(5)いきさつ 1
以前は違うグループにいた。
でもなんとなく距離を置かれ、その子たちの集まりにも誘われなくなり、3年のクラス替えの時にはそのグループ全員と同じクラスにはならなかったので、常に一緒にいるような友人がいなくなっていた。
そして4月の終わりごろの社会の授業で、歴史上のできごとでそれを題材に、新聞を作るという課題が出て、4,5人のグループを作りなさいという、指示が出た。
すぐに男子同士、女子同士で仲の良いグループが出来上がって、私と細野さんがポツンと残された。
それを見た松井さんが「福田さ~ん、うちおいでよ~」と言ってくれてそこに入った。
細野さんはあまり明るいとは言えない性格で、正直容姿も良いとは言えない、自分にまったく自信がないタイプなのが外から見てもよくわかる子だった。
他のすでに4、5人グループを作ったところはもう定員オーバーと言わんばかりに細野さんを無視していて、私は少し細野さんが心配になって「細野さんもうちおいでよ」と言おうと思ったが、私も誘われて入った手前、自分からは言い出しづらくなって、どうしようかと思っていたら、見かねた松井さんがまた声を出そうとした瞬間、「細野さ~ん、俺達のとこでやろうよ~」と男子グループの森本、金井、酒井原、須藤のグループから声がした。
見ると酒井原君が声を上げたみたいで、細野さんは小さくうなずき、男子グループの中に、女子一人加わって、一応何事もなく授業は進行することになった。
あの時の酒井原君は、なかなかかっこよかったな~と思いながら、私は松井、北条、島津川のグループに加わることになったのだ。
そこで新聞を作りながら(主に歴史マニアのみるくとうつつちゃんがほぼ主導して私と松井さんは何もしなかった)雑談が弾んでしまった。
私たちは新聞を作りながら(正確には勝手に出来上がっていく新聞を見ながら)
「福田さん、以前は(草場)真琴のとこにいたでしょ?最近一緒にいるとこ見ないけど」と松井さんに言われ
「まあ、そうね」と返すと
「あんた、モテすぎたのよ、だからグループから外されたの。たぶん、島崎とか相馬あたりから告白されたんじゃない?真琴あたりが狙ってそうだったんもん」と松井さんに言われた。
正直、両方からだったがはっきり言うのもなんなので
「まあ、そうね」とちょっと濁すような返事になってしまったが、記事を猛スピードで書きながら、うつつちゃんが
「福田さん的には人気もコントロールできると思ったら、意外とそうじゃなかったって感じ?」と言って、ズボシを突かれた。
私はそれでここの居心地の良さを実感してしまい、今に至っている。
参考図書
竹田青嗣著
「意味とエロス」「エロスの世界像」「自分を知るための哲学入門」「現象学入門」「ハイデガー入門」「現代思想の冒険」など