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これにて5歳篇は終わり!!!!

ルークは騎士団長を務めており、多くの人に慕われているような男だった。

剣の腕も素晴らしく、最優の騎士としての称号を持っている。

王宮からも声を掛けられているらしいが、新しい騎士を育成したいという理由で誘いを蹴る。

頼れる兄貴分でありながら実は自由気ままな性格だったりと取っ付きにくさを感じさせない男だった。


多くの人に期待され

多くの人に愛され


彼の未来は眩いほどに輝いていた。



だが彼は、二十九歳という若さでその命を散らす。



彼と数人の騎士団員はとあるモンスターの討伐任務に出た時のことだった。

目的のモンスターの討伐自体は難なく完了するものの、実はもう一体強力なモンスターが隠れていたのだ。

そのモンスターは攻撃面にも強いが、何より人を操る能力を保有していた。

その能力にかかった一人の騎士団員が突如仲間を攻撃し始めたのだ。


泣きながら攻撃をする騎士団員を止めようとするルークだが、騎士団員を動けなくしたにも関わらずその騎士団員は動きを止めることはない。

当然だ。モンスターは”人を操る”のだから。彼の体の骨がどれだけおられようが、四肢がもげようがモンスターが魔法を解かなくては意味がない。


痛みに喘ぎ、仲間を攻撃することに対する絶望で泣く騎士団員を前にルークが取った行動はモンスター討伐を行うことだった。


自分が騎士団員に殺されることとなっても。


彼はモンスターの討伐に成功した。

だが彼の腹からは騎士団員の剣が突き出ていた。

血を吐き出しながら彼は己を殺してしまったことに絶望する騎士団員に「大丈夫だ。お前は悪くない。仲間を頼む」と微笑み





最期まで彼は誇り高き騎士として息を引き取ったのだった。





いや重い!重いんだよ!!!

しかもこの話、今はさっくりと説明したが、実際はもっと複雑な話だったりする。

まぁその複雑な話は後に置いておくとして。

皆に慕われてる人って死んだら皆病むからさ。彼に死なれるとホント色々問題が起きるので何とか生存してもらう必要がある。

その為に早めに接触する必要があるわけですよ。

なんせ彼が死ぬのは8年後だがそれまでに、お願いと助言を聞き入れてくれるくらいには親密度と信頼度を手に入れておかなくてはいけないんだから。


「あ、やっぱり嬢ちゃんじゃねぇか!」


なんて思っていると騎士団の扉の前

そこに差し掛かった辺りで、建物内から三人の人影が走って来る。


「あ、お兄さんたち!」

「ん?なんだ、ダリスたちの知り合いだったか!」

「き、騎士団長!」


私たちの前で足を止めた三人組は、ルークを見て慌てて背筋を伸ばす。

間違いない。あの時の男たちだ。

どこか不潔さを感じさせる髭を含める体毛を添って、襤褸切れではなく訓練生としての服をしっかりと着ている。どうやらちゃんとここで訓練を受けていたらしい。

それにどことなく、きりっとした顔つきをしている気もする。雰囲気もヤバいやつというより、頑張っている青年、って感じだ。すごいな、たった一ヶ月でこうも印象が変わるとは……。


「な、なんで騎士団長が」

「ん?今日はお前たちの練習に付き合おうと思ってな。そしたらこの子が塀に上っていたから一緒にこっちに来たんだよ」

「そ、そうですか…」

「それよりお前たち少し休憩していいぞ。この子たちの相手でもしてやれ。教官には俺から言っておくから」


そういってルークは私とノアの背を男たちの方へ軽く押すとそのまま立ち去っていく。

本音を言うとルークと会話をしたかったが、ここで引き留めるのは不自然か。

取り残された男たちの方へと私は視線を向ける。


「一か月ぶりですね」

「あ、ああそうだな。一か月ぶりだな」

「元気そうで何よりです」

「嬢ちゃんもな」


そこで会話が途切れる。当然と言えば当然か。

だって私達、加害者と被害者だし。別に仲良くもなんともないし。それよりも


「少しここを見て回りたいんですが、案内してくれませんか?」

「……そっちが目的か」

「私が良心から貴方がたちに会いに来るわけがないじゃないですか」

「本当に強かな嬢ちゃんだ…」


苦笑いされたが彼らにどう思われようがどうでもいいしな。

そんなことより折角騎士団の館内に入れたんだし、これを有効活用しなくては。


「訓練生が立ち入ってもいい場所までだぞ」

「はぁい。行きましょうかノア君」

「……」


ジトッとした目を向けられた。

今日はこの目をよく向けられるな。

ごめんね、と軽く手を合わせてジェスチャーすると溜息を吐かれた。

でもこの行動はのちの君の為にもなるから許しておくれ。


そうして男たちの案内の元軽く館内を案内してもらう。

寮とか訓練場とか食堂とか


「そしてここが倉庫だ」


そして私のお目当ての場所。倉庫だ。


「まぁ倉庫っつってもガラクタ入れみたいな場所だけどな」

「ガラクタ入れ?」

「ああ、ここはよく色んな奴が訪れてくるんだが、その時にゴミ押し付けてくる奴とかいるんだよ。

でも人から貰った手前捨てんのも忍びないからってここに入れてんだ。

あとは、壊れた備品とかもここに捨ててるな」

「てことはここの物はいらないってことですか?」

「まぁな。こんなガラクタ欲しがる奴なんていないと思うが」


いるんだよなぁ、それが。

この倉庫を知っておくことで、のちの出来事に繋げやすくなる。主にノア関連で。

一先ず倉庫の情報も知れたしルークとも会うことが出来た、今日はこれくらいでいいか。

帰ることを知らせると男たちは扉まで送ってくれるらしい。


「ん?帰るのか?」


その道中でまたルークと会った。


「はい。今日は迷惑かけてすみません。入れてくださりありがとうございました」


笑みを浮かべて頭を下げるとルークは「一々感謝されるようなことしてねぇって」と笑う。


「ああ、そうだ。名乗るの忘れてたな。俺はルーク。ここで騎士団長をしている」

「私は”あ”と言います」

「……”あ”?」

「”あ”です」

「……………………渾名か?」

「いいえ本名です」


にっこりと笑って言えば微妙な空気が流れる。


まぁそうだよね。”あ”なんて名前、普通はあり得ないよね。


「……独特な名前、だな?」

「よく言われます」


さてと、このままここにいても気まずい空気が濃くなるだけだろうからさっさと退散するかね。


「それでは、また会いに来ますね。お兄さん方」

「あ、ああ。今度は塀からくるなよ。あれ遠目から見て驚いたんだから」

「わかってますよ。それではルーク様もごきげんよう」

「おう。また来いよ」


私は華麗に一礼してノアと共にその場を後にする。


「そろそろ時間ですね。帰りましょうか」


建物から出たところで私は時計台を確認して言う。

思ったより時間を消費していたらしい。

残念だが、観光はまた別の機会かな。


2人肩を並べて家までの道を歩く。

行き同様お互い会話は特にないが私は家につくまでにやることがあった。


「ノアくん」

「はい」

「今日の件なんですが…当主様には言わないでくれませんか?騎士団に行ったことも。

バレれば怒られてしまうかもしれないので」

「わかりました」


一も二も無く頷くノアに私は少し驚いた。

てっきり「旦那様には報告します」と言われると思ったのだ。それなのにこうもあっさり口止めされてくれるとは…。


「僕はお嬢様専属の召使です。主の命なら従います」


私の困惑を察したのだろう。表情を変えることなくノアが言う。

命令というかお願いなんだけど……ノアからしたらどちらも同じことなのか。


「そうですか。ありがとうございます」


ひとまず口止めには成功したわけだし、今後のことでも考えるか。


とは言え。下準備はあらかた終わった。

あとは只管好感度上げに徹すればいい。特にルークだ。

ルークなら基本的に騎士団にいるから、そこをうろちょろしてたらあえるだろう。

ついでに情報も収集できるし。


騎士団のキャラと関わると実はお得要素が多いのだ。

騎士団には色んな人が訪れる。来る理由は人それぞれだが肝心なのは様々な職種の人と関われる、ということだ。

来る人と仲良くなれば自動的に人脈は増えていくし専門知識なども手に入る。思いがけないビックニュースも掴めるときだってある。


華法プレイヤーの間でも攻略するつもりはなくとも騎士系キャラとは友だちになっておけ、というのが常識化しつつあるくらいだ。

この人脈の広さをうまく使えばノアの欲求も一気に埋めることができるかもしれないし。

うーん、一石三鳥。旨味しかない。

あとそうだ。もうすぐノアの誕生日だっけな。


「ノアくん。お聞きしたいことがあるのですが」

「なんでしょう」

「お誕生日はいつですか?」

「10月21日です」


知ってる。

お小遣いを貰えるかわからないからプレゼント買えないかもしれないけど、これで「おめでとう」くらいは言えそうだ。


「お嬢様の名前」

「ん?」

「"あ"っていうんですね。知りませんでした」


急に喋ったと思えば名前のことか。


「そうでしょうね。あの屋敷の方々は誰一人として私の名前を知りませんから」


私を指す言葉なら"お嬢様"で十分だから名前なんてどうでもいいのだろう。


「旦那様も、ですか?」

「ええ。皆さん私のことなど興味ないでしょうから」


私の名前も誕生日も好き嫌いも趣味も性格も何一つ彼らは興味がない。使える駒か否か。ただそれだけにしか注目していないのだから。


「……僕は」


ぼそりとノアが呟く。

なんだろうと彼を見るがノアは続きを話すことはなく静かに口を閉じる。


「どうかしましたか?」

「…いえ」


口を閉じ、ゆるく首を横に振るノア

正直何を言おうとしたのか気にはなったが本人に喋る気がないなら無理に聞いてもしょうがないか。


そうして、そこからはお互い一言も喋ることなく家につくのだった。

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