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デート代はどちらが出すべきか 還元、本質直観 4

 「でも還元の説明の前にやっぱり言わないといけないことがあるわ」とうつつちゃんが言った。

 図書室にいる私たちの横の机には、いつの間にか森本君と金井君が座っていて旅行の時に持っていくような、小さな将棋盤が2人の間にある。駒がプラスチックでかわいい。金井君は腕を組み難しそうに考えている。

 「デカルトの方法的懐疑のすごいところは、いったん相手の主張を100%受け入れて、あえて相手の主張で論理を進めたところのなの。そしてその論理を進めると限界があるから、そこでその論理の行き止まりを見つけたところなの。そうすると相手は納得するしかないわよね?」

 「たしかに」と私は言った。

 「哲学の本質って、そっちなの。前に哲学は自己了解の技術だって言ったわよね?これは他者との了解の技術でもあるわけ、他者と何かの主張でぶつかった時に、お互いが納得する技術が哲学なのよ。結局それは自己了解と同じことなのよ」

 「なるほど」

 「だから、哲学を自分の主張を押し通すための知識だと思ってる人は哲学がまるで分ってないし、おそらく、これから先の唯奈の人生に、時間とはどうのこうのって言う自称哲学者が何人か現れると思うけど、そんなの哲学でも何でもないのよ。時間が何かわかったとして、明日からの唯奈の人生に何も影響もないでしょ?」

 「まあ、ないかもしれないわ。自分で聞いといてあれだけど…」

 「じゃあ、話し戻すけど、このデカルトの方法的懐疑によって取り出されたものの意味って言うのは結局なにかって言うと、私たちの認識の全てに可疑性があるってことね。論理的には疑おうと思えば疑えるわけね。つまり私たちが今見ているもの、何でもいいんだけど、あそこの本とか金井君とかは、本当は本じゃないかもしれないし、金井君じゃないかもしれないってこと。しかし、一方で私の意識の中に本や金井君が存在するって言うのはこれは否定のしようが無い事実ってことね。しつこいけど、それが本物の本とか金井君かどうかじゃなくて、あくまで私の意識の中にあるってとこまでが真実って言うことね。ここが還元の概念のめちゃくちゃ重要なところよ。ここが飲み込めると後はけっこう楽なんだけど…」

 「とりあえず、なんとなくはわかったわ」と私は言った。私は本と同列に扱われた金井君のことを少し考えた。

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