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(7)いきさつ 3

 「ソウエキは信長から鉄砲の玉、千個※1が到着したことについてに感謝状が贈られてるのよ!」とみるくが言った。

 「わかったわ。そこは認めるわ」とうつつちゃんは記事を書く手を止めずに言った。

 今は社会の時間の歴史上の出来事を4人グループになって新聞記事にする課題である。

 先ほどからみるくとうつつちゃんの間で交わされる議論の中でソウエキと言われている人物は、「茶室」や、「秀吉」、「切腹」などの単語からどうやら、千利休なのではないかという類推ができるのだが、2人の白熱した議論の邪魔ができない。しかし、一応班のメンバーである私は気になったので、議論を遮り、

 「ソウエキって千利休のこと?」と聞いてみたら、みるくとうつつちゃんは急にキョトンとこちらを見て

 「そうよ?」と何を今さらという風に言ってきた。

 「なんでソウエキなの?」と聞いたら、利休の前は千宗易と言ってこちらの方が当時では一般的だったそうなのだが、今は現代であるし、利休の方が今は一般的じゃないのか?という趣旨の疑問を呈すれば、またみるくとうつつちゃんの2人で同時に

 「利休は…ねえ?」と何やら利休と呼ぶのはちょっとダサいと言いたげである。そこに何があるのか全然わからないし、こいつら本当に中学生なのか?と思いながら呆気にとられていると、どうやら利休は信長に鉄砲の玉を売るほどの武器商人でもあったことがかなり有力な記録に残っているらしく、要は利休があの地位に登り詰められたのは単なる茶道の芸術家だからではなく、時の権力者の勢力拡大に実際の面でつまり、武器や金などの援助をしたからであったのも理由の一つであるというのが議論の中心で、みるくは芸術家5:5政治家、商人の割合を主張し、うつつちゃんは芸術家8:2政治家の割合を主張しそこで今議論がなされていたらしい。

 みるくは歴史マニアとして知識の面でうつつちゃんに負けたくないのと、一般的な利休のイメージとは異なる利休観を持っていることで、歴史マニアの自負を維持したいようである。

 しかし今は記事を書くという授業中なので、目的は記事を書くことである。うつつちゃんはみるくと議論をしながらものすごい勢いで記事のおそらく下書きを書いている。

 どうやら議論でお互いの主張の妥当点をまとめながら、下書きや編集までしているらしいのだ。

 そしたら松井さんが

 「ちょうどいいかわいさなのよね。ユイナって、だからモテるのもわかるわ~。私もユイナみたいな顔になれるならなりたいもん」ともう一つの話題の、私が孤立した理由の方の話題を続けてきた。

 松井さんはこのタイミングで私の呼び方を、福田さんから、ユイナに変えてきたが、私を褒めながら下の名前に切り替えるあたり、間の詰め方が絶妙である。

 私は松井さんの方を振り向いたが、両方の話題のふり幅にしばらく思考が停止してしまっていた。

参考図書

竹田青嗣著

「意味とエロス」「エロスの世界像」「自分を知るための哲学入門」「現象学入門」「ハイデガー入門」「現代思想の冒険」など

桑田忠親著

「千利休」

山本兼一著

「利休にたずねよ」 

※1 鉄砲は普通、弾と表現し、単位は、発ですが「千利休」の中で書かれている表現を採用しております

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