後悔
おかしいな。ざっそーはただ、明るく楽しい話が書きたかっただけなのに……。
やっぱ向いていないのかもしれない(;´Д`)
でも大丈夫!最後はハッピーエンドに向かうから!うん!!多分!!!
「________」
その光を受けてキラキラと光る銀の髪。美しい青い瞳。ぼんやりと光る白い肌
神聖さすら感じさせるその光景。その青い瞳の奥に浮かぶ華と目が合った瞬間心を占めた感情はたった一つ。
・・・・・・
女は普通の平凡な家に生まれた。
両親は心優しく温かい人だった。魔法の強さこそ至高とするこの世界で女はあまり魔力が強い方ではなく、当然使える魔法も大したことのない物ばかりだった。
しかし両親はそれでも女に愛情を注いでいたし、女もまた両親のことが大好きであった。
誕生日に送られたネックレスは今でも大事な宝物だ。
きっかけはなんだったか。
もう覚えていないが確か随分とくだらないことで両親と喧嘩し女は家を飛び出した。
最初はすぐに帰るつもりだったのだ。しかしは家に帰ることが出来なくなってしまった。
道に迷った?いいや違う。
子供を身ごもったからだ。
両親に甘やかされ、世間の悪意に触れてこなかった彼女は人を簡単に信用するような不用意な人間だった。
家に帰りたくはないが、しかし突発的に飛び出してきてしまったせいであまりお金は持っていない。
安い宿屋ならば一泊くらいはできるだろうが…さてどうするかと悩んだ先
優しそうな青年に声を掛けられ、彼女はついほいほいとついていって……。
この後はお察し、というものだ。
青年は女に体を差し出す代わりにここにいていいと言った。
恋人ならば兎も角その日あったばかりの相手とそんな関係を持ったとバレればどんな顔をされるか。
汚い子だと思われるんじゃないか。穢らわしいと批難されるんじゃないか。
温厚な両親に、大好きな両親にそう思われることが怖くなった女は結局家に帰ることが出来ず、青年と暮らすことを選んだ。
そうして女は青年に恋をした。
自分を騙して襲った男を好きになるのはどうかしている。
でも好きになってしまったものは仕方がない。
両親のもとにはまだ帰れない。だがいつか彼と正式に恋人になった後なら…或いは。
なんて自分の都合のいいことばかりを夢想した。
だがその夢は妊娠が発覚したことで終わりを迎える。
気づけば家を追い出されていた。お前なんて好きでもなんでもないと、青年に頬を殴られ、泣き崩れる女を前に家の扉は無慈悲にも閉められた。
体は汚れている。子供も身籠ってしまった。今更家に帰るという選択肢は取れない。取ってはいけない。
女は腹の子を抱えて貧民街に転がり込んだ。
出産は女の魔法のお陰でなんとか一人で終えることが出来た。
青年が女を家から追い出す際に握らせてくれた金で食事はとれていたが、それでも栄養が足りず、常に痩せこけていた。
精神面が不安定な時期に好きな男に家を追い出され、頼れる人間は誰も居ない中、こんな暗くてボロくて寒い場所で出産し、何もできない赤子を育てながら暮らす。
完全に自業自得としか言いようがないがそれでもどうしてこんなことになってしまったのかと過去の自分の行動を恨まない日はなかった。
そんな状態だったから自分の子供に「あ」なんていう名前を付けてしまったのかもしれない。
今となっては流石に「あ」はないだろう、と思えるのだが、当時はもう子供の名前を考えることすら億劫だったのだ。
名前は初めてのプレゼント、なんて言われるほど大事なのに。
自分は何をやっているのかと更に自己嫌悪に陥った。
”あ”は大人しかった。
赤子は手がかかるものだと思っていたのに全く夜泣きしないし騒いだり物を壊したりしない。
時折珍行動をすることはあれど、拍子抜けするくらい大人しかった。
それどころか成長するにつれて赤子とは思えないような行動をするようになった。
わずか0歳にして文字を書き、1歳で歩くどころか走り出し2歳でそのへんに埋まっていたという芋やら食べられる草やらをニコニコのいい笑顔で持ってきた。
女はそれが……気味が悪かった。
実の子供に思うべき感情ではないのかもしれないが明らかにおかしい。
こんなの普通ではない。赤子の知識をあまり持っていない自分でもわかる異常
最初はこんなものなのかもしれない、なんて思っていたが流石に度が過ぎている。
それを認識してから女は自身の子供が気味が悪くて仕方がなくなった。
それでも女は”あ”を愛していた。
これは嘘ではない。不気味だったがそれでも大好きだ。
血まみれになって帰ってきたときは心臓が止まるんじゃないかと思うくらい心配になった。
魔法を教えて欲しいと強請られ教えてあげていた時間は楽しかった。
「おかあさんだいすき」と抱き着いてきたときは愛おしさを感じていた。
布同然の薄っぺらい布団で一緒に寝て、その寝顔を見るたび守らないといけないという使命感に駆られた。
大事で大切で愛おしい娘"だった"
いつも通りの夜
ただ一つ違うところを上げるとすれば”あ”の咳が止まらない、というとこだった。
額に触れれば普段より体温が高く、熱を出していた。
心配になり”あ”を連れて薬を売っている店に連れて行こうと彼女は決める。金は少ないが、この子を死なせるくらいなら、と。
本当は体調が悪い”あ”を連れ出すのは気が引けたが生憎女は病気や薬の知識がなかった。
薬師に見せて適切な薬を貰おう。
そうして”あ”を抱っこして家を飛び出した。
この時、女は失念していたのだ。
貧民街は決して治安がいいとは言えない場所であることを、特に、夜は危険であることを。
突然腕を引っ張られた。
そこには3人のガラの悪そうな男たちがいて、ニヤニヤと笑いながらこちらを見ていた。
「こんな場所でこんな上玉がいるとはなぁ」
「餓鬼の顔も悪くねぇ、こりゃ高く売れるぜ」
突然の出来事に理解が追い付かなかったが、男たちの言葉にハッとする。
逃げなくてはいけない。
恐怖で震える足を必死に動かして逃げようとするが、男たちの手に髪を掴まれ引き戻される。
そうして地面に押さえつけられ”あ”と引き離される。
「おいガキを傷つけんなよ。大事な商品なんだから」
「わかってらぁ」
そんな会話を交わす男たち。一先ず”あ”に危害を加えられることはないらしい。
それに心底安堵して___。
あれ?なら私は……?
再び恐怖がぶり返し、体が震える。
毛むくじゃらな腕が服に手を掛けられる。ぼろい服はいとも簡単にびりびりと音を立てて引き裂かれていく。
嫌だ。怖い
息が浅くなる。怖い、怖い。
そんな時だ。”あ”と目が合ったのは。
直後何かが宙に舞った。
舞ったのは……”あ”を捕まえていた男の一人だった。空中を1回転するとそのまま地面に叩きつけられ気絶したらしい。
その場にいた誰もが何が起こったのか理解できなかった。
「おかあさんから離れて」
たった一人を除いて。
それからはよく覚えていない。
ただ、気づけば皆倒れていた。
大の男が地面に倒れ伏す中、座り込む自分と佇む少女
先程まで騒がしかったはずなのに、今あるのは深い静寂
とても静かな夜だった。
闇夜を照らす優しい月光
その光を受けてキラキラと光る銀の髪。美しい青い瞳。ぼんやりと光る白い肌
神聖さすら感じさせるその光景。その青い瞳の奥に浮かぶ華と目が合った瞬間心を占めた感情はたった一つ。
”恐怖”
その目には、温度がなかった。
まるでなにも思っていないような、虚ろな瞳
ああ、この瞳。さっきもみた。
自身が男に押し倒され、その体を暴かれそうになった時、彼女は少女を見た。
その少女も、今のような冷めた目で女と、そして男を見つめていた。
驚愕、恐怖、怯え。そんなもの微塵も感じさせな程静かな目で。
まるでこうなることを”知っていた”かのように。
今までの不気味さが恐怖に変わったのがわかった。
激しい違和感と、その違和感に対する疑問もまた恐怖への燃料に代わって女に襲い掛かる。
恐ろしい、怖い。怖い怖い怖い!!!
男たちより愛しの我が子だったもののほうが何倍も恐ろしかった。
自分の子なのに何よりも理解できない存在だった。
だから
「いやっ!」
伸ばされた手を、振り払った。
「……」
ぱちんっと乾いた音が鳴った。
兎に角怖くて怖くて仕方がなくてやった行動だった。
だが直後、その行動を彼女は心の底から後悔することになる。
「ごめんね」
「……ぁ」
見た少女の…我が子の顔は悲しそうに歪んでいた。
ああ、まって。ちがう。そんなかお、させたかったわけじゃ。ただこわくて。ごめんなさい。まって、まってまって、いかないで。おねがいだから。
思いは届かない。そのまま女から離れ、あの子は男たちを連れて何処かへ行ってしまった。
後を追いかけなくてはいけない。追いかけて謝って抱きしめなくては。
そう脳みそは思っているのに、体は動いてくれない。
男たちに襲われたことがまだ恐ろしいのか、あるいはあの子が、怖いのか。
結局その答えはわからぬまま、気づけば朝になって……そして、5年半ぶりに彼女は実家へと帰るのだった。
ただ一つの後悔を抱えて。




