現実は甘くない
今回ちょこっとだけ注意
当然だが意思表示のために先に言っておきたいことがある。
私の目標はズバリ!鬱を回避し、最推しであるレオと結ばれること!!
急すぎで展開についていけない諸君にまず説明すると、レオというのは華法の攻略対象の一人だ。
この国、オーティスの第三王子
まぁ、よくある王族系攻略対象ってやつ。そこは第一王子とか第二王子じゃないんかい!というツッコミはスルーするものとする。
とまぁ、お決まりのように彼は勉強も運動も魔法の才もある完璧王子なのだが、緑の瞳を持っていた。それはこの世界において忌み嫌われる瞳の色だった。
そのせいか周りから煙たがられ、人と徹底的に関りを断っていたがために無表情かつ無口になってしまった。
でも本当は心優しくとても、とっても素敵で魅力にあふれた人なのだ。あと筋肉が素晴らしい。サスサスしたい…。失礼、本音が
レオはこの華法の顔にもなっており、滅茶苦茶人気キャラだ。
私がこの鬱ゲーに手を出す理由になったキャラでもある。
パッケージ見た瞬間体に雷が落ちたと錯覚するほどの衝撃だったよね。
その店、盗難防止としてゲームをショーケースに入れていたんだけど、思わずケースに張り付いて店員さんにドン引きされたっけな。いやぁ懐かしい。
まさか二次元のキャラに一目ぼれする日が来るとは思ってもみなかった。
この難易度ルナティックな世界に堕ちたからには、少しくらいいい思いしてもいいよね?ね?
攻略できる年になるころにはお前30超えるぞって?犯罪だ??
あーあー!なんのことかわかりませーーーん!肉体年齢同じ年だからいいんですぅー!!!
そうと決まればレオと結ばれるためにもまずは悲劇を回避しなくちゃ!
私はメモ帳を引っ張って来る。
そこには昨日頑張って書いたストーリーの大まかな流れややることなどが書いてある。
周回プレイを何度もこなしてストーリーは完璧だと思っているけど人間の記憶力って存外あてにならないからね。
今のうちに書いとかないと。0歳だから書くのに苦戦した。
因みにママンは「え、0歳って文字書けたっけ?え…?」と震えていた。ごめんねママン
まぁママンのことは後で労っておくとして。
最初にくる悲劇のイベントは主人公が五歳のころだ。
主人公は母親と共に3人の男たちに襲われる、というイベントがある。
母親はその端麗な容姿から強姦にあい、主人公は幼いということ、そして母親に似た端麗な容姿からそのまま金持ちの家に売り払われることになる。
因みにその後母親がどうなったかは描かれていないが……碌なことにはなっていないだろう。もうこの時点で闇が深い。
更に売り払われた先にも問題がある。
その家は魔法が強い者こそ至高とされるこの世界でも名のある名家だった……のだが、段々と金銭面、なにより魔力面で落ちぶれていったのだ。
そんな現状を変えるためにと強い子供を望んでいたのだが、いざ生まれた子供は魔力の持たない子供
魔法社会において魔力を持たない子供などゴミ同然
プライドの高い現当主は名家としての品格を落とすわけにはいかないと少なくなってきた金を叩いて魔力を多く持つ子供を買い、現当主に据えることにした。
そして買われたのが主人公だ。
上手くできなければ折檻は当たり前で起きてから寝るまで機密に決定されたスケジュール。自由などない生活
ただでさえ母親と離れ離れにされた少女にメンタルケアも一切せず、この仕打ち。
主人公はゲーム内であまり顔が出てこないのだが、出てくるたびに目が死んでいた。
デフォルトで目が死んでる乙女ゲーの主人公ってどうなんだ……とか思っていたけど、この生い立ちを聞けばそりゃハイライトもさよならするわな、と納得せざるを得なかった。
そんな主人公の目にハイライトが戻り、心の底から幸せそうに笑うエンディングが実はハッピーエンドとトゥルーエンド以外にも一つだけあるんだぜ。なんだと思う?
ジェノサイドルート。所謂皆ぶっころ☆ルートだ。
うーん闇が深い!
だが私が主人公になった以上そうはいかない。
なんとしても回避する。
とはいえ、私が回避するのは”母親が襲われること”だけだ。
何故かって?私が誘拐され、あの家に行かなければ話が始まらないからだ。
ぶっちゃけやらないといけないこともあるし……。
ママンはどうするかって?これストーリーの後半で判明するんだけどママンって家出した先で子供こさえたみたいなのよ。だから親戚がちゃんといるし親戚がどこにいるのかもちゃんと覚えている。
周回プレイを何十回とこなした私に抜かりはない。
ママンには悪いけど一人で家に帰ってもらおうと思う。
ママンの実家は別に悪い所じゃないということはゲームを通して知っている。
家出をした時も彼等は必死に探し回っており、本編開始では彼女の生存確率が絶望的で意気消沈していたが、主人公にあった瞬間母親の名前を叫び、泣きながら謝罪をしていたシーンは印象的だ。
その他、やりこみ要素としてアイテム収集をした際、ネックレスや手記など母親の過去に関するアイテムを入手することが出来るのだが、そこでも過去の様子やエピソードを見ることができ、本当に問題がないことは確認済み。
本音を言うならママンにはついてきて欲しいけど、あのプライドの高い家が私は兎も角ママンを受け入れるとは思えない。
子供なら色々言い訳が出来るが、見るからに召使という訳でもない見知らぬ女が出入りしているなんて体裁悪いし。
それにあそこは奥さんが嫉妬焼きだからね。
と、かなり話が脱線したけどそろそろ気になる悲劇の回避方法を紹介しよう。
ただ一つ。魔法を鍛えるだけ。
この乙女ゲームの根幹ともいえる花の魔法使いだが選ばれるには条件がある。
一つは無垢であること。もう一つは魔法の才能が頭二つくらい飛びぬけていることだ。
主人公。ハイライトはバイバイしてたし、色々物騒なエンドも多いけどある意味誰よりも心は無垢だったからね。煩悩とか、考えることもできなかっただろうし……うん。闇が深い。
この話はいいんだよ!
兎に角!主人公は魔法の才能が頭二つ飛びぬけている!つまり私はとんでもなく魔法の才能があるのだ。それを使わない手はない。
今後の為にも魔法は絶対に鍛えるべき分野だし。
現在私は0歳。期限まであと4年と少し。
4年以上あれば、なんとかモブキャラを振り払えるだけの実力はつく、はずだ。てかついてもらわないと困る。
ということで早速練習だ。
……で、魔法ってどうやって使えばいいんだ??
魔法を扱える者、というのは生まれた瞬間から、感覚的に、まるで腕を上げるように自然と魔法を使えるようになるものだ。
しかし、当然ながらこの世界に生まれ落ちた瞬間から”自分”を持っていた”あ”は魔法がない、ということこそ常識であった。
故に魔法の使い方がわからない。自然も何もないのが当然だったのだからその感覚など理解できるわけがなかった。
色んな方法を試行錯誤する。
だがやろうと意識すればするほどできない。
そんな彼女を焦らせるように時間は経過していく。
現在彼女は齢4歳。4年あれば何とかなると思っていたのに、気づけばあと1年しかなくなっていた。
しかも未だに彼女は魔法が使えない。そうして焦りに焦った彼女は等々閃いたのだ。
死にかければ無意識で生きるために魔法使うんじゃね?
とち狂っているとしか思えないが彼女は至極真面目だった。
至極真面目に狂っていた。
魔法は魔法が使える者なら意識しなくても自然に使えるものだ。まるで腕を動かすように。
しかし”あ”はその感覚がわからない。だがこれは逆に言えば一度でもその感覚を理解してしまえば使えるようになる、ということ。
意識することで使えないのなら意識できない状況に追い込めばいいじゃない!
それに主人公はこれまたお決まりのように回復魔法が得意だった。
更に主人公補正というものがこの世界にも多少はあるはずだ。死にはしないだろう。まぁ最悪死んでもいいかとも思っていたが。
母親が襲われた理由は主人公が風邪をひいてしまい、検査を受けるためだった。
その主人公が死んだなら母親があの日、出歩く必要はない。つまり襲われない。うん、安心して死ねる。
一度死を経験している彼女はある意味無敵だった。
偶々母親に見られて母親にトラウマを植え付ける!なんてヘマをしないように彼女は自身の住む貧民街を抜ける。大量の小説を読み漁った彼女はそういうところが慎重だった。
貧民街の外は一面何もない土地が広がっており人なんて一人もいない。
まぁこれからやることを考えればうってつけな場所といえる。
そうして再度人がいないことを確認し
近くにあった鋭く堅い木の枝で自身の喉を_______。




