過冷却化における人為的死滅
廃屋の陰に人影が一つ
だれだ
背が低い
両膝で立って
足を折って両膝立ち
片足を若干下げて安定させている
伸びない背筋は視線の先のせいか
だいたい予測される
なんとなく予想はつく
触れるべきか否か
触れていいのか状況なのか
足先は逃走に一票
面倒とも違う
何の根拠もない手を貸して
助けられるなんて思い上がりが砕けるのが怖い
のか
どうなんだろう
内々心で面倒を避けようと合理化を果たした考えがこれなのかもしれない
でも違う気もする
後者ですらもない
なにか
只々
嫌な背中
ーーあの
口をついて出たあの
とっさ押さこもうとした手は背荷物に阻まれて撃沈
気づかれたかと正面
…
猫背が見える
反応は
ない
なんだ今の
良心に駆られた
のか
好奇心の産物か
本当に無意識だった
条件反射
しかし気づかれなくてよかった
そう思ったのもまた事実
もうひと足先が二票目を入れかけて
やめる
手を伸ばす
意識を込めて
もう面倒でも何でもいい
ここで見捨てたら人間としてよくろしくない
一応でも人間性はとどめておきたい
これは私用だ
自分のために助ける
肩に手を置く
あの…大丈夫ですか
訊いた
ゆっくり
顔が向く
目は
合わない