば。とお考えのようだ。」
「暫くは難しいとは思いますが、貧困が無くなれば、国の力は、盤石になり生活階層の境界線があやふやな物になって来るのではないか? とは思います。」
「アマルは、本当に五歳なのかい(笑い)」
「はい、リリアに五歳と聞いています。中身はお婆さんですけど(笑)」
「そうだな、所でアマル、誕生日は分かるのかい?」
「はい、リリアがみんなと会った日をみんなの誕生日と決めた。と言っていました。」
「いつなんだ?」
「五月六日と聞いています。」
「ではもう六歳になっていたんだね。」
「そうですね。気付きませんでした。」
「そうかではそろそろ、セドリックの所に向かうが、良いかな?」
「はい、所でセドリック様とは、どなたなのでしょうか?」
「王宮建築士達の親方だよ。」
「あのぅ、普通の王都の大工さんでいいのですが?」
「駄目だよ。アマルの治療院には秘匿情報が多く有るからね。そこら辺から、情報がポンポン洩れたら大変な事になるからね。心配しなくても大丈夫だよ。では、此処はもういいかい?」
「はい。大丈夫です。」
「では、行こうか、父上達と合流しよう。」
「父上や皆さんお待たせしました。」
「いや、我等も今着いたところだ。フルールも一緒に加わりたいと言うから、迎えに行っていたのだ。」
「そうですね~。此れは確かに、母上を除け者にしていたら、王宮に戻れなくなりそうだ。」
「アルノー、何ですか、お前まで。」
「では、始めるぞ。此処に集まった皆はそれぞれ面識があるので紹介は良いと思うが、アマル、王都の広場はどうだった?」
「あんなに広い場所に、治療院を建設して宜しいのですか?」
「あれでも、恐らくギリギリか、少し手狭になるかもしれんな。」
「そうなんですね…!?(汗)」
「アマル、此方が治療院の建設者達の親方セドリックと各部署の責任者達だ。そして、セドリック、先日から話している、治療院の責任者アマルだ。」
「セドリックです。アマル様、これから宜しくお願いします。」と、お互い右手を出し握手を交わし、「アマルです。此方こそ宜しくお願いします。それとアマルと呼び捨てでお願いします。」と伝えた。
セドリックさんには私の希望をまず伝え、それを元に広場への出入り口六箇所と、広場内の建物の位置、馬車の待機場所や道幅などを男性陣が決めて行った。
こうして、王都から広場への入口の数や建物の配置図が出来上がって来ると、警備員が想定の倍以上が必要となり、それと合わせ、炊き出しの職員に治療院や学習施設の規模や人員の数を考えると、治療院と学習施設職員で一棟、炊き出し専用の職員で一棟、警備員(男性専用)を別で一棟の、計三棟の宿舎を準備する事となった。
「こんな、大事になるとは思いませんでした。」
「アマル、再度言って置くが、アマルの事は教会も狙って来る事を考えなくてはならないのだ、注意しすぎな位が、丁度良いんだ。」と、アルノー様が進言してくれた。
「はい、ありがとうございます。」
建物の位置や大きさがある程度決まると、部屋の数と間取り図は女性陣が決めて行き、最終的に建物の大きさが決まった。その後内装や装飾それに設備もどんどん決められて行き、各部署の責任者達がメモを必死に取りながら、陽が沈むころには、だいたいの話は纏まっていた。
セドリック様他各建築部署のリーダーの方々は、
「今夜から各部署で準備を開始いたします。設計図と見積書は五日後にお届け致します。」
と、国王様に告げていた。
「アマル、では書類が揃ったら、オステオ卿達とまた広場に来てくれ。」
「はい、わかりました。それから、工事期間中工事に携わって頂く方々に、炊き出しをしても宜しいでしょうか?」
「それは寧ろ此方から頼みたい位だが、準備は間に合いそうか?」
「明日から、貧民街や市場を回り、準備に掛かります。」
「分かった、場所と器材の準備はしておこう。」
「ありがとうございます。宜しくお願い致します。」
「それとセドリック、心配は無いと思うが、この建設に携わる者は、ギルドで契約を済ませた者達だけだ、宜しく頼む。」
「はい、承知しております。」
「では、我等も帰るとしょう。セドリック、頼んだぞ。」
「お任せください。お気に召すものを作ってお見せ致します。」
「楽しみだな。」と国王様は笑いながら、フルール様と帰って行った。




